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Unit5 Week4 「ホルモンがもたらす身体の変化」

Unit5 身体の変化は心の変化をもたらす

ユニット5では、以下の知識とスキルの構造で概念型の探究を進めていきます。

ユニットの導入では、心の変化を少しずつ迎えている4年生が、自分自身の心の変化を捉える学びからスタートしていきました。そこから、エリクソンの発達課題を参考にしながら人生のステージごとの発達課題についてインタビューを元にリサーチを進めてきました。ここからは、心の変化から身体の変化にフォーカスした学びを進めていきます。この時のキーワードになるのが「ホルモン」です。私たちの見えないところで「ホルモンはどんな働きをしているのか?」子どもたちとの探究が始まります。

・イントロダクション1「人生における変化と疑問」

まずは、今の子どもたちが「変化」についてどのように認識しているのかを知るためのワークを行いました。ベースは「see(事実)-think(考えたこと)-wonder(疑問)」にして、これまでの人生やインタビューを通して見えてきた「変化」について知っていることをブレストしていきました。

◎ 問い

「人生においてどのような変化があるのか?(黄色、オレンジ)」
「自分が疑問に思う変化(緑色)」

◎ 子どもたちから出てきた疑問

・おじいちゃんおばあちゃんになるとシミが出てくるのはなぜだろう?
・人に色々な気持ちがあるのはなんでだろう?
・大きくなるについて人の考え方が変化するのはなぜだろう?
・なぜ、体(身体)は大きくなるんだろう?
・なぜ、性格は変わるんだろう?
・なぜ、好み(好奇心)は変化するんだろう?
・イントロダクション2「人生における変化と疑問」

昨日は大雪の影響で休みが多かったので改めて、自分たちの心や体の変化と一人一人が気になる疑問を書き出していきました。今回は体の変化にフォーカスするために、人の体の関係する部分に付箋を貼り出していきました。

◎ 子どもたちから出てきた疑問(その他の疑問)

・どうして髪の毛は伸びるの?
・なぜ考え方は変わるの?
・なぜ感情は変わるの?
・なぜ好きなお菓子は変わるの?
・なぜ感情が変わるのか?
・信頼はなぜ変わるのか?
・なぜ気持ちが変化するのか?
・どうして体の大きさが変わるのか?
・どう変化すると体重が減るのか?
・どうして爪が伸びるの?
・どうして骨が伸びるの?
・どうして背が伸びるの?
・足はなんで大きくなるの?

人数が増えることで、色々な疑問が出てきて、子どものたちの中で疑問は生まれるけどこれまでにリサーチしたことはなかった人がほとんどでした。「この変化に共通しそうなものって何があるんだろう?」という問いでは「ホルモン」という言葉が返ってきたので「ホルモンの正体」について探っていきました。

◎ 問い

・ホルモンとは何か?
・ホルモンの大きさはどれくらいなのか?
・ホルモンは肉なのか?

子どもたちはホルモンについて、食べるホルモンとの違いについては知っており、またホルモンから女性ホルモンと男性ホルモンの言葉が出てきて、男性には男性ホルモンだけがあり、女性には女性ホルモンだけがあることを話していました。ここから身体の様々な変化について、ホルモンをトピックに探っていきます。

ここからの指導で大切にしたい考え方についてです。(参考リンク

Ⅱ 学校における「性に関する指導」の基本的な考え方
学校における性に関する指導は、「人格の完成」、「健康の自己管理能力の育成」、「現代的課題への対応」を目指しています。学校教育全体で取り組んでいる人間関係についての理解やコミュニケーション能力を育成することなどの基礎の上に、科学的知識を中心とした性に関する指導を行っていくことが、自他の心身を大切にできる心や態度を育むことにつながります。そのため、科学的知識を理解させることだけを目指すのではなく、「性」を「人生の教育」の一部として考え、子どもたちがよりよい生き方・豊かな人間関係を目指していけるよう、包括的に指導を進めていくことが求められます。
・「人はなぜ眠くなるのか?」

まずは、全体でホルモンと身体の変化の関係性を探るために、子どもたちにとって身近な「眠くなる」という身体の変化についてこれまでの経験を紐解いていきました。

◎ 問い

・どんな時に眠たくなるのか?
・なぜ眠くなるのか?
・どんな時眠たくならないのか?

「どんな時に眠くなるのか」について問いかけると「寝る前」「ご飯を食べた後」「熱が出ている時」「寒い時」etc...のこれまでの生活経験をシェアしてくれました。また「喧嘩をしてるときやストレスを感じているときは眠くならない」というように、夜でもストレスを感じている時や喧嘩の後は眠れないという経験を話してくれた子もいました。

「では、なぜ眠くなる時」に共通するパターンがあるのかについて、教室のにある本からリサーチをしていきました。

リサーチをしてみると、夜眠くなるのは体内時計で自然に眠くなることや、ホルモンとの繋がりでいうと、夜暗くなると脳から分泌され、体内時計に働きかけ、カラダと心を夜の休息の状態に切り替えてくれる「メラトニン」という物質が関係していることを発見していました。また、ご飯を食べた後に眠くなるのは「インスリン」というホルモンが分泌されており血糖値を下げようとする働きの時に眠くなってしまうことを発見していました。このように、眠くなってしまうのは睡眠不足というだけでなく、自分の身体の中で自分の見えないところでホルモンという物質が調節するために重要な役割を担っている結果として起きていることもあることをちょっとでも感じられたらと思いました。

・「人はどんな時期に背が伸びるのか?」

次にmathの時間では「成長ホルモン」というキーワードにフォーカスするために、生まれてからこれまでの身長の変化についてリサーチをしてきてもらいました。やはり、子どもたちは自分自身の経験から学ぶ方が主観的な事実として受け入れやすく、自分の成長の記録や友達の成長記録をみながら成長について理解を深めていく姿が見られました。

▼この学習で掴んで欲しいこと

◎ 知識

・成長ホルモンとは何か

・第一次成長と第二次成長

◎ スキル

・小数の引き算ができる

・身長の変化をグラフに表すことができる

・スキャモンの発育曲線と身長の変化の繋がりを見つけることができる

◎ 概念

・成長には個人差があること

・ホルモンが身体の変化に影響を与えていること

実際にグラフにしてみると、子どもたちは自分の身長の変化と友達の身長の変化を比較して同じような変化が見られるところ、違う変化があることを発見していました。共通していたのは「0歳から1歳の時に一番身長が伸びていること」「1歳から8歳までは身長の伸びが小さくなっていること」そして、違いとしては「8歳から9歳で再び身長がぐんと伸び始めたこと。」「10歳になってもまだ身長の変化が小さいこと。」等成長には個人差があることを客観的な事実を集めて理解を深めているように見えました。その一方で、まだ第二次成長が始まっていないことに不安な気持ちを声に出している子もいました。

・「成長ホルモンと身長の変化のつながり」

身長の変化には個人差があることや、身長が急激に伸びる時期があることを自分自身とクラスの友達のデータから掴んだところで、具体的な知識と繋げていく学習を行いました。「身長が伸びることは何と関係しているのか?」という問いをグループで読み解く学習をしていきました。

▼ 資料①

引用:神戸大学医学部附属病院 糖尿病・内分泌内科学(リンク


▼ 資料②

子どもの“成長スパート”を見逃すな!(前編)(リンク

▼資料③

 

SGS総合栄養学院(リンク

子どもたちはこの3つの資料を読みながら身長の変化との繋がりを発見していました。

▼子どもたちの考察したこと

・成長ホルモンが出ている時期に心の変化も起きるのはなぜだろう?

・男子より女子の方が早く身長が伸びる

・身長の変化はスキャモンのリンパ型とつながっているのではないか?

・成長ホルモンの分泌量も人によって差がある

・PSPE「人はどんな時期に運動の上達が早いのか?」

◎問い

・みんなはいつ頃"自転車"の乗れるようになったかな?

・みんなはいつ頃"ボール"を上手く投げられるようになったかな?

・みんなはいつ頃"縄跳び"を跳べるようになったかな?

子どもたちは、できるようになった時期が4歳から6歳ぐらいに年齢が集中しており、「なぜこの時期に色々なことができるようになるのか?」について考えていきました。ここまでこれまでの経験を共有した後にスキャモンの発育曲線を提示して考えていきました。「みんな、このグラフ見たことあるかな?」この言葉で「出た〜」という感想から体育の観点からみた授業が始まりました。

SGS総合栄養学院(リンク

▼ この学習で掴んで欲しいこと

◎ 知識

・ゴールデンエイジ とは何か

・スキャモンの発育曲線

◎ 概念

・運動能力を高めるには適切な時期があること

・人は年齢ごとに成長パターンがあること

SGS総合栄養学院を参考に作成(リンク

1つ1つの成長のパターンについて学習をしていき、最後に神経型の発達の話になりました。そして、神経が最も発達する時期が、今の自分たちの年代であることを知った子どもたち。これまで「なぜ休み時間に外に出て身体を動かさないといけないのか?」「なぜ、休み時間はデバイスを使ってはいけないのか?」について疑問を抱いていた子供達でしたが、この授業を受けたあとは「よし!外で思いっきり遊ぼう!」と外で身体を動かすこことに前向きになっているように思えました。適切なタイミングで、正しい知識が入ることで、すうっと理解に入っていくようでした。

子どもたちの探究は続いていきます。