フィンランドの学校に行こう!

フィンランドの教育を通して日本の教育を見つめ直す。

Unit3 測定と美との関連性を探究

Unit3 多角的な測定の定義にどのように役立つかを理解することで、芸術性と創造性が向上します。

ユニット3では、「個人的表現と文化的表現」というグローバルな文脈の中で、測定を行うことが図形を定義し、これについて理解することが芸術性や創造性に繋がることを探究していきます。私たちは、生活の中で何かものを買うときや作るときに機能性だけでなく見た目の美しさからも選択をしていると思います。

「私たちが何かを選択するときに美しさを感じるのはなぜか?」「美しさを感じるものにはどのような特徴があるのか?」私たちは無意識に美しいと感じる形があります。このユニットを通して、多角的に形を測定することを通して、美しさを構成するものの特徴について探究し、最終的には投影図を使って多角的な視点から測定し、自分たちの表現したいことを様々な視点で構成し、投影図を共通言語とし、協働で動的な作品を制作することを行っていきます。

・概要

Statement of inquiry
多角的な測定が形の定義にどのように役立つかを理解することで、芸術性と創造性が向上します。

Global context
個人的表現と文化的表現

このユニットでは、比率、投影図(立面図、平面図)、および平方根を使用して、「個人的表現と文化的表現」のグローバルな文脈を探究していきます。身の回りにある私たちが美しいと感じるものの特徴を調べるために、比率がもたらす視覚的かつ機能的な美しさを探究していきます。
また、測定したことを投影図にすることで、どのようにしたら芸術作品に奥行きや立体感を与え、観察者により深い感動をもたらすことができるのかについて考え、実際にパフォーミングアートをつくる機会を通して社会の中にある多角的に測定することの価値について探っていきます。このスキルが、社会に出たときに形だけでなく、様々な場面で多角的な視点で物事を見ることで、協働したり、より価値のあるものを生み出すことのできるスキルに転移することを期待しています。

・アクティビティ1「イントロダクション」

まずは、Statement of inquiryにある「芸術性(美)」についての探究を行うことから始まりました。ここでの着地点は、私たちが無意識に美しいと感じる「黄金比」や「白銀比」というものに対して本当に「美しい」と感じるのかを探っていきました。この時は、まだ多くの子どもたちは白銀比黄金比については知らない状態です。

早速身の周りや学校を歩いて、美しい、或いはしっくりくる長方形を探して測定する活動を行いました。さらに、闇雲に測定するのではなく、自分自身がしっくりくる長方形には何かパターンがあるのかを探りながら測定することを伝えました。

次の学習活動として、測定を行ったものの比率を縦の長さ(短い方)を1として求めていきました。G6からG9までの13人の結果をグラフにすると以下のようになりました。

不思議なことに、誘導することなく1:1.4(白銀比)と1:1.6(黄金比)の比率が多いことが分かります。

ここで、ある調査を行いました。

これは、東京工芸大学芸術学部の牟田淳氏の研究を参考にしたもので、古来から人間は黄金比を好む傾向があるという研究がされてきましたが、国によって何を美しいと異なるのではないかという仮説のもと、実際に自分たちもどの四角形に美しさを感じるのかを調査を行いました。

調査の人数が少ないので、自分が好きな四角形の順番に番号ふりました。なので、合計の値が少ないほど、人気な四角形になります。

この結果から、圧倒的に正方形が人気であることと、次に黄金比白銀比の長方形が人気である結果になりました。英米では黄金比の長方形が一番人気である結果との違いが何から生まれているのかのディスカッションも面白かったです。

・アクティビティ2(G6)「身の周りから白銀比を探す」

私たちの身の回りにあるものの中で、白銀比が使われているキャラクター(キティ、ドラえもん法隆寺東京スカイツリーの中に潜んでいる白銀比を測定を通して見つける活動を行いました。

・アクティビティ2(G7-9)「身の周りから白銀比を探す」

白銀比が繰り返し出てくる直角二等辺三角形と正五角形の図形の中に補助線を入れることで、白銀比が繰り返し出てくるパターンを発見する活動を行いました。この後学習していく、コピー用紙も追ったり重ねたりすることで、白銀比が繰り返し出てくる法則があり、白銀比が美しい図形を生み出す何かを発見したのではないでしょうか?

・アクティビティ3「コピー用紙の美を探究」

◎ 問い

・なぜ、コピー用紙は白銀比なのか?

・コピー用紙のサイズにはどのような特徴があるのか?

実際にコピー用紙を折りながら測定を通して白銀比を見つける活動を行いました。

A版チームとB版チームに分かれて、それぞれ辺の長さを測定していきました。実際の結果から測定していくチーム、元となるA4,B5のサイズから割り算をして正確に測定をしていくチームがありました。

そして、計算結果と図形を組み合わせると、ある法則を発見していました。縦と横の長さが、1つ小さなサイズになると、縦の長さが元の横の長さとなり、横の長さは縦の長さと同じになるのが繰り返されることを発見していました。

このときに、子どもたちから生まれた問い

白銀比だけが1:1.414...の比率が繰り返されるのか?

・他の比でも同じ比率が繰り返されるのか?

実際に黄金比(1:1.618)の長方形を作成し、半分におった時に黄金比が繰り返されるのかを測定し、黄金比では同じ比率が繰り返されず、白銀比のみが同じ比率が繰り返されることを発見していました。ここに白銀比がもつ特別な特徴を見出していました。

そして、サイズが小さくなっていく法則は見つけたことを応用し、サイズを大きくしていくときの法則を探し、実際にA0、B0のサイズの紙を制作する活動を行いました。

このときに、A4サイズからA0の紙を作るのに必要な紙の枚数、B5サイズからB0の紙を作るのに必要な紙の枚数を、指数法則の増え方を想起させて考えました。

・アクティビティ4「白銀比の正体を探究」

 

Mathのカリキュラムづくりへの足跡

今、私は「探究を探究する」ために国際バカロレア認定校で働いています。

私は、初等プログラム(PYP)での小学4年生の担任と中等部(MYP)の数学の担当をしております。初等部の探究カリキュラムのレポートはこちらのブログにまとめてあります。

PYPでは、教科横断的なモデルで学んでいた学習から、MYPでは教科学習と学際的な学習に焦点を置いたモデルへの学習に移行していきます。

2023年度は、MYPのカリキュラムの作り方に沿ってMathのカリキュラムを設計したカリキュラムに沿って実践していく1年目の年です。生徒と一緒に学びを作り上げていくという観点では、今は子どもたちと一緒に意味のあるMathのカリキュラムを作り始めたばかりです。これから子どもたちと一緒にDPの学びへと繋がる足跡をここに残していけたらと思います

このブログでは、MYPの数学で子どもたちがどのように数学を探究しているのかをまとめていきたいと思います。

MYPにおける数学の考え方(一部抜粋)*参考リンク

数学の学習は、公式や計算方法の習得に終始すべきものではありません。生徒 は、数学の解答はすべて教科書の中に見つけることができると考えるのではなく、自分が概念や関係性の探究に積極的に関与することができると考えなくてはなりません。そして、そのように考えれば、数学は探究の醍醐味と発見の喜びに満ちた科目になるでしょう。
また、新たに得られた知識は他の状況にも応用することができ、さらなる探究や発見の機会を生徒に与えることになるでしょう。MYPの数学では、探究と応用を促すことにより、生徒たちが学校以外の実生活で役立つ、学問分野の枠を超えた問題解決手法を身につけることができるよう指導を行います。

私が数学教師として、MYPのカリキュラムコーディネーターからお願いされたことは「世の中を数学的に見ることができる人を育成すること」です。

参考になる動画(絵本)はこちらです。

「〇」を見て、まる、円、安定、平和、調和、完全、母性、やさしさ、のような概念で理解することは一般的だと思います。そこを、π、3.14、2πr、πr^2、のような概念で理解する=そのように見える・解釈する生徒を育ててほしい。そのような言葉を頂き、私の数学教師としての道のりがスタートしました。

そこで、私はオックスフォード大学が作成している国際バカロレアMYPのカリキュラムを完全にカバーしているテキストを参考にしながら授業をスタートすることにしました。

国際バカロレアのMYPの数学のカリキュラムの枠組みには、数学の4つの学習分野についてその概略が定められています。

• 数
• 代数
• 幾何と三角法
• 統計と確率

▼ 数を学習する意味

数を扱う能力は、数学において最も重要なスキルです。生徒には、数の概念を理解する
とともに、計算および概算のスキルを身につけることが求められます。生徒は、また、数を用いてパターンを表現したり、実生活の状況を描写したりする行為の起源は人類が最初に出現した時期にまでさかのぼるという事実や、数学が多文化的な起源をもつという事実を理解する必要があります。

▼ 代数を学習する意味

代数は、数を扱う際に最初に用いられる概念の抽象化であり、より高度な数学を学習する上で必要不可欠なものです。代数では、文字と記号を用いて数や量、演算が表現され、数学の問題を解くために変数が用いられます。

▼ 幾何と三角法を学習する意味

生徒は、幾何および三角法を学習することにより、空間認識能力を高めることができるだけでなく、2次元および3次元の幾何学量を分析、測定、および変換するための手段を習得することができます。

▼ 統計と確率を学習する意味

数学に含まれるこの学習分野では、量的なデータの収集、分析、および解釈を行い、確率の理論に基づいて、パラメーターの推定、経験的な法則の発見、仮説の検証、事象発生の予測を行います。生徒は統計学の学習を通して、データの収集、整理、および分析に関するスキルを開発することになります。これにより、生徒は、情報を明確な形で提示したり、規則性を発見したりすることができるようになります。また、批判的思考のスキルを身につけることにより、理論上起こり得ること(確率)と実際に観測されること(統計)とを区別できるようになります。
さらに、生徒は、統計学のもつ力と限界の両方を理解する必要があります。そうすることにより、仮説を立証する場合や仮説に対して疑問を提起する場合に統計学をどのように使うのが適切であるか、また、誤解の誘導、あるいは意見やプロパガンダに対する反論に統計がどのように利用されうるかを認識できるようになります。

イントロダクション

まずは、以下の2つの目的でイントロダクションを行いました。

診断的評価...数学的な知識・技能/見方考え方がどの程度育まれているのか?

世の中を数学的に見るマインドセット...数学を公式的に学習するのではなく、数学を自分で探究していくためのマインドセット

ここからは具体的に行ったことを紹介していきます。

◎ Mathの年間カリキュラム

Unit1:数学史を探究

グローバルな文脈 ▶︎ 文明と人間の相互作用 

探究のメッセージ ▶︎ 文明が進化し、人間が相互作用するにつれて、さまざまなシステムと表現の形式が発達します

G6



G7-9



Unit2 社会の不平等や格差を探究

グローバルな文脈 ▶︎ 不平等と格差

探究のメッセージ ▶︎ 不平等や格差は、等価形式の量を使用することでより明確になります。

G6

ボードゲームで数学 ▶︎リンク
・不平等や格差を数字で紐解くPart1 ▶︎リンク
・不平等や格差を数字で紐解くPart2 ▶︎リンク
・数学で金融リテラシーを育む ▶︎リンク

G7-9

・数学でビジネスプランを考える▶︎リンク
・不平等や格差を数字で紐解く ▶︎リンク
・数学で金融リテラシーを育む ▶︎リンク

Unit3 多角的な測定が芸術性や創造性を生み出す

数学で金融リテラシー教育

Unit2の総括課題で、社会の中の不平等や格差について探究を進めてきました。

私自身も、生涯の資産形成の格差が日本全体で広がっていることに課題意識をもち、資金形成格差がなぜ起きるのかを調べてみました。

もちろん、職業による賃金格差も大きな要因としてあるのですが、資金形成をうまくできている人とできていない人では、金融リテラシーの差によって、生まれているものもあるのではないかという仮説も出てきました。

そこで、数学の授業の中で現在扱っているパーセンテージの考え方を少し応用させて、単利と複利の概念について理解する授業の設計を行いました。

チェックインワーク:単利と複利の考え方を掴む

まずは、単利と複利の考え方を理解するチェックインワークを行いました。

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生徒は、日本の平均寿命を踏まえて、直感でどちらが多くのお金をもらうことができるのかを考えました。直感ではAを選ぶ生徒が多かったのですが、ちょっと考えている人ほど敢えてBを選ぶような感じでした。

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実際に、計算をしていくと最初はやっぱりAの方が良かったと言葉にする生徒たちでしたが、計算を重ねていくうちに、Bの増加の仕方が次第に大きくなっていくことに気づき、ついにBの方がAより高くなることに辿り着く生徒が出てきました。

ここで、AとBの数字の増え方にどんな違いがあるのかを考えてもらいました。Aは、前の値に関係なく一定の数ずつ増えていくのに対して、Bは前の値に影響を受けて、後半になるにつれて変化が大きくなることに気づいていました。ここが、単利と複利の考え方の重要な部分になってくることを1つの事例でなんとなく掴めたところで、身近にある現象が単利的なものなのか複利的なものなのかについて考えてもらいました。

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この事例はLINEみらい財団「金融・情報リテラシー」の教材を活用して行いました。いくつかの事例を考えることで、単利と複利についての概念を次第に掴み始めていました。

ワーク1:お金を預けるの投資信託?銀行?

ここで、私がしくじりかけたエピソードから単利と複利が資産形成にどのような影響を与えるのかを実例から考えるワークを行いました。

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生徒に聞くと、お金をどこに預けるのかの議論で、投資か銀行のどちらにするのかで、投資はリスクがあるから銀行に預ける意見が多かったです。しかし、それぞれの資産がどのように変化していくのかを計算で求めていくと、生徒の意見に変化が生まれ始めました。そして、10年後までは頑張って計算をしていたのですが、20年後、30年後、40年後になってくると、計算ではなく代数の考え方を用いて、式から考えていきました。

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これを、関数のグラフを書くアプリに入れて、どのような増え方をするのかをみていきました。

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ワーク2:奨学金の利子率って大事なの?

次のワークでは、これから大学進学を検討する際に、学費を払うためにどのような奨学金を選べばいいのかを考えていきました。最近では奨学金の利率が下がってきているので、もしかするとあまり考える必要がなくなってきているトピックかもしれないですが、複利の世界では、小さな数でも何年もかけて返済していくと大きな違いになることを体感してもらうワークを行いました。

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このワークでも、利率で見ると1.5%と0.07%ですが、これを20年かけて返済をしていくと違いは大きくなることが分かります。このお金を借りて、分割で返済することは、これから先の人生でも何度も出会うことになると思います。複利の世界では、年数がかかればかかるだけ利子が大きくなることを学んできたので、お金をどのようにして返済していくのかを考える時に、一括で返済するのか、敢えて分割で返済するのか、複利について学んでいるのと学んでいないのとで選択も大きく変わってくると思いました。

レッスン後に、私がiPadの購入の返済を2年間かけて分割で支払い、その利息を計算して、分割払いやリボ払いの背景で動いている数字について理解ができたからこそ「もったいない。」という言葉が出てきたのかと思いました。

ワーク3:どこに投資する?

まだ、期待値という概念がない中で、生活経験の中で何が得で何が損なのかを学んでいると思います。例えば、お祭りに行ってくじ引きがあったときに、商品の価値とくじ引きの金額、残りの景品の数から総合して、くじ引きをするのかを考えると思います。このときに、数学的に確率も参考にしながら総合的に考えることで1つの判断材料になると思います。

Q.  100万円をある投資した1年後、以下のリターンがあります。( )内は確率。

A.「80万円(1/5)」「100万円(1/5)」「120万円(1/5)」「150万円(1/5)」「200万円(1/5)」

B.「0円(1/5)」「100万円(1/5)」「150万円(1/5)」「250万円(1/5)」「300万円(1/5)」

C.「80万円(1/5)」「100万円(1/2)」「120万円(1/10)」「150万円(1/10)」「200万円(1/10)」

D.「0円(1/10)」「100万円(1/2)」「150万円(1/10)」「250万円(1/5)」「500万円(1/10)」

最初の考えでは、AとDを選択する人が多く、Aを選択した人は一番リスクが低いので選択しており、Dを選択した人は0円になる確率は1/10と確率が低い中で、9/10は損しないで、儲かる可能性が高いという理由を考えていました。

そして、リスクとリターンのマトリックスで分析することで、思考の整理と現在の自分の考えの立ち位置を確認したところで、期待値という考え方を用いることで再検討をしていきました。

▼ 期待値の計算結果

A. 130万円

B.  160万円 

C.  103万円

D.  165万円

この結果を見て、改めて自分がどこに投資をするのかと期待値で出てきた数字をマトリックスで整理すると次のような変化がありました。

期待値を基に考えることで、考えが変わった人もより、リスクと期待値を考えることで自分の考えをより固めた人もいました。

ワーク4:宝くじって得なの?損なの?

次に、前回の授業で学んだ期待値の考え方を応用して、宝くじは得なのか?損なのか?という問いを期待値の考え方を基に考えていきました。子どもたちは直感で宝くじは損であるという感覚を持っていました。

問い

・なぜ宝くじは損なのか?

・宝くじは買えば買うほど得になるの?損になるの?

実際に期待値を求めていくと149円になることが分かり、期待値から考えても損であることが分かりました。そこで「300円の宝くじを買って7億円が当たる可能性があるということはローリスクハイリターンなのではないか?」これは、前回のマトリックスでいうと左上の一番投資をする価値があるゾーンだけど、どうかな?と話すと1枚くらいなら買ってもいいかなという考えも出てきました。

問い

・高額当選の都道府県はどこか?それはなぜか?

・人数が多いほど高額当選が多いということはたくさん買ったほうがいいの?

実際に東京、大阪の大都市で高額当選が出ており、たくさん売れるほど高額当選の数が増えるということは宝くじはたくさん買うほうが得なのか?ということについて考えていきました。そして実際に計算して考えていきました。

実際に計算してグラフにしてみるとこのようになりました。

「この増え方は複利的な増え方のようなグラフになっている」と気づいて、買えば買うほど宝くじは損すると考えていました。実際は単利的な増え方なのですが、買えば買うほど損するということは理解していたように思えます。

こういった金融リテラシーを高めていくために、社会とか家庭科とか数学とかいう教科の枠を超えて実社会と繋げながら学んでいくことで、子どもたちにとって数学を学ぶ意義について感じられるのではないかなと思いました。

Unit5 Week1 自分自身の心の変化を詩と模様で表現する

Unit5 身体の変化は心の変化をもたらす

いよいよUnit5の学習に入っていきました。

ユニット5では、以下の知識とスキルの構造で概念型の探究を進めていきます。

ユニットの導入では、心の変化を少しずつ迎えている4年生が、自分自身の心の変化を捉える学びからスタートしていきました。

・歌の歌詞と自分の感情-経験を結びつける

そこで、12月のHoliday Concertで歌った「オトナになるって」の動線で、歌詞の中で心に残った歌詞と、なぜ印象的に残ったのかを歌詞とつながる4年生での自分の経験と紐付けながら、自分自身の感情の変化をふりかえり、言語化していきました。

▼ 子どもたちが印象的だったフレーズ

・オトナになるってどんな感じだろう(3)
・人に譲ること 人を許すこと(3)
・失敗してもくじけずに力にしていこう(3)
・仲間のためにできること大事にしていこう(4)
・辛くてもやりとげるのが一人前(3)
・近頃じゃ背も伸びたし力も強くなったよ(2)
・でもそれだけじゃまだみとめてもらえない(2)
・なんでも自分で決めて自由に生きてみたいよ(3)
・まだまだ半人前

また、同じフレーズでもどの感情と結びついているのかはそれぞれで、フレーズと自分の感情の繋がりについてもプルチック(参考リンク)で分類してシェアをしていきました。

このグループでは「なんでも自分で決めて自由に生きてみたいよ」というフレーズに対して、不安やうらやましいという感情と結びついている児童と憧れや期待の気持ちと結びついている児童同士で意見のシェアをしているのが印象的でした。

・感情を表す語彙を広げる活動

さらに、気持ちを表す言葉を広げるために、気持ちを表す言葉(約80個)をプルチックの輪で分類する学習活動を行いました。クラス全員で役割分担を行い、わからない言葉は辞書を使ってリサーチしながら表にまとめ、語彙を広げていきました。

プルチックの輪
・喜怒哀楽で自分の感情の変化を言語化する活動

子どもたちの中で感情を表す語彙が広がっていったところで、子どもたちに喜怒哀楽の感情で、1-2年生と4年生で喜怒哀楽の感情にどのような変化があったのかをふりかえりながら言語化する活動を行いました。

喜怒哀楽ワーク

子どもたちは、どんな時に怒ったり、悲しんだり、喜んだり、楽しんだりしていたのかを1-2年生のポートフォリオを振り返りながら言語化していきました。振り返ってみると、怒る対象が周りの友達から、自分自身の内面的なものに変化しているのを感じる児童がいたり、前は自分の意見が言えなくて悲しかったけど、少しずつクラスの中で自分の考えを伝えることができるようになった変化を書いている児童もいました。この喜怒哀楽のワークがこれから書いていく詩で用いる言葉のパーツになっていきます。

・詩の特徴を掴む

ここで、子どもたちに自分の心の変化と心の模様を詩と絵で表現することを伝え、詩の特徴について、いつくかの詩を読み解きながら詩の特徴を掴んでいきました。

色々な詩

▼ 子どもたちの発見した詩の特徴

・常識のことを言っているように思えるが深く考えられている。
・リズムに乗って歌える。
・短く歌える。
オノマトペが入っている。
・短いお話。
・なんのことを書いてもよい。
・暗号のようになっている感じがした。
・眠れる・優しい・・ゆったり・気持ちが楽になる
・豊か・ゆっくりなリズムが合う・自由
・気付いてほしいことを書くのが詩?
・伝えたいことを短くまとめる
・タイミングがある
・疑問に対する答え
・名言 etc...

詩の特徴

詩の特徴を掴んだところで、子どもたちは早速詩を書き始める活動を始めました。最初から自分の気持ちを詩に表現できる子、自分の気持ちを詩にどう表現したらいいのか分からない子、詩への向き合い方はそれぞれでした。ここで、大切にしたのは、綺麗な言葉や表現にこだわるのではなく、今のありのままの心の状態を表現できる雰囲気づくりを大切にしました。

・詩で表現した言葉を模様で表現してみる


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詩で表現できた児童から、今度は水彩絵の具や色鉛筆を用いて、自分の心の状態や変化について絵ではなく、抽象度の高い模様で表現する活動を行いました。PYPでは、教科で分けて学習をするのではなく、教科の枠を超えて学びを広げ、深めていくことを大切にしています。

クラスの中には、言葉で気持ちを表現するのが得意な子、コミュニケーションで気持ちを表現するのが得意な子、絵で気持ちを表現するのが得意な子、歌の歌詞のリズムに合わせて自分の気持ちを表現するのが得意な子等、一人一人に同じ課題を与えても、一人一人表現しやすい方法が異なることを子どもの姿から感じ取れました。

これは、ハーバード大学教授のハワード・ガードナー氏による「多重知能(Multiple Intelligences=以下MI)」の理論の繋がりがあると思いました。

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・詩の鑑賞の時間

子どもたちの詩と絵がカタチになったところで、保護者の方も交えて、詩の鑑賞会を行いました。子どもたちの借り物ではない、まっすぐな気持ちが表現された、詩と模様に教室が展覧会のような雰囲気になりました。子どもたちが発した言葉1つ1つが心にじーんとくるものがあり、詩という余白があるからこそ、鑑賞する人も色々な解釈ができて、お互いに感じたことを文字で伝え合う時間をとりました。

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▼ 子どもたちが表現した詩と模様

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このユニットでは「身体の変化が心の変化をもたらす」概念的な理解を深めていきます。子どもたちの中で、今起きている心の変化をメタ認知できたところで、ここからは、これから迎える心の葛藤にはどのようなものがあるのかを様々な人生のステージにいる人にリサーチをしていきます。

子どもたちの探究はこれからも続いていきます。

Unit5 テーマ概要

ユニット5では「私たちは誰なのか」をテーマに探究していきます。

▼ 私たちはどのような場所と時代にいるのか?(*PYPのつくり方参照リンク

自分自身の性質、信念と価値観、個人的・身体的・精神的・社会的そしてスピリチュ アルな健康、家族・友人・コミュニティー・そして文化圏を含めた人間関係、権利と 責任、人間であるということはどういうことなのか、ということに関する探究。

では、具体的にユニットの概要について紹介していきます。

▼ ユニット⑤の概要

▼ 教科の枠を超えたテーマ
who we are 

私たちは誰なのか

▼ セントラルアイデア
Changes that people experience in stages of their lives affect their sense of self. 
身体の変化は心の変化をもたらす

▼ 探究の流れ
- Physical, emotional and social changes
身体、精神的、社会的変化

- Cause and effect of these changes
身体的、精神的、社会的変化の影響と原因

- How to cope with the changes
変化への適応

このユニット5では、身体の変化は心の変化をもたらすことについて探究を深めていきます。

心の模様

私たち人間は、それぞれの発達段階に応じて発達の課題と出会います。考え方のヒントとして、エリクソンの発達段階によると、私たちは人間の一生を8段階に分け、心理的課題やその課題の達成により、獲得する要素を分類することができると言われています。

今回のユニットでは、私たち人間がどのように身体的、精神的、社会的に変化をしていくのかについて、探究的学びを通して理解を深めていきます。

しかし、身体の発達と聞くと、思春期を迎える子どもたちにとっては、どこか恥ずかしいトピックに感じてしまい、自分自身の心と身体の変化について正しく理解しないまま思春期を迎え、大人になっていく子どもが多いようにも思われます。これにより、自分自身の心身の変化が訪れた時に、自分自身を責めてしまったり、誰かをせめてしまったりして、心身の変化に適応できず、苦しむ子どもが多いように思えます。

「では、私たちは自分自身の心身の変化をどのように学んでいけばよいのか?」

ユニットの導入では、精神的な変化にフォーカスを当て、自分自身に今起きている心の変化と向き合っていきます。また、ユニットの中盤では、身体の変化にフォーカスする切り口として、心の変化をもたらす原因の1つに、ホルモンが関係していることから生物学的に理解を深めていきます。

これから思春期を迎え、大人になっていく子どもたちが、既に次の人生のステージにいる身近な大人にインタビューを通して、それぞれの発達段階にはそれぞれの人生の課題があることを掴んでいくことで、ユニットの終わりでは、これから迎える自分自身の変化にちょっとでも向き合う準備ができているスキルとマインドを持つことができている状態を目指していきます。

ゲスト講師では、学校の外に出て学ぶというよりも、学校コミュニティの中に自分自身の悩みがいつでも相談できる大人がいることを感じられるように、身近な大人をゲストに招いて、これから健やかに成長していくために必要な考え方や知識について学んでいきます。

最後のアセスメント課題は現在検討中です。

Unit4 テーマ概要

ユニット4では「私たちはどのような場所と時代にいるのか」をテーマに探究していきます。

▼ 私たちはどのような場所と時代にいるのか?(*PYPのつくり方参照リンク

場所と時間への適応、個人の歴史、家と旅、人類による発見・探検・移住、地球規模 そして地域レベルの観点から見た個人と文明の関係性と相互的な関連性に関する探 究。

では、具体的にユニットの概要について紹介していきます。

▼ ユニット④の概要

▼ 教科の枠を超えたテーマ
where we are in place and time

私たちはどのような場所と時代にいるのか

▼ セントラルアイデア
Significant events and people in history have impacted our lives today.
歴史上の出来事や人物が今の暮らしに影響している

▼ 探究の流れ
Contexts of historical events and people

歴史の出来事や人物について

-Significant events and people in history

史上に残る出来事と人物

-Impact of historical events and people on the present day

歴史上の出来事や人物が現代に及ぼしている影響

このユニット2では、歴史上の出来事が現代に与える影響について探究を深めていきます。

私たちの暮らしは、歴史上の出来事や人物と大きく関わっています。例えば、私たちが生活の中で使っている貨幣制度や税金の仕組みは、歴史上の出来事と大きくつながっています。

しかし、歴史と聞くとどこか遠い話をしているようで、歴史を面白くないなと感じる子どもも多いようにも思われます。歴史を縄文時代から現代史までを順番に辿り、ただ年号を覚える暗記型の歴史教育ではなく、歴史の学び方を学ぶことや、歴史は解釈であることを掴むことが、長い目で見た時に歴史を紐解き、歴史から学んでいく人を育てることに繋がるのではないかと考えています。

「では、私たちは歴史をどのように学んでいけばよいのか?」

このユニットでは、私たちが住んでいる岐阜市ではどのような歴史的な重要な出来事があり、歴史上の出来事や人物が今の暮らしに与えている影響を理解した上で、歴史的な事実から自分なりの解釈をし、事実と解釈に分けて文章に表現するスキルを高めていく学習活動を行っていきます。

フィールドトリップでは、実際に岐阜市の歴史的な場所である岐阜城織田信長の住まいがあった長良川公園、歴史博物館を巡りながら学んでいきます。

最後のアセスメント課題では、一人一人が興味を持った岐阜県と関わりのある歴史的な事実をリサーチし、12個の歴史的な事実から繋がりを見つけ、歴史上の出来事や人物が今の暮らしに影響していることを複数の事実を統合することで掴んでいきます。

クラス会議を通して【人権感覚を育む】クラスづくり

人生で初めてクラス担任を持つ中で、クラスの担任の役割として子どもたちに人権感覚を育めるような機会をつくる重要性を感じ始めています。

オランダのイエナプランのサークル対話

「人権感覚を育むとはどういうことか」改めて自分の中でもゆっくり考えながら、実践していきたいと考えています。そもそも人権感覚とは何かの定義を文部科学省の資料から考えてみました。

▼ 第1章 学校教育における人権教育の改善・充実の基本的考え方(参照リンク

人権感覚とは、人権の価値やその重要性にかんがみ、人権が擁護され、実現されている状態を感知して、これを望ましいものと感じ、反対に、これが侵害されている状態を感知して、それを許せないとするような、価値志向的な感覚である。

「では、人権感覚を育むとはどういうことか?」

▼ 人権感覚の育成を目指す取組(参照リンク

[自分の大切さと共に他の人の大切さを認めること]ができるために必要な人権感覚は、児童生徒に繰り返し言葉で説明するだけで身に付くものではない。このような人権感覚を身に付けるためには、学級をはじめ学校生活全体の中で自らの大切さや他の人の大切さが認められていることを児童生徒自身が実感できるような状況を生み出すことが肝要である。児童生徒一人一人が、自らが一人の人間として大切にされているという実感を持つことができる時に、自己や他者を尊重しようとする感覚や意志が芽生え、育つことが容易になるからである。

「子どもたちは人権についてどのようにして学び、人権教育を通して何を子どもたちに育む必要があるのか?」についても考える視点を調べてみました。(参考リンク

人権感覚を育むためには、次の3つの側面(1.知識的側面、2.価値的・態度的側面及び3.技能的側面)から捉えることができると書かれています。

北欧の教育現場での視察を通して気づいた日本の学校現場との違いとしては、1の知識的側面というところです。フィンランドの学校現場では、小学校段階で「子どもの権利条約」について学んでいます。

フィンランドの小学校の掲示

なぜ、小学校段階で子どもの権利について学んでいるのかを現場の先生に聞いてみると、自分にはどんな権利があるのかを知ることで、相手にも自分と同じように権利があることを知り、自分の権利も相手の権利も尊重する感覚を育むことができると現場の先生は話していました。

今私が働いている学校でも小学校3年生の時期に子どもたちは子どもの権利について学習を行なっています。

しかし、子どもの権利について知識で学ぶだけでは、人権感覚を育むことは難しく、文部科学省が示しているように、人権感覚を身に付けるためには、学級をはじめ学校生活全体の中で自らの大切さや他の人の大切さが認められていることを児童生徒自身が実感できるような状況を生み出すことが重要になります。

私自身、4月からクラスの運営を行う中で、大切にしてきたこと。苫野一徳氏の著書である『教育の力』に書かれる一文です。

<自由>と<自由の相互承認>の感度を育む

しかし、私の中で多くの葛藤が生まれてきました。私は、フィンランドの学校で、子ども中心の学びを体感で学んできました。私の中で、どこか日本の学校教育は制限をかけることで「子どもたちが自由に生きたい」と感じさせる順番に違和感を感じていた5年前。子どもたちは、自由にしっかり考えられる環境があるからこそ、自由な環境の中でたくさん失敗して、その都度何が間違っていたのかをふりかえりを通して、自由と自由の反対にあるものの違いやバランスについて学んでいけるのではないかと仮説が浮かび上がってきました。

しかし、今子どもたちが「自由に生きる力を育む」ために、子どもたちにどの程度、自由に選び、考える機会をデザインし、どの程度子どもたちに制限をかけていくのかのバランスの取り方がわからなくなってきている自分がいました。

子どもたちは、学校生活の中で、友達のことを知らない間に傷つけてしまったり、自分の主張を通すためにグループで対抗して相手が意見が言えない状況を作ってしまったりと、発達段階に応じて色々な壁とぶつかることが出てきます。この時に、学校の中で「何が正しくて、何が間違っているのか?」について一度立ち止まって、一緒に考えていくことが重要であることを感じ始めています。

また、クラスの中で個別で起きる問題も、実はクラスの中にある文化や価値と繋がっていることも多くあるなと感じています。

これからの実戦として、クラスの一人一人がよりよい関係性を育んでいけるために、ルールメイキングのプロセスを通して、人権感覚を育める機会を作っていきたいと感じています。

では、具体的にどのようにその機会を作っていくのかについて考えているときに出会ったのがクラス会議になります。

▼ クラス会議とは(参考リンク

クラス会議とは、アドラー心理学に基づく学級経営の方法で、「クラスが騒がしい」「係の仕事をやってくれない人がいる」などクラスの問題を子ども全員で話し合い、解決策を考える会議です。

これから、深見太一先生のクラス会議を導入して、子どもたち一人一人が人権感覚を育めるような実践を行なっていきます。

また、実践報告をここでまとめていきます。

第1回目のクラス会議

実はこれまでも、クラス会議のようなことは、子どもたち自身で解決していく機会を設けていました。そして、実際にクラスの困りごとを話し合いの中で、自分たちで解決できた事例もありました。

具体的には、この学級では給食の配膳において、当番制を導入するのか自主性を導入するのかで意見が分かれていました。最初はそれぞれのメリットとデメリットについて話し合いを行い、当番制のメリットとしてはスムーズであること、デメリットはコミュニケーションの機会や考える機会が減るという意見が出てきました。また、自主性のメリットとしては、友達同士で声かけをする機会が増えたり、自分から動く文化(Pay forward)が生まれる、デメリットとしては、動く人と動かない人で偏りが生まれるのではないか?という意見が出ていました。意見が分かれても、多数決で決めることなく、一旦話し合いが平行線に。

すると「何か楽しくできたらいいと思う。ゲームみたいに。」

「だったら、バケツリレーとかどうかな?」

「いいと思う!」

そして、今まで給食当番は自主性で機能していなかったのが、自分たちで考えた仕組みが導入されると、一人一人が納得感と責任感をもって取り組むようになりました。クラス会議が導入され前から、自分たちの課題を先生が解決するのではなく、解決するきっかけを届けて、自分たちで解決していくクラス文化を育んできました。しかし、日常的に会議をするわけではなかったので、クラスの中にある課題が一部の人の意見でそのままになっている現状もありました。そこで、日常的にクラスで起きている課題ややりたいことを、クラスにいる一人一人の声を聞きながら、クラスの中で必要な仕組みを作る過程を通して、人権感覚を育める機会を作っていきたいと考えています。

第1回目のクラス会議では、初回ということで、グラウンドルールの確認を行いました。

今のクラスは「論理的に考える力」や「自分の考えを言語化する力」はあるのですが「聞く力」と「実際の行動に移す力」に課題があり、子どもたちに「友達の考えを聞く価値を知る」と「考えたことを行動に移す」機会をクラス会議を通して届けていくきっかけにできたらと考えています。

早速、最近のHappy/Thank you/Niceをシェアしました。第1回ということで、最初はパスする子が多かったのですが、次第に友達のシェアを聞いて、言葉にする子が出てきました。

そして「クラスの中で、学習用テーブルだけ誰も掃除の時間にしたがらないので、当番制にした方がいいと思う。」という声も自然と上がってきました。クラスの中で困っていることを言えるということは、このクラスの中に心理的安全性があることも分かりました。そして、いつもは「絶対嫌だ〜」「当番制は嫌だ」という声が重なり合って出てくるのですが、トーキングスティックを持った人しか話せないということで、一人一人の感じたことを聞くことができました。結局この日は結論は出なかったのですが、少しずつクラスの課題についてクラス会議を重ねて行けたらと思います。

▼ 本日の子どもたちの問い

「否定と自分の意見の違いってなんだろう?」

これについてもゆっくりクラス会議を重ねながら深めていきます。

第2回目のクラス会議

子どもたちの中で、クラス会議で話したいテーマが集まるようになってきました。

この中で、本日選ばれたのは「自分たちでスキー研修の部屋割りを決めたい!」というものでした。今までは「自由に決めたい!」という多数派の意見と「色々な人と関われるように違うメンバーになるようにしたい!」という少数派の意見でぶつかり、多数の意見でそのまま流れることが多かったのですが、クラス会議をすることで変化が生まれ始めました。

本日の議題「4年生男子3人の部屋割りをどうしたら良いんだろう?」

スキー研修は3.4年生合同で行われます。意見を出してくれた子の気持ちとしては、仲のいい4年生3人で同じ部屋に泊まりたい正直な気持ちを表明してくれました。それに対して、女子が「自分には関係ない。」という風に他人事にするのではなく「4年生3人で同じ部屋になりたい気持ちはわかるけど、4年生には3年生のことを観る責任があるんじゃないのかな?」という「責任」にフォーカスした意見が出てきました。色々な意見を聞くことで、提案した男の子も「確かにまだ確定ではないけど、4年生の責任を考えると、男子3人はバラバラになった方がいいと思うけど、でもやっぱり4年生3人一緒がいいな。」という感想を話してクラス会議を終えました。

最初に、先生が男子3人は別々の部屋になると伝えることもできたのですが、クラス会議で自分たちで会議をする中で、気持ちや考え方の変化が見られる時間でした。次回はどんな議題が出てくるのか楽しみです!