フィンランドの学校に行こう!

フィンランドの教育を通して日本の教育を見つめ直す。

Unit4 Week6-7 歴史上の出来事は現代に与える影響

Unit4歴史上の出来事や人物が今の暮らしに影響している

いよいよ、形成的評価課題を経て総括的評価課題に入っていきます。総括的評価課題では、形成的評価課題でリサーチした戦国時代の重要な出来事(楽市楽座の政策、鉄砲の戦いへの導入、関市の刀の保護と戦への導入)に加えて、私たちの住んでいる岐阜市の歴史の出来事と今の私たちの暮らしへの影響について9つのテーマを加えて探究をしていきます。

総括評価課題でフォーカスするATLはリサーチスキルに加えて、自己管理スキル(管理調整スキル)にフォーカスして行っていきます。

背景としては、1学期からこれまでは協同的な学びとプロジェクト型の学びにフォーカスをして行ってきたのですが、個人の力を伸ばすということが課題として浮かび上がってきました。そこで、デューイの理論と実践を苫野一徳さんが理論化した「学びの個別化・協同化・プロジェクト化の融合」の中でも、今回は学びの個別化にフォーカスして、子ども一人一人の能力を最大限に引き出せる伴走者を目指していきます。

▼ 総括課題で目指す概念的理解

今回取り上げる歴史的な事実は以下の12個になります。そして、この12個を繋ぐ重要なトピックは「今の暮らしへの影響」になります。ここから子どもたちは、今回のATLでフォーカスする自己管理スキルに働きかけながら2週間かけて総括的評価課題に取り組んでいきます。手法としては「ガイドされた探究」のメソッドを取り入れており、教員の役割としては、子ども一人一人の能力を最大限に引き出せるように伴走を行っていきます。

▼ 総括課題の12の歴史的な重要な出来事(事実)

次回、ATLにフォーカスするアクティビティとして、時間とタスクをどのようにして効果的に管理していくのかを考え、計画するところからスタートしていきます。

▼ 今回フォーカスするATLのルーブリック

来年度PYPの集大成であるエキシビジョンに向けて、今回フォーカスる時間とタスクを効果的に管理する自己管理スキルはとても重要になります。今回大人の役割として大切にしてきたのは、大人が上手くいくように全てを伴奏するのではなく、子どもたちが自分自身の自己管理スキルの課題に気づき、来年度に向けて自己管理スキルを磨いていく課題に気付くことでした。

今回は、自分の課題の進捗具合を確認するために以下のシートを活用していきました。

また、ルーブリックのLev.3にチャレンジする人は、時間とタスクを効果的に管理するための一歩として自分自身が課題にどれくらいの時間がかかるのかを知るためのシートを活用する子もいました。

課題を進める中で、計画的に課題を進めることができる子、直前までどのようにまとめるのかを考え直前までまとめるタスクに進ことができなかった子、前日まで課題を仕上げるのに追われていた子、一人一人課題への取り組み方は違いましたが、期限内に大人の力も借りながら、最後は自分の力でやり切ることができました。

プレゼンテーション

そしていよいよ向かえたプレゼンテーション。

子どもたちは3分間の中で、上記の内容でプレゼンを行いました。

▼ 内容
リサーチした歴史上の出来事が現代に与えている影響を伝えることができている。
▼ スキル
事実と解釈を分けて伝えることができる。
▼ 聞き手の視点
歴史上の出来事が現代に与える影響について考えながら聞くことができる。

こちらが子どもたちの制作した新聞になります!

鵜飼&関市の刀新聞

鵜飼についてリサーチした児童は、実際に鵜飼ミュージアムに行って、情報を収集し、事実と解釈に分けてまとめることができました。鵜飼の特徴、鵜飼が1300年以上守られてきた歴史的な背景、鵜飼と自然との繋がり等についてまとめることができました。

関市の刀についてリサーチした児童は、実際に関市に行ってインタビュー調査をするだけでなく、刀と鉄砲の繋がりをリサーチするために滋賀県にある鉄砲ミュージアムに行って、刀と鉄砲の繋がりについての調査したこと、更に鉄砲と花火師の繋がりについてもまとめることができました。

美濃和紙&弁当新聞

弁当文化についてリサーチした児童は、戦国時代の歴史のリサーチをする中で、ふと「そういえばお弁当っていつからあるんだろう?戦いの時にお弁当って使われていたんじゃないかな?」という疑問が浮かび上がり、調べてみると織田信長とお弁当文化の始まりに繋がりがあることが分かり、お弁当文化の歴史についてのリサーチが始まりました。子どもの第六感というものを感じました。

美濃和紙についてリサーチした児童は、実際に美濃和紙をつくりに行き、美濃和紙の歴史と価値、地理的な影響との繋がりについてまとめることができました。更に、美濃和紙の価値だけでなく、なぜ衰退していったのかを他の産業の影響から考察を得ることができました。

貨幣&美濃焼新聞

美濃焼についてリサーチした児童は、美濃焼の歴史、価値、更に現代への影響として、国内の陶器のシェア率が美濃焼が60%以上もあることを根拠に説明することができました。更に、歴史的な事実を元に、美濃焼の名前の由来や現代至るまでの変化について自分の考察を交えながら説明することができました。

貨幣についてリサーチした児童は、実はユニット1の政治のユニットからお金の歴史について興味を持っており、ユニットを超えて歴史のユニットでリサーチをすることができました。リサーチの中で徳川家康が作った貨幣制度の仕組みと現代の貨幣制度の仕組みの共通点から、徳川家康が作った貨幣制度の現代への影響について説明することができました。

岐阜和傘&キリスト教新聞

岐阜和傘についてリサーチした児童は、岐阜和傘の歴史や、他の産業との繋がりとして、岐阜和傘は質の良い美濃和紙の産業に支えられており、美濃和紙がなかったら岐阜和傘もなかったのではないかと自分なりの考察についてもまとめることができていました。

キリスト教をリサーチした児童は、複数の歴史的な事実を組み合わせて考察することができていました。キリスト教が日本に入ってきた歴史に始まり、同じ戦国武将でもキリスト教を受け入れた織田信長と、キリスト教を禁じた徳川家康には、どんな意図の違いがあるのかに疑問を持ち自分なりの考察をまとめることができました。

関所&岐阜提灯新聞

岐阜提灯についてリサーチした児童は、岐阜提灯の他の産業との繋がりについてまとめることができました。具体的には、岐阜提灯の材料である竹と美濃和紙という品質の良い産業が岐阜市にはあったことを理由に説明することができました。
関所についてリサーチした児童は、関所の役割と、ユニット2で学習した税金の役割をつなげて考えることができました。ユニット2では、税金がない世の中になると、通行税など道路を渡るのにもお金が必要になることを学び、信長が関所を廃止したことが今の私たちが自由に道を行き来できることに繋がると考察することができました。

地理的な影響と現代への影響

子どもたちは、プレゼンテーションを聞きながら、1つ1つの歴史的な出来事が私たちの暮らしにどのような影響を与えているのかを考えながら、地図にまとめていく活動を行いました。

12人で12個の歴史的な出来事をリサーチすることで、産業と地理的な繋がりが見えてきたり、1つの産業が他の産業と時代を超えて超えて繋がっていることに気付いたり、更に歴史的な出来事が現代への暮らしに影響を与えていることに気づく時間になりました。

リフレクション

Unit4のリフレクションをライティングで行いました。

このユニットを通して子どもたちに掴んで欲しかった概念的な理解である、歴史上の出来事や人物が今の暮らしに影響していることを一人一人が自分の言葉でまとめることができました。これからも、子どもたちが何か歴史を学ぶ時に、今の暮らしとの影響に着目しながら学びを深めたり、また、歴史は今の暮らしに影響を与えていることがわかれば、今の私たちの暮らしが未来に与える影響についても考えられることで、自分たちの選択や行動について考えられる人になっていくのではないかなと思いました。

子どもたちの探究はまだまだ続いていきます!

Unit4 Week5 歴史は解釈である

Unit4歴史上の出来事や人物が今の暮らしに影響している

・形成的評価課題

いよいよ、今回のユニットでフォーカスするリサーチスキルを磨く学習活動に入っていきます。

▼ リサーチスキル(情報リテラシースキル)

考案および計画、データの収集および記録、統合および解釈、評価およびコミュニケーション

「歴史は解釈である」ことを理解することは、子どもたちが社会を生きていく上で重要だと考えています。実際に世の中にあふれている情報は、事実と解釈が混じった情報でが多く、解釈を事実と思い込んでしまうことは起こりうると思います。また、何か問題が起きたときに、事実ではなく自分の解釈で伝えてしまうことで、問題が複雑になることも起こり得ます。もちろん今回のユニットで事実と解釈を分けて考えるスキルを身につけることは難しいかもしれないのですが、世の中の情報には事実と解釈が混ざっていることを理解できるような学習活動を行えたらと思います。

こちらが今回の形成的評価で評価するATLスキルのルーブリック評価になります。

▼ ATLのルーブリック

ここまで子どもたちは、戦国時代の小道具(火縄銃、関市の刀、楽市楽座)を制作する中で、それぞれの特徴についての理解を深めてきました。

ここからは、今回のユニットで子どもたちに掴んで欲しい概念的理解である「歴史上の出来事や人物が今の暮らしに影響している」にぐっと理解を押し上げられるような仕掛けが必要になってきます。そこで、今回のユニットでフォーカスしていく重要概念である関連と視点、そしてトピックである「今の暮らしへの影響」にフォーカスしたリサーチを行なっていきます。

▼ 今回のユニットの知識とプロセスの構造(叩き台)

また、形成的評価の課題は、総括評価の課題を個人プロジェクトで行うスキルを育めるように、グループ課題として実施しました。以下が具体的な形成的評価の課題になります。

▼ 各チームの評価課題

信長は楽市楽座を行ったのか?

信長はなぜ、鉄砲を取り入れることができたのか?

信長はなぜ、関市の刀を支援し、戦いに取り入れたのか?

実際にリサーチを進めていくと、ネット上にある情報も何が事実で何が解釈なのかを分からないことに気づく子も出てきました。自分たちはネットの情報を全て事実と捉えてしまっている可能性もあるので、ネットの情報を見たときに何が事実で何が解釈なのかを考える視点を持つ重要性に少しずつ気づいてくれるといいなと思っています。

ステップ① マインドマップで整理する

一人一人が歴史的な事実と解釈を書いたところで、マインドマップを使ってグループで情報を統合していきました。

刀チーム

楽市楽座チーム

鉄砲チーム

ステップ② マインドマップで整理したものを統合する

次に、3つの概念の視点から、問いの答えを言語化していきます。ここでも歴史的な事実と解釈を分けて、様々な視点で問いの答えを考えていきました。

刀チーム

楽市楽座チーム

ステップ③ 地理的な視点と現代への影響を考える

刀チーム

刀チームには「なぜ関市で質の良い刀ができたのか」について地理的な視点から考えてみました。

▼子どもたちの考察した事実と解釈

・関市では、良質な水が長良川から取り入れることができた歴史的事実から、関市の近くを流れている長良川と関市を結び付けていました。

下呂では温泉が出るので、温泉は良質な水なので、その水が流れてくる関市の水は質が良いのではないかと解釈していました。

更に、関市の刀鍛冶が現代に与える影響については、今も刃物の産業が盛んであり、包丁や爪切りなど、今の私たちの暮らしに結びついている刃物を使った産業が今でも行われていることに気づいていました。

楽市楽座チーム

楽市楽座チームには「なぜこの場所で楽市楽座をしたのか」について地理的な視点から考えてみました。

▼子どもたちの考察した事実と解釈

・この辺りは、人がたくさん住んでいたので、人が集まる場所で楽市楽座を行ったのではないかと解釈していました。

・近くに長良川が流れているので、水を簡単に取り入れることができる環境だから行ったのではないかと解釈していました。

更に、楽市楽座が現代に与える影響については、戦国時代で使われていた産業の地名が今でも残っていたり、楽市楽座で経済が発展したことで、今でもこの周辺は経済が発展していると解釈していました。

ここからいよいよ、協働のプロジェクトで学んだスキルを活用して、個別のプロジェクトに入っていきます。最終的には、学んだことを地図にマッピングしていきます。

・課題のシェア&練り上げる時間

グループごとにリサーチして考えてきたことをシェアし、練り上げる時間を行いました。3チームあるので、3つのグループにバランスよく分かれて、自分のグループがリサーチしたことを他のグループにシェアしていきました。

そして、各グループでシェアを行った後は、楽市楽座の政策と関市の刀の支援と戦への導入と鉄砲を戦に取り入れた3つの歴史上の出来事の繋がり(関連)を歴史的事実を基に解釈していきました。

「信長には、どんな意図があったのか?」

最初のリサーチでは、リサーチした出来事をシェアするだけだったのですが、今回の練り上げる時間では、1つの情報だけでなく複数の情報をつなげて、事実を基に自分の解釈をつくることができるようになっていました。

3つのグループにシェアしてもらったのですが、同じ事実を基に考察しているのですが、グループによって解釈が異なるのが興味深かったです。

▼ 3つの政策にはどんなつながりがあるのか?

① 信長は国を治めていてお金がある。
② 国を治めているので、楽市楽座の政策を出すことができる。
楽市楽座の政策をすることで、他の国から人がくることで人口が増える。
④ 物を売り買いする人口が増えることで、町が発展し、人口が増え続け、信長は更にお金が増える。それだけでなく、人が移住してくることで、兵士を増やすことができる。
⑤ 城下町で楽市楽座を行うことで、信長は資金を獲得することができ、武器である鉄砲や刀をすぐに買うことができる。
⑥ 結果的に信長は土地を広げることができる。

12人で学んだことをシェアすることで、リサーチした事実を基に歴史を自分なりに解釈しながら深める一歩を踏み出せました。

さらに「信長は、誰のためにこのような政策を行ったのか?」という議論的な問いを投げかけると、町の人のためという人、自分のためという人、どちらもという人色々な意見が出ました。そして、自分が表明した立場の理由も歴史的事実を基に自分の解釈で説明することができる人が出てきました。

更に、それぞれの出来事について地理的な影響と現代への影響についても地図にマッピングすることで、歴史と地理をつなぎ合わせて、3つの関連性を更に可視化していきました。

▼地理的な影響をマッピング

▼ 現代への影響をマッピング

子どもたちの歴史のユニットもいよいよ最終章です!

次回から、このグループでの協働的な学びを通して学んできた事実と解釈を分けて様々な情報を統合するスキルを活用してパーソナルプロジェクトに入っていきます。

子どもたちの探究もいよいよ最終章です!

Unit2 世界の中の不平等や格差を数字で紐解く(G6)Part2

Unit2 社会の不平等や格差は、数量の等価形式を使用することでより明確になる

ユニット2では、公平性と発展というグローバルな文脈の中で、社会の中にある不平等や格差を数字で紐解いていきます。私たちは、何となく生活の中で不公平という言葉を使っていると思います。私たちが使っている不公平という言葉の根拠にあるものは何か?社会の中に複雑に絡み合っている問題を数字を使って事実を示すことができることをこのユニットを通じて子どもたちに体感してもらえたらと思っています。

概要

Statement of inquiry
社会の不平等や格差は、数量の等価形式を使用することでより明確になります。

Global context
公平性と発展

このユニットでは、パーセンテージ、分数、および小数を使用して、「公平性と発展」のグローバルな文脈を探究していきます。

▼ Unit2全体の流れ

Part1(リンク)では、Statement of inquiryにある社会の中にある不平等や格差はどのように生まれているのかを理解するために、実際に貿易ゲームを行い、社会の中の格差や不平等がどのように生まれるのかを体感し、数値を使って格差を明らかにする活動を行いました。

▼ 分析してきた内容

Part2では、格差や不平等さを解決するための仕組みを考え、新たな仕組みによって、格差や不平等さがどのように変化するのかを数値でシュミレーションを行い、実際に新たな仕組みで貿易ゲームを実施していきます。

形成的評価「新貿易ゲームの新たな仕組みの提案書作成」

そこで、Unit2の形成的評価の課題を次のように設定しました。

G6が行った貿易ゲームの社会にある不平等や格差を是正するために必要な仕組みやルールを考える。ただし、元からある資源や技術は変えないものとする。

▼ ルーブリック評価

▼ 貿易ゲーム仕組み改変の提案書に必要な項目

① 自分の地域の現状

② 自分の地域からみた世界にある問題点

③ 自分の地域のGDPに影響を与えているものを分析する

④ 提案したい貿易ゲームの仕組みとルールと理由を示す

⑤ 自分が提案した新たな仕組みによって期待される効果

▼ 改変前の世界の現状

世界全体で見ると、オセアニアの一人当たりのGDPが全体の過半数以上を示しており、貿易ゲームの中で格差が広がっているのが分かります。

▼ 実際の生徒の提案した改変書

生徒の提案したもので印象的だったのを紹介します。この提案書では、自分たちの地域だけでなく、全ての国が発展することで、全ての国が一人当たりのGDPを高めるためのアイデアを考えていました。格差や不平等を是正することを目的とすると、GDPが高い国の生産性を落とす考え方や共産主義的な資源を平等に分配する考え方のアイデアが出る中で、資本主義経済の仕組みの中で全ての国が発展できるアイデアは印象的でした。

またこのグラフでは、観光カードを取り入れることで、一時的には資源を投資するのでその国の資源は減少するのですが、長期的に見るとプラスになることをグラフを使って示すことができていました。

アクティビティ2「新たな仕組みで新貿易ゲーム実施」

生徒が作成したルールの改変書を国際会議で提案し、自分たちの世界にどの新たなルールを取り入れるのかをディスカッションを行いました。流れとしては、6つの地域から代表者が3分間のプレゼンを行い、提案に対して10人のメンバーで国際会議を開き、世界の不平等や格差が是正される目的を達成するためのディスカッションを行いました。

▼ 可決された新たな仕組み

① 裁判の仕組み
あおった人と暴言をはいた人を複数人(2つの地域以上)が目撃したら国際会議にかけて、可決(3分の2)されたら罰金(500ドル=5枚)を支払う

② 国連の組織と寄付文化
- いつでも寄付できる仕組みをつくる
- アクションカードで寄付カードがでたら必ず各地域から100ドル以上支払う

③ 国連の援助の仕組み
- 国連からの援助金は、各地域の一人当たりのGDPが4になるまで寄付を続ける

④ 観光でその地域を発展できる仕組み
>2000$で国を発展することができる(任意)s
>毎ターン500$+売り上げが20%UP。

④’観光カード+フェスティバル
このターンは1500$消費する。このイベントが起きる前に「国の観光」で土地を発展させていれば、自国の人数×300$の利益を出すことができる。

④’’ オリンピックで経済を発展させる仕組み
オリンピックを開催する地域は3000$支払う。
>毎ターン500$+売り上げが20%UP。
このイベントの参加料金と賞金については開催国が決める。

⑤ 内戦と移住のシステム
その地域の過半数以上の人が声をあげたら、内戦を起こして、移住をすることができる。その場合の資金、技術、資源の配分は地域で相談する。ポイントは、人口が多い地域が人口が好きない地域に移住することで、一人当たりGDPのバランスが取れる。

外国人労働者を派遣する仕組み
相手との交渉の中で、人数が2人以上いるチームが一番少ないチームに1人派遣することができる。ただし、1ラウンドで終わる。その一人は、その地域を荒らさずにその地域に服従する。ただし、きてもらう側は、資金を1枚以上渡さなければならない。

メリット:派遣する側は、1枚でも資金がもらえるし、派遣される側は仕事が捗ることで生産率が上がる。

実際にこの新たな仕組みで新貿易ゲームを行なっていきます。元々あった技術や資源の格差から広がった格差を、貿易や協定、そして新たな仕組みでどのように世界が変化していくのかを見ていきます。

アクティビティ3「新たな仕組みで新貿易ゲーム実施」

まずは、新たな仕組みを取り入れたことで新貿易ゲームを行う準備を行いました。主に、新ゲームを実施する上でのタイムテーブルをつくるチームと必要になったアクションカードの作成を行うチームに分かれました。

▼ タイムテーブル

▼ イベントカード

▼ 観光カード

そして、いよいよ新たな仕組みで貿易ゲームがスタートしました。合計3時間実施を行い、変化を分析していきます。

実際に貿易ゲームで機能していたのは、観光カードでした。観光カードを導入することで、全ての地域が観光に投資を行い、その結果少しずつ経済が発展していくきっかけになっているように見えました。

アクティビティ4「新たな仕組みで新貿易ゲームの結果分析」

▼ 新貿易ゲームの結果

ここから新貿易ゲームの結果を見て、自分たちのつくった仕組みが新貿易ゲームにどのように影響したのかを分析していきました。
▼ 分析のポイント

全体(左)/一人当たり(右)のGDPの変化の比較

それぞれの国の一人当たりの全体に占めるGDPの割合

円グラフを用いてパジャで示すことで格差を明らかにすることができました。ここで、違和感に気づく生徒が出てきました。その生徒は実際の世界のGDPの割合とこの貿易ゲームの世界のGDPの割合に大きな解離があることに違和感を感じていました。

▼ 実際の世界の一人当たりのGDPの割合



今回の貿易ゲームでオセアニアだけが実際の世界と比較したときに大きな割合を占めている違和感に気付いていました。

 

総括的評価「自分の気になる社会の不平等や格差」

ここまで、子どもたちは社会の中に生まれる格差の原因について貿易ゲームを通じて体感し、格差というものを割合(パーセンテージ)を用いて表し、グラフや表を用いて説明するスキルを育んでいきました。

総括課題では、これまでに身につけてきた数学的な見方・考え方を働かせて、一人一人が関心のある社会の中の格差や不平等について探究し、ポスターセッションに取り組んでもらいました。

f:id:hamu-cute120:20231228140321j:image

まずは、クラス全体で社会の中にはどのような格差や不平等があるのかをブレストを行いました。

f:id:hamu-cute120:20231228141037j:image

その中で、自分が気になるテーマを選び、気になった背景、問い、問いに対する仮説を探究シートに言語化するところからスタートしました。そして、探究シートに言語化できた人からリサーチに入りました。

リサーチの評価基準としては、形成的評価と同じ項目で行い、評価基準D.実生活への数学の応用で示しました。

f:id:hamu-cute120:20231228141510j:image

生徒はLev.1の自分が選んだテーマの社会の中にある不平等や格差をパーセンテージを用いて明らかに示すところからスタートしました。そして、Lev.1のリサーチが終えた人は、いよいよ不平等や格差を生み出している原因について自分が立てた仮説を検証するために、2つのデータの相関関係をグラフに表し、仮説検証を行いました。Lev.2では統計学の考え方を取り入れて数学的に検証をしていきました。

印象的だったリサーチは、男女平等を表すジェンダーギャップ指数を活用したもので、ジェンダーギャップは、歴史が長い国であるほど高くなるのではないかという仮説があったのですが、ジェンダーギャップのランキングと国の歴史の相関関係を調べたところ、仮説とは反対の結果が出てきたことでした。

f:id:hamu-cute120:20231228142202j:image

このグラフでは、縦軸がジェンダーギャップ指数のランキングを表しており、横軸が建国した年を表しています。グラフから、建国年が最近の国ほどジェンダーギャップ指数が高いことを読み取っており、必ずしも国の歴史が長い方がジェンダーギャップが大きい訳ではないことを明らかにしていました。

このように統計学のスキルを使って、自分が明らかにしたいことを表現することで相手に伝わりやすくなることを感じられたのではないでしょうか。

この総括課題では、形成的評価で使った数学的なスキルを活用して個別のプロジェクトで行うので、教員の役割としては、ガイドするような役割で生徒と1on1を繰り返す中で、プロジェクトのサポートを行いました。

プロジェクトが進んできたところで、大学の論文のような形式でレポートにまとめる課題を経て、生徒同士で最終ポスターセッションに向けてフィードバックし合う活動を行いました。

f:id:hamu-cute120:20231228143243j:image

生徒は評価基準を改めて確認しながら、自己評価と相互評価を行いました。また、相互評価では、お互いに数値の背景を説明する姿も見られました。

模擬プレゼンテーションと相互評価を繰り返して、いよいよ最終プレゼンテーションを迎えました。

日本における貧富の格差

世界における男女の不平等/インフラの不平等

障害者の差別/家庭環境の格差

医療格差

途上国と先進国の摂取カロリー違い/家庭環境格差


プレゼンの持ち時間が5分の中で、ルーブリック評価を意識しながら、数学的言語を用いて、ポスターセッションをやり遂げることができました。

Unit2では、ただ数学の公式を覚えて計算をするのではなく、公式の背景にある掴んでほしい概念的理解を深めていくことをフォーカスをしました。また、このユニットを通して、子どもたちが社会の中にある課題を数学的な見方・考え方を働かせることを通して、明らかにすることができることを感じられる学びになっていたらと思います。

個人的な振り返りとしては、ユニットを通して伝えたい概念的理解にかなりフォーカスをしてしまったので、数学的なスキルを磨きながら、概念的理解に到達できる授業設計を考えていきたいと思いました。

Unit4 Week3-4 戦国時代の道具再現プロジェクト

Unit4歴史上の出来事や人物が今の暮らしに影響している

・実寸大での刀・鉄砲づくりを通した歴史的事実のリサーチ

ここから劇で使用する小道具づくりに入っていくのですが、まずはどんな小道具をどれだけ作るのかを全体で話し合うところからスタートしました。

▼ 必要な小道具

・刀
・鉄砲
楽市楽座の制札etc...

ここからは刀チームと鉄砲チームに分かれて「本物をつくる」ことをミッションにリサーチを開始しました。

「ところで信長はどんな刀を使っていたのだろうか?」

信長が使っていた刀をリサーチし、刀の長さが3尺と出てきました。「3尺ってどれくらいの長さなんだろう?」ここで算数の単位換算の学習が入ってきました。

「1尺=約30.3cm」なので「3尺=約90.3cm!(ここで小数のかけざんの復習も行えます!)信長の身長は166cmとされているので、この刀は実際に信長には長いのではないか?」という疑問が生まれてきました。

ここである子どもが「身長に合わせた刀の計算式」を引っ張ってきて、計算をすると「166cm×0.43÷30.3=2尺3寸」しかし信長が使っていた刀は3尺です。「なぜ、信長は身の丈より長い刀を持っていたのだろうか?」子どもたちの疑問はどんどん連続していきます。

一方で鉄砲チーム。

「鉄砲はどのような型を使っていたのだろうか?」

調べてみると、鉄砲伝来からまもなく信長が戦で鉄砲を使用し始めているのが分かりました。仕組みを調べると、時間がかかる型式(火縄銃)であることがわかり、ここから時間がかかる鉄砲であっても戦に取り入れる理由を探る議論が始まりました。「遠くから攻撃できる利点があるのではないか?」「刀は敵が近くに来た時に、鉄砲は敵を近づけさせないため?」等意見が出てきたところで「戦が刀と鉄砲の2種類の武器になったのだが、鉄砲が入ってきたことによるメリットとデメリットはそれぞれ何か?」について考える課題を出しました。

子どもたちの中で、リサーチを進める中で「鉄砲を使うことが戦に有利である」考えは出てきましたが、リサーチした上で自分の意見や考えを述べるスキルが育まれていない課題が見えてきたところで、議論をわかりやすくするために「戦法と製造」の2つの視点に絞り、議論を深めていくことにしました。

ここで鉄砲チームには「鉄砲を使ってどのように戦ったのか?」刀チームには「そもそも刀を作っていたのは誰か?」についてリサーチ課題を出しました。

- 鉄砲チーム

リサーチしていくと、銃弾が鉛であったことに気づき、鉛とはそもそも何で、どうやって作るのか?と問いを投げかけました。更に戦い方を調べる中で、三段うちという戦法が出来上がり、一度に大量の狙撃ができるようになり「効率的」になったと分析する子も出てきました。

ここで「刀よりも鉄砲の方がいいという風に変わってきたら、刀は必要なくなるんじゃないのか?」「そうなると鉄砲がどんどん必要になって、どんどん作っていく必要があるので、誰が鉄砲を作っているんだろう?」と問いかけると、矢板金兵衛という人物が出てきて、この方は元々刀鍛冶であることを発見しました。

さらに、戦い方が変わることで、刀の代わりに鉄砲を作り始めたことに気づき、産業が変わったことにハッとしていました。最後に「戦の戦い方が変わったことで産業が変わったことはいいことだったんだろうか?」という問いが生まれたところで終了しました。

- 刀チーム

刀を作る人のことを刀鍛冶という仕事があることに気づいていました。ここで、刀鍛冶は私たちが住んでいる町の隣に位置する関市にあることと繋がり、戦があることで仕事ができたことに、戦と産業の繋がりを発見していました。

・寸尺で数学

前日に鉄砲づくりで寸尺が出てきたところで、寸尺を使って数学を行いました。

この問題を解くには、単位の考え方、単位換算のスキル、小数の割り算、メートル法の換算のスキルが必要になります。引き続き、探究の中で数学的な要素を取り入れた活動を行なっていきます。

・実寸大での刀と鉄砲づくり

まずは設計図を作るためのリサーチから始まりました。実際の戦国時代に使われちた火縄銃のサイズを調べ、実際のサイズの平面図を書いて、平面図にしたのち、分業制で鉄砲づくりが始まりました。

平面図の作成

▼ 今回フォーカスするスキル

自己管理スキルの中の管理・調整スキル(時間とタスクを効果的に管理する)

そこで、闇雲に自分がやりたいことをするのではなく、チームの中で分業を行いながら、計画的に進めていきました。

鉄砲チームは、段ボールで製図する担当、製図したものを切る担当、切ったものをグルーガンで組み立てる担当、組み立てたものを色付けする担当に分かれて制作を行っていました。

刀チームは、刀の刃、鍔、柄、鞘をつくるチームに分かれ、最終的には1つの刀に仕上がるように、接続部分の面積や長さを調整しながら制作を進めていきました。

計画ができたところでいよいよ制作スタートです。

- 刀チーム

刀鍛冶チームは、刀の制作を行います。

刀の鍔を作る鐔師チームは鍔のデザインを調べ、ここに書いてある漢字の意味のリサーチを行います。

柄巻師チームは、紐の巻き方をリサーチし、巻き方の練習から行います。ポイントは、ひしがたになるように巻くのがコツみたいで、何度も練習を重ねていました。

そして、いよいよそれぞれのチームのパーツが完成していきました。

刀の刃身を作る刀鍛冶チーム

刀の鍔を作る鐔師と柄を作る柄巻師チーム

刀を収める筒状の入れ物を作る鞘師チーム

そして、分業したものをいよいよ組み合わせる時が来ました。それぞれの長さを測り、情報を共有し、無事に組み立てるかどうかドキドキしていましたが、無事にぴったりはまりました。

完成品①

完成品②

- 鉄砲チーム

鉄砲チームは順調に製作が続いていたのですが、製作後に長さを測ってみると、100cmほどで完成するハプニングが起きました。今回は、実寸サイズで再現することがミッションなので、大きさを長くする修正ミッションが生まれました。

刀の土台を作るチーム

刀の土台を作るチームは、平面図から立体的に作るスキルが職人技でした。他にも鉄砲を作る過程の中で、鉄砲の土台を組み立てるチーム、組み立てた鉄砲を色付けするチームに分かれて作業を進めていました。

一方でこちらは、鉄砲の鉛チーム。鉛の直径の大きさをリサーチし、さらに30個の鉛を作るのにどれぐらいの時間がかかるのかを計算し、制作を開始しました。

そして、いよいよ...!!!! 131cmの実寸大の火縄銃が完成しました。

「かなりでっかい〜〜!!!」実寸大だからこそ体感できるリアル感でした。

実際に刀と鉄砲の長さを比べてみると、火縄銃の方が刀より長いことを体感したり、思った以上に刀や鉄砲が大きかったことを実感していました。

最後は楽市楽座の制札です!楽市楽座の制札の長さを調べ、制札を作るにはどれぐらいの大きさのダンボールが必要なのかを面積を求めて、平面図を作成するところから始まります。

制作をしていると、文字を書く時に今と文字の形が違うことに気づき、頑張って戦国時代の書体の文字を再現していました。

そして、いよいよ戦国時代の道具がほぼ完成しました。

最終的には「ミニ劇プロジェクト」でここで製作した道具を使って劇を行います。同時に、個別のプロジェクトがスタートします!

子どもたちの探究とプロジェクトは続いていきます!

Unit4 WEEK1-2 岐阜にゆかりのある歴史との出会い

Unit4歴史上の出来事や人物が今の暮らしに影響している

いよいよUnit4の学習に入っていきました。

・歴史の導入(地球の歴史)

まずは、子どもたちが歴史の学習を「ジブンゴト」として捉えられるように、私たちの住んでいる地球にとって重要な出来事について考えるところからスタートしました。

まず、子どもたちに3mの紙テープを見せて、この3mの長さが地球が誕生してから現在までの時間を表しており、この3mの長さの中で人類が誕生した場所はどこかについて発問を行いました。

子どもたちは全学年で宇宙について学習をしてきているので、地球が誕生したのは約46億年まであることは知っていました。人類が誕生したのはどこかについて尋ねると、様々な意見が出てきました。

予想が集中していたのは、真ん中よりも現在にちょっと近い付近でした。ここから、実際に人類が誕生したのがいつかを調べ、3mの長さの中でどのあたりかを計算で求めていきます。

「私たちの住んでいる地球の歴史の中で重要な出来事とは何か?」という発問をすると...

・恐竜の誕生
・地球に隕石が落ちたこと
・水の誕生
・生物の誕生
・植物の誕生etc...

私たちの現代の生活に影響を与えていることを大きな視点で考えていきました。そして、子どもたちは、実際に地球上の重要な出来事が起きたのがいつなのかをインターネットで調べて、3mの長さの中でどこに位置づけられるのかを計算していきました。

そして、「めっちゃ細かくて人類が誕生したことを紙テープに書けない!」という言葉が出てきました。自分たちが生きている世界が地球の誕生の視点から見るととても最近の出来事であることを感じる発見になったと思います。

ここから、私たちにとって身近な歴史上の出来事の探究に入っていきます。

とはいえ、子どもたちにとっては、歴史とはちょっと遠い世界のように感じるものかもしれないです。そこで、まずは私たちが住んでいる地域(岐阜)の歴史の探究からスタートしていきました。

最初の導入として、4年生の子どもたちと同じぐらいの年代だった織田信長の幼少期の動画を見てもらいました。最初の織田信長の印象としては、岐阜市で何かをした人、戦で強かった人というイメージを持っている子が数人いました。やはり、岐阜の歴史上の人物といえば織田信長なんだと感じました。動画を見た後に、織田信長が「うつけもの(常識がない人)」と呼ばれていたことに子どもたちは驚いており「織田信長はもっとしっかりしている人だと思っていた〜」と感じたことを話していました。

▼ 動画を見て生まれた疑問

織田信長はどのようにして今川義元の大勢の敵に勝つことができたのか?
・岐阜という名前は誰が名付けたのか?
織田信長はどのように岐阜と関わりがあるのか?

・フィールドトリップ in 岐阜城/岐阜歴史博物館

早速、私たちが住んでいる岐阜市の歴史が詰まっている場所にフィールドトリップに行きました。

今回のフィールドトリップでは、岐阜市の歴史がたっぷり詰まった岐阜城、岐阜歴史博物館、岐阜公園を訪れました。

子どもたちにフィールドトリップでの視点を広げるために、歴史ビンゴをチームに配り、チームでフィールドワークするミッションを行いました。

まずは、ロープウェイに乗って岐阜城のある金華山の頂上を目指しました。ロープウェイを降りてから、岐阜城まで歩いて登りながら、気分は戦国時代に少しずつ入っていきます。「どうして山の上にお城を作ったんだろうね〜」と問いかけると「山の上は敵から攻められにくいんじゃないかな〜」と山を登りながら考えていました。

そして、いよいよビンゴのミッションがスタートして、チームごとにミッションをクリアしていきます。例えば...

ミッション8. 信長が岐阜城から見ていた長良川の写真を撮ろう!

ミッション6. 岐阜城ではどのようにして水を手に入れていたでしょうか?

「水」のユニットで学んだことと繋げて、この時代には今と同じように水をきれいにする仕組みや使った水をきれいにする仕組みがあったのかな?と思いを馳せながら写真をとっていました。

ミッション11. 織田信長が自分の強さを示すために用いた石垣の写真を撮ろう!

子どもたちは、BINGOのミッションを次々にクリアしていきました。そして、質問の答えが見つからないところは、岐阜城の案内人の方にインタビューを行い、岐阜の名前の歴史について深く理解する時間も生まれていました。

岐阜市民の方はこの岐阜のマークを見たことをがある人がほとんどだと思います。

▼岐阜のマークの由来

岐阜県は元々「井の口」という名前で、織田信長岐阜城の城主となったときに岐阜という名前に変えたと言われています。そして、この「井の口」と呼ばれるようになったのは、元々岐阜では「井川(現在の長良川)の水」を汲み取って生活をしており、井川を中心に町が出来上がったと言われています。そして、井川→井の口→今の岐阜市のマークになっているとのことでした。

まさに、ユニット1で「政治」について学習したこと、ユニット3で学習した「水の利用と管理が地域の開発に影響を与えること」そして、今回のユニット4での「歴史上の出来事が今の暮らしに影響をしていること」これまでに学んできたことが繋がるお話を聞くことができました。

岐阜城でのフィールドトリップを終えて、戦国時代の人が実際に歩いていた七曲りの大手道と呼ばれる登山道を歩いて、織田信長の居館があった岐阜公園を目指しました。

ミッション9. 織田信長が住んでいた家を岐阜公園で探して写真を撮ろう!

この辺から子どもたちはいよいよ戦国時代モードに入っていきました。
「自分が織田信長だ!」
「いや、自分が織田信長だ!」
「私が織田信長の奥さんだよ!」
「じゃあ自分は今川義元!」
というように、信長の居館の周りでミニ時代劇が始まりました。そして、その勢いで岐阜歴史博物館に到着しました。岐阜歴史博物館では、天下統一の特別展を行っており、実際に織田信長豊臣秀吉徳川家康が実際に生きていた証となるものを観覧することができました。ここでは、写真をとることができないので、自分が気になったものをスケッチブックにスケッチをしてもらうミッションを行いました。

子どもたちは、織田信長が使っていた刀を見ると「俺の使っていた刀がここにある!」と呟いており、まさに時代をタイムスリップしているような雰囲気でした。

あっという間に岐阜市の歴史フィールドトリップを終えましたが、子どもたちは早速岐阜市の歴史と関わりのある人物マップ(家系図)を作って役割分担をしていました。

大人でも難しい歴史上の人物を、一人一人に役をふることで、名前とストーリーを少しずつ体感で掴んで行っているのを感じました。今の子どもたちの段階としては、人物の関係性をなんとなく掴んできているので、その人物について詳しくリサーチする課題を出しました。

▼ リサーチ内容

ここでのリサーチ内容を元に、このユニットの形成的評価課題として、子どもたちと戦国時代のミニ寸劇を作っていけたらと思っています。子どもたち一人ひとりに自分が担当する人物についてリサーチをし、それを元に織田信長に関わりのある戦国時代の寸劇を一緒に作っていきたいと思います。

・台本づくりに向けた歴史的事実のリサーチ

台本づくりに向けて歴史的事実のリサーチを行いました。子どもたちには、台本の元となる自分が担当する人物についてリサーチをしてもらい、劇で演じるシーンを4コマ漫画にしてもらいました。

▼ 徳姫の担当

徳姫は、政略結婚で松平信康と婚姻関係を結ぶが、信康との間に後継となる男の子が生まれず、信康の母と問題が起きる。このことで腹を立てた徳姫は信康と信康の母の裏切りを信長に訴える文書を怒りながら書いたシーンをまとめていました。

織田信長の担当

この劇の主人公である信長は、最初に今川義元との戦いに勝ったこと、家康との同盟、最後の本能寺の変で家臣の明智光秀に裏切られるシーンを4コマ漫画にしていました。

徳川家康の担当

徳川家康は、元々今川義元のところで人質になっており、信長が今川義元を倒したことで、家康は独立を決意します。その後、天下分け目の戦いで秀吉を倒して天下を自分のものにするストーリーを描いていました。

そして子どもたちの4コマ漫画をつなぎあわせていよいよ台本が完成し、セリフの練習をシーンごとにスタートしました。ここでは、シーンを演じることで、私たちの住んでいる岐阜の全体的な歴史上の重要な出来事とその時に活躍していた人物を理解しながら、リサーチした歴史的事実をもとにその時の登場人物の気持ちを想像しながら演じる活動を行いました。

▼ 台本の一部

ちょっと子どもたち一人一人の役をストーリーにすると劇の台本が重くなってきたので、一旦軌道修正予定ですが、子どもたちがどこかで戦国時代の劇をする計画も残しつつ、よりリサーチに力をいれるアクティビティとパーソナルプロジェクトを同時に行なっていきます!

子どもたちの探究は続いていきます!

Unit3 WEEK6 学んだことをアクションへ

Unit3 水の利用と管理は、地域の開発と持続可能性に影響を与える

いよいよ学んだことをアクションに繋げる準備段階である総括的課題をスタートしました。今回のユニットでは、水の利用と管理について学んだことをアクションに繋げるために「私たちが住んでいる岐阜市では、きれいな水がどのように循環しているのか」について整理していきます。

▼ これまでのユニットの歩み

① 水の重要性の体感するためのアクティビティ
・私たちは1日にどれだけ多くの水を学校で利用しているのかを調査

② 水の利用可能度と地理的な影響を体感するアクティビティ
・自然(山)のろか機能を学ぶためのろか実験
・水の循環を学ぶための海水を淡水化するろか実験
・私たちが使っている水がどこから来るのかを知るための水源地の見学
・私たちが使っている水の水源の元となる長良川の水質環境調査
・私たちが使用した汚水はどこにいくのかを知るための下水処理場の見学

③ 水を持続的に使用するためのコミュニティの責任を知るためのアクティビティ

・水の戦争に関するドキュメンタリーを鑑賞
・世界の水問題と私たちに与える影響を考えるディスカッション
・水を管理している市役所の方の言葉に触れる

子どもたちは、実際に自分たちが1日の中でどれくらいの量の水を使っているのかを調査を通して水の重要性を実感し、自分たちにとって生きるために欠かせない水がどこから来て、どこに流れ、どのようにして循環しているのかについて体感を伴いながら学びを深めてきました。

そして、最終プレゼンテーションでは以下の3つの観点でまとめていきました。

最終プレゼンテーションでは、大学のポスターセッションをイメージしてインタラクティブなアウトプットの場をデザインしました。チームは全て6チームあり、それぞれのチームでアウトプットの表現は異なり、水の循環を守っていくための私たちの責任について考えたことはそれぞれのチームで様々なアイデアが出てきたのが印象的でした。

アクティビティ1 最終プレゼンテーション

チーム1

水の循環について、海ごみの問題を絡めて説明をしてくれました。水の循環について学んでいく中で私たちが捨てたゴミが川から海に流れ、そのゴミを食べた魚が死んでしまうと、私たちは魚が食べれなくなることを本で学んだことを組み込んでいました。大きな絵を使ったアウトプットはインパクトがあり、言葉で説明しなくても絵から岐阜市では水がどのように循環しているのかが分かる表現ができていました。

また絵の中には、canvaで作成した水の循環と水を管理している市役所のことがイラストで表現されているのも印象的でした。また、人間だけでなく、動物たちも生きていくためには水が必要であることを表現しており、このユニットの教科の枠を超えたテーマでもある「この地球を共有する」の内容を意識しているのが伝わりました。

▼「この地球を共有すること」に書かれている内容

限られた資源を他の人々そして他の生物とどのように分け合うかということに取り 組むうえでの、権利と責任について、コミュニティーとは何か、そしてコミュニ ティー内およびコミュニティー間の関係性、機会均等の実現について、平和そして紛争解決についての探究。

 

 

チーム2

このチームは水の循環をストローをパイプに見立てて表現を行っていました。水が循環しているということはストローで繋げることができるのではないかということで、私たちが使っている水が雨水が地下に流れ込み伏流水として井戸で汲み上げ浄水器できれいにして、私たちの家に運ばれ、下水処理場できれいにされてきれいな水が循環していることを表現できていました。このチームは、日本国内の視点だけでなく、世界では当たり前に水が利用できない国があることを伝えており、水の資源を持っている私たちの責任として寄付をしたりすることができるのではないかという、他に国で起きていることを他人事ではなく、ジブンゴトとしてまとめているのが印象的でした。私たちが水やお金を寄付することで、世界の中で平和に繋がるのではないかという考えを持ち始めているのを感じました。

チーム3

このチームは、手書きの絵で水の循環を効果的に表現できていました。印象的なのは、私たちの責任として、市役所だけではなく、みんなで水を管理していく必要があることを述べている点でした。さらに、水は人間だけではなく、自然のサイクルの中で水がきれいにされていることも述べており、水の管理方法として、人工的なアプローチと自然を守っていくアプローチの両方が必要であることに気付いている印象を受けました。

チーム4

このチームは水の重要性からスタートして、岐阜市ではどのように水を管理しているのかを全体像を最初に示し、後半で細かく説明していくまとめ方をしているのが特徴的でした。

岐阜市の地名を用いながら水の循環を示した後は、下水処理場で学んだ市民の責任として、油を流してはいけないことを具体例としてあげていました。なぜ、油を流してはいけないのかというと、油を流すことで下水管がつまり、壊れた下水管を直すのに税金を多く使うことになることにユニット1での学習を繋げて考えることができていました。

最後に私たちの責任として、水を管理するには、様々な施設(紫外線処理装置や下水処理場)が必要で、これにはお金がかかるので、税金を納めることの重要性に自分たちで気付いけていました。「良き理解のある納税者を育む」ことは、フィンランドの教育でも大切にされており、小学4年生で税金の重要性を自分で気付いている点が印象的でした。

チーム5

このチームはポスターとストロー建築を組み合わせて協働的にプレゼンの準備ができていました。大きな水の循環を絵で示し、細かい水の循環についてはボックスを用いて回転させるように詳しく説明を行うことができました。

まずは海からスタートして、太陽の熱で温められて水が蒸発して、雨雲になり、雨になり、雨がふり、川に流れます。一部の水は蒸発しますが...!!!

残った水が地下水となり、汲み上げて上水きに着水します。そして、消毒された水が水道管を通って...!!!

給水管を通り、使った分に合わせて水道メーターが上がります。そして私たちが使用した水は水道管を通って、マンホールに流れ、パイプを通って...!!!

下水処理場に着水します。そして、最初に沈殿させて大きな汚れを取り、濾過して、消毒して最終的に排水所に流れ、パイプを通って海に流れることで循環が繰り返されます。説明するときに箱の周りに情報をまとめて、箱を回転させながら分かりやすく説明することができました。

グループ6

このチームは唯一ストロー建築の構造を生かして知識の構造化にチャレンジしました。印象的だったのは、市が管理していることを中心にまとめて、左側に水の循環、右側に私や私たちの責任について視覚的にわかりやすくまとめていました。さらに、私たちの責任のところでは、森林伐採が、森の濾過機能を壊してしまうことを理由を含めて説明しているのが印象的でした。

またこのチームは原稿を準備して何度も読み上げる練習を行い情報をまとめてわかりやすく相手に情報を伝えることができました。
アクティビティ2 アクションに向けたディスカッション1

35分のディスカッションの中で、ファシリテーターと書記を決めて、早速ディスカッションがスタートしました。まずはアイデアのブレストを兼ねて、12人で12個のアイデアを出す条件だけを定めて、その中で1つの実行するプロジェクトを決めてもらいました。▼ 出てきたアイデア

・水を節約する
・水を大切に使う
・石鹸を無駄に使わない
・声かけ
・シンクに油を流さない
・水で遊ばない
・石鹸で手を洗う時は、水を止める
・トイレを流す時は、なるべく小を使う
・水を出し過ぎない
・雨が降ったら、雨水を溜める
・川の周りのゴミを取る
・水は、どこから来て、どこに行くのかを知らせる

子どもたちの中でアイデアのブレストを行った後に分類するアイデアが出てきて、分類をしてみて一番重なりのある水を節約するアイデアで着地しました。今回の30分のディスカッションでは、プロジェクトにするところまでいかなかったのですが、12人で様々なアイデアを出すことができました。次回のディスカッションでは、水の循環を踏まえた上で、再度プロジェクトにするためのディスカッションを行っていきます!学んだことをアクションに繋げる一歩を踏め出せたらと思います!

 

アクティビティ3 アクションに向けたディスカッション2

今回のディスカッションでは、前回とは異なるファシリテーターを立てて「教室から外に」をテーマに、アクションを考えるディスカッションを行いました。子どもたちにアクションを考えてもらうと、どうしても学校内や家庭の中でできる範囲でのアクションが出てくる傾向があり、学校や家を超えて何かアクションができるマインドを育むきっかけにできたら思いました。

このスライドは、きれいな水の循環を守っていくアクションを考える観点のヒントとして最終プレゼンテーションを再度示しました。

前回は同じテーマで、「節水をする」というアクションがクラスの結果として出てきましたが、子どもたちに「節水がなぜきれいな水の循環につながるのか?」と問いかけるとなかなか理由が出てこない現状がありました。子どもたちの中で水を大切に使うアクションとして「節水」がよく出てくるのですが、「岐阜市の水の状態」と「水がどこからきて使った水がどこに流れていくのか」を学んできた子どもたちのアクションとしては、もう一歩という印象でした。

今回のディスカッションでは、「学校と家庭の外でのアクション」という制限をつけることで広い視点でアクションを考えるきっかけになればと思いました。

そこで子どもたちから出てきたアクションのアイデアがこちらです。

・川のゴミ拾いをする(長良川
>魚がゴミを食べて死んでしまうから。
>川は海に繋がっているからゴミが海まで行ってしまう。
・ポスターとアンケートを作ってポストに入れる
・声かけ
>例えば『水を大切にする』
>いろんな人に水を大切にすることが伝わるから。
・ゴミが入った袋の周りにネットをかける。
・川にネットを張ってゴミを回収する
>途中で鮎が産卵するために海から川の上流に上るのでネットがあるとできなくなるという人間のアクションが生態系に影響を与える意見も出てきました。

その中で、最終的に子どもたちの中で決まったのは「長良川のゴミ拾い」でした。プロジェクトリーダーにも5名ほど立候補が出て、最終的に2名が決まりこれから「長良川クリーンプロジェクト」が始動します!学校で学んだことを生かして、自分たちにできるアクションを考えて、チョイスして、振り返りをしてまたアクションを起こしていくサイクルを回していけたらと思いました。

アクティビティ3 アクション「長良川クリーンアップPJ」

そして、いよいよ11月28日に長良川クリーンアッププロジェクトを実施しました。子どもたちの中で、ユニットが終了して2ヶ月程立っていたのですが、何のために長良川クリーンアップPJが生まれたのかを振り返りながら行うことができました。

今回、子どもたちに気づいて欲しかったことは、川には色々なところから様々な種類のゴミが流れ着いており、さらにゴミは川から海に流れ、一度流れたゴミは分解されずに流れ続けることを感じてもらえたらと思っていました。そして、ゴミが流れることで、自分たちの暮らしで重要な水の循環や食物連鎖にも影響を与えることを体感するきっかけにできたらと思っていたところでした。

子どもたちが気づく仕掛けとして、「ゴミの種類」や「捨てられたゴミの年代」にフォーカスしたBINGOカードを使って行いました。

最初子どもたちがBINGOカードを見たときは、こんなゴミは落ちているはずがないと話していましたが、実際によく観察しながら拾ってみると、様々な大きさのゴミや様々な種類のゴミが落ちていることに気づいていました。

さらには、「ゴミを拾うことは頭を使う。だって、ゴミがたくさん落ちている場所を考えながら歩いていたら、車が通る道路沿いの近くにゴミが集中していることから、運転している人がゴミを車から捨てたと思う。」とゴミを捨てている人の行動心理についても分析しながらゴミを拾っている子もいました。

また、ゴミ拾いをしていると不思議なゴミもいくつか出てきました。

▼ 子どもたちが生まれる前(2012年が賞味期限のペットボトル )

つまり、10年間以上も形を変えずに流れ続けていたことが分かります。

▼ 1m以上の大きさのゴミ

誰かが運んできて捨てたのか、それとも大雨のときに流れてきたものなのか?

▼ 2m以上のパイプ

▼ 不思議な蓋

なんとネットで調べると2750円で売られている蓋でした。まだまだ使えそうということで、拾ったゴミを価値づけしていました。

▼ 水筒

多分川で遊んでいてそのまま流れちゃったのかな?

ゴミを見ていると、色々なことが想像できて、自分たちが自分の意思でゴミを捨てていること、自分の気づかないところでゴミを置いたままにしたりしてしまっていること、ゴミ拾いをすることで色々なことを想像できたのではないかなと思います。

最終的には、45Lのゴミ袋4袋のゴミを長良川の尚子ロードで集めることができました。

さらに、面白いのは子どもたちが「ゴミの博物館をやってみたい!」というアイデアが出てきたことです。そして、11月にクラスメイトがゴミ拾いをして、2ヶ月でこんなに溜まっているゴミを見て、1ヶ月に1回ゴミ拾いをしようという声も出てきました。

ユニット6は芸術を通して社会の中にある課題を伝えるユニットになるので、ゴミをアート作品にして、G4のユニットで学んできたことを掛け合わせて、アートを通して社会課題について考えるプロジェクトが始まりそうな予感がしました。

子どもたちの探究がアクションに変わり、アクションをするからこそ伝えたい気持ちが高まっていくサイクルを感じました。

Unit2 世界の中の不平等や格差を数字で紐解く(G7-9)

Unit2 社会の不平等や格差は、数量の等価形式を使用することでより明確になる

ユニット2では、公平性と発展というグローバルな文脈の中で、社会の中にある不平等や格差を数字で紐解いていきます。私たちは、何となく生活の中で不公平という言葉を使っていると思います。私たちが使っている不公平という言葉の根拠にあるものは何か?社会の中に複雑に絡み合っている問題を数字を使って事実を示すことができることをこのユニットを通じて子どもたちに体感してもらえたらと思っています。

・概要
Statement of inquiry
社会の不平等や格差は、数量の等価形式を使用することでより明確になります。Global context
公平性と発展このユニットでは、パーセンテージ、分数、および小数を使用して、「公平性と発展」のグローバルな文脈を探究していきます。
世界中の難民の移動、労働条件、栄養、および安全な飲料水の利用可能性を調べるために、パーセンテージ、分数、および小数の関係を適用します。
また、外国で難民として生活する経験について考えたり、ディスカッションしたりする機会を通して社会の中にある不平等や格差について自分たちがどのように向き合っていくのかを考えていきます。
アクティビティ1 「イントロダクション」

最初のイントロダクションでは、ユニットで学習する前の思考や理解の状況を知るために3-2-1bridgeでこの探究のメッセージの中の「社会の中の不平等や格差」と「数量の等価形式」という言葉を見て思い浮かんだワード3つと質問2つと1つの比喩を出してもらいました。

▼ 社会の中の不平等や格差

「社会の中の不平等や格差」に関して印象的だったのは「不平等でかつ公平であるべき」「日本で生まれたことは、世界から不平等や格差の観点でみるとどうなのか?」「そもそも社会の格差とは何か?」「なぜ平等を目指すのか?」という言葉が出てきました。

▼ 数量の等価形式

数量の等価形式という言葉に関しては、これまでに習った単位の変換を思い出していて、疑問としてはなぜ国によって単位が異なるのかを疑問に出てきていました。

アクティビティ2「世界の人口とGDP分析」

「世界の資源が平等に分配されているのかを私たちはどのように知ることができるのか?」という問いに対して、世界のGDPを指標に考えていきました。

▼ データ

GDPのデータ>リンク
・人口のデータ>リンク

▼ リサーチ内容

① 世界GDPの合計と各地域のGDP
② 世界の人口の合計と各地域の人口
③ 各地域の世界のGDPに対する割合(%)
④ 各地域の世界の人口に対する割合(%)

地域ごとのGDPと人口の数を表にまとめたところで、「どのようにデータを編集すると、世界の中にある格差があることを知れるのか?」という問いに対して、「パーセンテージで比較する」アイデアが出てきたので、全体に対してそれぞれの地域のGDPと人口がどのような割合になっているのか計算を行いました。

次のアクティビティでは、世界でどのようにして格差が生まれ、格差が生まれるにはどのような要因があるのかを体感するためのアクティビティを行います。

アクティビティ3「貿易ゲーム」

この貿易ゲームの意図として、世界に格差が生まれているのを数値だけで分析するのではなく、現状で示されている数値の背景には様々な原因が含まれていることを体感してほしいと考えています。具体的には、先進国と途上国の間には、技術や資源、人口、それぞれの国の間にある関係性など、あらゆる要素が複雑に絡み合った結果として今、世界ではGDPの違いが生まれています。

そこで貿易ゲームでは5つの地域に分かれて、最初に技術と資源の数の条件を変えて行います。発展途上国は、技術がなく資源がある状態、先進国は技術はあるが資源が少ない状態でスタートしました。つまり、GDPを上げていくには、他の地域と交渉と貿易をしながら関係性を高めながらプレイを進めていく必要があります。

この社会では資本主義社会という設定で「資源を多く獲得した地域を勝利条件」として

ゲームがスタートしました。

▼ 貿易ゲーム中のイベント

貿易ゲームの中では、需要と供給に応じて価格が変動したり、発展途上国に国連から資源の援助があったり、国の維持をしていくために食料や水の消費を行う等のイベントが毎ターン行われます。

貿易ゲームがスタートすると、各地域間で様々な地域間で動きがありました。

▼ 第1ラウンド後
分度器がヨーロッパからアジアに渡される取引

▼ 第2ラウンド後
アメリカがバランスの取れた世界にするためにアジア以外の地域で技術の共有を行われる。

最終的な貿易ゲームの結果はこちらになります。

▼ 貿易ゲームの結果

次回以降は貿易ゲームの結果を元に分析を行っていきます。

アクティビティ4「貿易ゲームの分析1」

▼ 貿易ゲームの結果

▼ リサーチ内容

① このデータから分かること(SEE)   
② このデータから考えられること(THINK)   
③ 疑問(WONDER)
④ ②で選んだ解釈から1つ選んで②の解釈を誰かに伝えるために必要な事実をデータで示す。

② 生徒から出てきたデータから解釈できること

・人数が多くてGDPが少ないと食べ物が足りなくなる
・元からの格差は大きな変化がないと変わらない。
・順位が変わっていない
・技術力が高まるとGDPを上げることができる。
・アジアに抜かされそう
・元々資源や技術を持っていることが有利である。
・元々資源がある国は右肩上がり、元々資源がない国は支出が多くてお金が減っていく。

④ 自分の解釈と解釈を示す事実となるデータを示す

生徒Aの解釈

アフリカは人数が多くてGDPが少ないので食べ物がたりなくなる。

生徒Aの解釈を説明する事実

▼ 生徒Bの解釈

元からの格差は大きな変化がないと変わらない

▼ 生徒Bの解釈を説明する事実

▼ 生徒Cの解釈

イベントの無い第1ラウンドより第2第3ラウンドの方が増加率が低い!

*ただし、物の交換などにより新たな技術を手に入れた場合は上のルールに従わない!

▼ 生徒Cの解釈を説明する事実

▼ 生徒Dの解釈

使える技術を持っていることが鍵になってくる!

▼ 生徒Dの解釈を説明する事実

▼ 生徒Eの解釈

技術や信頼のない国は-3のように$が増えていないけど、資源や同盟を組んでいる国は$が2倍以上増えている。

▼ 生徒Eの解釈を説明する事実

それぞれが同じデータを見て、読みとったことを解釈し、解釈したことを自分以外の人に説明するために必要な事実を数値(パーセント等)や使ってまとめることができました。生徒Eの信頼度もGDPに影響するのではないかという仮説も実際に信頼度のアンケートをとることで、数値で見ることで自分の推測と異なるデータが出てきているのに気づいていました。信頼度とGDPの関係性など、2つ以上のデータを比較することで見えてくる解釈を数値をもとにした表やグラフで表すスキルを高めることにもフォーカスしていきます。

アクティビティ5「貿易ゲームの分析2」

▼ リサーチ内容
① 各国の信頼値の合計は?
② 全体の信頼値の合計は?
③ 全体の信頼値における自分の国の信頼値の割合(パーセント)
④ 信頼値とGDPの合計金額に影響はあるのか?
⑤ もし影響があるとするなら、どのようにしたら影響があることがわかるのか?

① 各国の信頼値の合計

③ 全体の信頼値における自分の国の信頼値の割合(パーセント)

数値で示したものをよりわかりやすく伝えるためにどのグラフを用いるとわかりやすいのかを考えながら効果的なグラフを選んでいました。

表で表すことで、信頼値がGDPに影響を与えるという仮説があったのですが、アジアのデータを見ると信頼値が高くないのに、GDPが高い結果が出てきました。

アクティビティ5「貿易ゲームの分析3」

次にそれぞれの地域のラウンドごとの信頼値の変化をアンケートをとり集計していきました。

▼ リサーチ内容

① ラウンドごとの各地域の信頼値の合計は?
② 各地域のラウンドごとの信頼値の合計の変化
③ 信頼値とGDPの合計金額に影響はあるのか?
④ もし影響があるとするなら、どのようにしたら影響があることがわかるのか?
⑥ 他の国との間で信頼値を高めるのはどうしたらいいのか?

① ラウンドごとの各地域の信頼値の合計

各地域のラウンドごとの合計をExcelで関数を使って計算を行いました。

② 各地域のラウンドごとの信頼値の合計の変化

③④ 信頼値とGDP

実際にラウンドごとの信頼値が出たことで、GDPのラウンドごとの数値とグラフで比較を行っていきました。G7-9では信頼値とGDPに大きな相関関係は見られなかったのですが、G6のデータではいくつかの相関関係があることが見られました。

「なぜ、同じ条件でゲームを始めたのに、異なる結果が生まれたのか?」という問いに対しては、「技術や資源だけでなく、その国を担当している人も影響しているのではないか」という新たな仮説も生まれ、これは実際の国際社会で起きていることともつながっているのではないかという考えも出てきました。

アクティビティ6 「貿易ゲーム分析4」

次に一人当たりのGDPの分析を行います。一人当たりのGDPを比較することで、世界の中でどれだけの格差があるのかを知ることに繋がりました。

▼ リサーチ内容

① 実際の世界の一人当たりのGDP
② 実際の世界の一人当たりのGDPの割合を円グラフにする
③ 実際の貿易ゲームの一人当たりのGDPの変化を折れ線グラフにする
④ 貿易ゲームの結果の一人当たりのGDP(最初のラウンドと最終ラウンド)
⑤ 貿易ゲームの結果の一人当たりのGDPを円グラフにする

折れ線グラフにすると、世界の中で一人当たりのGDPの格差が広がっているのが分かります。

さらに、円グラフでまとめると、実際の世界で起きている一人当たりのGDPと貿易ゲームでの結果を比較すると同じような結果になっているのが分かります。GDPの合計を見るだけでは、この不平等さに違和感を持っていなかったのですが、一人当たりのGDPを出すことで、格差が明らかになり、数値で示すことで不平等さに気づき始めていました。

アクティビティ7 「形成的評価:不平等を是正するための新たな仕組みを考える」

いよいよ、貿易ゲームで学んできたことを整理していきます。現段階で、貿易ゲームの結果から読み取れることをスプレッドシートのSUM,AVERAGEや簡単な計算を用いて求めて円グラフや折れ線グラフで表現するスキルを学んできました。

ここからは、今回のユニットの考えるポイントでもある、この世界に格差があることを数値を用いることでより明確になることを理解した次のステップとして「今ある不平等や格差を是正するための貿易ゲームのルールを改変する提案書」の作成を形成的評価のパフォーマンス課題として出しました。このルールや仕組みを変える提案書を作成するスキルは実社会でもよく使用するスキルになります。相手に説得力を持って情報を伝えるためには、現状と問題点、問題点を解決するための仕組み、そして最後に期待される効果を数値を用いて伝えるスキルが必要になるので、今回の課題では実社会とも繋がる課題を設定しました。

実際に提案書を作成する中で様々なディスカッションも同時に行われています。一番大きなディスカッションとしては、そもそも今の社会の中にある資本主義社会を廃止して、資本や財産をみんなで共有する平等な社会を一番資源を持ってる北アメリカが提案を行いました。これにより、土地や財産などはすべてをみんなで共有し、生産されたものもみんなのものとなり、均等に分配するという考えの導入についてディスカッションが行われました。これに対して、アジアのみが、共産主義の社会にすることで、働かない人も働く人も平等に分配されることに懸念を示し、さらに共産主義の社会ではただ生産するだけになり面白くないのではないかという共産主義のデメリットも想像しながら伝えていました。

この仕組みはどれだけ働いても同じ給料が支給されるベイシックインカムの制度と重なるところもあり、人はどれだけ頑張っても同じ給料が支給される条件下で、資本主義社会と同様のモチベーションを保つことができるのかという命題が生まれました。

しかし、次の日に提案書の作成の中で、北アメリカが全世界の資源を人口に合わせて平等に資本を分配した時の社会を計算で求めることで、全体の意見を変わり、共産主義の考え方で新貿易ゲームが始まることになりました。

アクティビティ8「総括評価」

ここまで、子どもたちは社会の中に生まれる格差の原因について貿易ゲームを通じて体感し、格差というものを割合(パーセンテージ)を用いて表し、グラフや表を用いて説明するスキルを育んでいきました。

総括課題では、これまでに身につけてきた数学的な見方・考え方を働かせて、一人一人が関心のある社会の中の格差や不平等について探究し、ポスターセッションに取り組んでもらいました。

まずは、クラス全体で社会の中にはどのような格差や不平等があるのかをブレストを行いました。

その中で、自分が気になるテーマを選び、気になった背景、テーマから浮かび上がってきた問い、問いに対する仮説を探究シートに言語化するところからスタートしました。そして、探究シートに言語化できた人からリサーチに入りました。

リサーチの評価基準としては、形成的評価と同じ項目で行い、評価基準D.実生活への数学の応用で示しました。

生徒はLev.1の自分が選んだテーマである社会の中にある不平等や格差をパーセンテージを用いて明らかに示すところからスタートしました。この生徒は高齢者の貧困率を他の世代と比較したときに明らかにしていました。

日本における世代毎の貧困率の割合

そして、Lev.1のリサーチが終えた人から社会の中の不平等や格差を生み出している原因について自分が立てた仮説を検証するために、2つのデータの相関関係をグラフに表し、仮説検証を行いました。Lev.2では統計学の考え方を取り入れて数学的に検証をしていきました。

印象的だったリサーチは、なぜ高齢者の貧困率が高くなるのかを国内外の平均寿命との関係性や国の税率や社会保障費の国家予算に占める割合との相関関係を考察しているリサーチでした。

国内の平均寿命と貧困率の推移の相関関係

グラフでは縦軸が平均寿命、横軸がその年の高齢者の貧困率を表しており、平均寿命が延びるにつれて貧困率が高まっていると考察していました。

世界の税率と高齢者の貧困率の相関関係

グラフでは、縦軸が世界の国々の税率、横軸が貧困率を表しており、傾向として税率が高い国が貧困率が低くなっていると考察をしていました。

世界の国家予算に占める社会保障費の割合と貧困率の相関関係

さらに、国の予算の使われ方として、社会保障が国家予算に占める割合が高いほど、貧困率が低くなっている傾向がありそうと考察をしていました。

このように、自分が立てた問いに対して、自分なりに立てた仮説が正しいかどうかをリサーチして出てきた数値をグラフにして相関関係を考察することで、明らかになることを感じているようでした。

また、総括課題では、形成的評価で使った数学的なスキルを活用して個別のプロジェクトで行うので、教員の役割としては、ガイドするような役割で生徒と1on1を繰り返す中で、プロジェクトのサポートを行いました。

プロジェクトが進んできたところで、大学の論文のような形式でレポートにまとめる課題を経て、生徒同士で最終ポスターセッションに向けてフィードバックし合う活動を行いました。

生徒同士の相互評価

生徒同士で評価基準に従って相互評価をすることで、今回の課題で求められていることを客観的にフィードバックをもらい改善するサイクルが生まれているように思えました。

アクティビティ9「ポスターセッション」

高齢者の貧困率が高まるのはなぜか?

途上国と先進国の水の手に入りやすさの違い

児童労働がある地域とそうでない地域の差

先進国と途上国ではどんな教育の違いや格差があるのか?

先進国や途上国にはどんな医療格差があるのか?

ユニット2では、数量の等価形式であるパーセンテージを活用して社会の中にある格差や不平等を明らかにし、統計学のスキルを使って2つ以上のデータの相関関係を考察する中で、不平等や格差の原因を探っていきました。子どもたちの中で、社会の中に起きている課題を数学的な見方考え方を働かせることで、明らかに出来ることを少しでも体感できるユニットの学びが生まれていたらと思います。

子どもたちの探究は続いていきます。