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Unit4 Week5 歴史は解釈である

Unit4歴史上の出来事や人物が今の暮らしに影響している

・形成的評価課題

いよいよ、今回のユニットでフォーカスするリサーチスキルを磨く学習活動に入っていきます。

▼ リサーチスキル(情報リテラシースキル)

考案および計画、データの収集および記録、統合および解釈、評価およびコミュニケーション

「歴史は解釈である」ことを理解することは、子どもたちが社会を生きていく上で重要だと考えています。実際に世の中にあふれている情報は、事実と解釈が混じった情報でが多く、解釈を事実と思い込んでしまうことは起こりうると思います。また、何か問題が起きたときに、事実ではなく自分の解釈で伝えてしまうことで、問題が複雑になることも起こり得ます。もちろん今回のユニットで事実と解釈を分けて考えるスキルを身につけることは難しいかもしれないのですが、世の中の情報には事実と解釈が混ざっていることを理解できるような学習活動を行えたらと思います。

こちらが今回の形成的評価で評価するATLスキルのルーブリック評価になります。

▼ ATLのルーブリック

ここまで子どもたちは、戦国時代の小道具(火縄銃、関市の刀、楽市楽座)を制作する中で、それぞれの特徴についての理解を深めてきました。

ここからは、今回のユニットで子どもたちに掴んで欲しい概念的理解である「歴史上の出来事や人物が今の暮らしに影響している」にぐっと理解を押し上げられるような仕掛けが必要になってきます。そこで、今回のユニットでフォーカスしていく重要概念である関連と視点、そしてトピックである「今の暮らしへの影響」にフォーカスしたリサーチを行なっていきます。

▼ 今回のユニットの知識とプロセスの構造(叩き台)

また、形成的評価の課題は、総括評価の課題を個人プロジェクトで行うスキルを育めるように、グループ課題として実施しました。以下が具体的な形成的評価の課題になります。

▼ 各チームの評価課題

信長は楽市楽座を行ったのか?

信長はなぜ、鉄砲を取り入れることができたのか?

信長はなぜ、関市の刀を支援し、戦いに取り入れたのか?

実際にリサーチを進めていくと、ネット上にある情報も何が事実で何が解釈なのかを分からないことに気づく子も出てきました。自分たちはネットの情報を全て事実と捉えてしまっている可能性もあるので、ネットの情報を見たときに何が事実で何が解釈なのかを考える視点を持つ重要性に少しずつ気づいてくれるといいなと思っています。

ステップ① マインドマップで整理する

一人一人が歴史的な事実と解釈を書いたところで、マインドマップを使ってグループで情報を統合していきました。

刀チーム

楽市楽座チーム

鉄砲チーム

ステップ② マインドマップで整理したものを統合する

次に、3つの概念の視点から、問いの答えを言語化していきます。ここでも歴史的な事実と解釈を分けて、様々な視点で問いの答えを考えていきました。

刀チーム

楽市楽座チーム

ステップ③ 地理的な視点と現代への影響を考える

刀チーム

刀チームには「なぜ関市で質の良い刀ができたのか」について地理的な視点から考えてみました。

▼子どもたちの考察した事実と解釈

・関市では、良質な水が長良川から取り入れることができた歴史的事実から、関市の近くを流れている長良川と関市を結び付けていました。

下呂では温泉が出るので、温泉は良質な水なので、その水が流れてくる関市の水は質が良いのではないかと解釈していました。

更に、関市の刀鍛冶が現代に与える影響については、今も刃物の産業が盛んであり、包丁や爪切りなど、今の私たちの暮らしに結びついている刃物を使った産業が今でも行われていることに気づいていました。

楽市楽座チーム

楽市楽座チームには「なぜこの場所で楽市楽座をしたのか」について地理的な視点から考えてみました。

▼子どもたちの考察した事実と解釈

・この辺りは、人がたくさん住んでいたので、人が集まる場所で楽市楽座を行ったのではないかと解釈していました。

・近くに長良川が流れているので、水を簡単に取り入れることができる環境だから行ったのではないかと解釈していました。

更に、楽市楽座が現代に与える影響については、戦国時代で使われていた産業の地名が今でも残っていたり、楽市楽座で経済が発展したことで、今でもこの周辺は経済が発展していると解釈していました。

ここからいよいよ、協働のプロジェクトで学んだスキルを活用して、個別のプロジェクトに入っていきます。最終的には、学んだことを地図にマッピングしていきます。

・課題のシェア&練り上げる時間

グループごとにリサーチして考えてきたことをシェアし、練り上げる時間を行いました。3チームあるので、3つのグループにバランスよく分かれて、自分のグループがリサーチしたことを他のグループにシェアしていきました。

そして、各グループでシェアを行った後は、楽市楽座の政策と関市の刀の支援と戦への導入と鉄砲を戦に取り入れた3つの歴史上の出来事の繋がり(関連)を歴史的事実を基に解釈していきました。

「信長には、どんな意図があったのか?」

最初のリサーチでは、リサーチした出来事をシェアするだけだったのですが、今回の練り上げる時間では、1つの情報だけでなく複数の情報をつなげて、事実を基に自分の解釈をつくることができるようになっていました。

3つのグループにシェアしてもらったのですが、同じ事実を基に考察しているのですが、グループによって解釈が異なるのが興味深かったです。

▼ 3つの政策にはどんなつながりがあるのか?

① 信長は国を治めていてお金がある。
② 国を治めているので、楽市楽座の政策を出すことができる。
楽市楽座の政策をすることで、他の国から人がくることで人口が増える。
④ 物を売り買いする人口が増えることで、町が発展し、人口が増え続け、信長は更にお金が増える。それだけでなく、人が移住してくることで、兵士を増やすことができる。
⑤ 城下町で楽市楽座を行うことで、信長は資金を獲得することができ、武器である鉄砲や刀をすぐに買うことができる。
⑥ 結果的に信長は土地を広げることができる。

12人で学んだことをシェアすることで、リサーチした事実を基に歴史を自分なりに解釈しながら深める一歩を踏み出せました。

さらに「信長は、誰のためにこのような政策を行ったのか?」という議論的な問いを投げかけると、町の人のためという人、自分のためという人、どちらもという人色々な意見が出ました。そして、自分が表明した立場の理由も歴史的事実を基に自分の解釈で説明することができる人が出てきました。

更に、それぞれの出来事について地理的な影響と現代への影響についても地図にマッピングすることで、歴史と地理をつなぎ合わせて、3つの関連性を更に可視化していきました。

▼地理的な影響をマッピング

▼ 現代への影響をマッピング

子どもたちの歴史のユニットもいよいよ最終章です!

次回から、このグループでの協働的な学びを通して学んできた事実と解釈を分けて様々な情報を統合するスキルを活用してパーソナルプロジェクトに入っていきます。

子どもたちの探究もいよいよ最終章です!