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Unit1 WEEK5 子ども市議会議員プロジェクト始動!

Unit1 政治は市民生活に影響する

ユニットの概要リンク

総括的評価

いよいよ、政治のユニットで学習するトピックにつながる事実の学習を終え、いよいよ総括的評価に入っていきます。総括的評価では以下のような課題を設定しました。

総括的評価課題

また、こちらが総括課題のルーブリック評価(パフォーマンス評価)になります。国際バカロレアの学校では、いわゆる教科書の知識をどれだけ正確に覚えているのかを測るためのテストは行わず、このユニットを通じて身につけて欲しい教科の知識や見方・考え方、概念を実際に用いる活動(=今回は子ども市議会議立候補者)をプロジェクトベースで実行し、成し遂げるプロセスを観察して、このユニットで身につけて欲しい知識と概念をどれだけ活用できているのかを観察し、評価を行います。

こちらが、子どもたちに配布したプロジェクトを進めるための資料になります。

リサーチ計画

まずは、チームメンバー編成からこのプロジェクトはスタートしました。チームメンバーの決定方法も子どもたちに委ねました。

▼大きく2つの意見が出てきました。
「プロジェクトまで2週間で時間も限られているのでコミュニケーションが取れるように仲のいいメンバーで構成したい。」
「いつも同じメンバーでプロジェクトを行なっているので、いつもとは違うメンバーでチーム編成をしたい。」

そして、折衷案として、仲のいいメンバーでプロジェクトをしたい3人は同じチームになり、それ以外のメンバーはくじでランダムに決まりました。何かものごとを決定するときに、民主主義の原則である多数決で決めるのではなく、全員が納得がいくような話し合いができていました。
チームが決定し、選挙までの2週間を、どのような計画で行っていくのかをチームで計画を立てました。ここもチームによって進め方が異なりました。計画を立てて計画通りに進めていこうとするチーム。計画を立てずにプロジェクトに向けていち早く動き始めるチーム。私自身計画を立てて実行する管理スキルを身につけることを意図したのですが、世の中には計画を立てて遂行していくことがあっている人や、計画を立てずに目的に向かって柔軟に対応しながら進めていく人もいるので、プロジェクトの進め方も子どもたちに委ねることにしました。

次に、子ども市議会議員になるに向けて、公約を考える必要が出てきます。子どもたちは、市議会議員が市民の生活をより良くするための仕事をしていることを学んだので、岐阜市で生活していて、困っていることや、岐阜市がこうなったらいいなということを考えてもらいました。

しかし、なかなか考えが思い浮かばない子どもたち...。そして、自然な流れで、実際に岐阜市に住んでいる大人に聞いてみようということで、インタビューがスタートしました。

インタビューシート

最初は、岐阜市に住んでいる人ということで、学校の先生たちにインタビューを始める子どもたち。そして、子ども市議会議員ということで、違う学年の友達にインタビューする子どもも出てきました。インタビューを通して自分では気づかなかった岐阜市での困りごとを知ったのではないでしょうか。

また、学校でのインタビューだけではなく、学校の周りに住んでいる地域の方へのインタビューも行いました。

▼ 子どもたちがインタビューの中で見えてきた岐阜市の困りごと

・車がない高齢者は、バスの本数が少ないので不便。
・ポイ捨てが多い。
・歩道の幅が狭い
・自転車の走る道路がない。
・公園が少ない。
・公園はあるけど、あまり整備されていないので、人が少ない
・街路樹が少ない。
・電灯が少ない。
・若い人とお年寄りが交流する機会が少ない等

インタビューの集計と整理

子どもたちはチームごとにアンケートの集計と分析を行い、その中で、自分たちが解決したい、解決すべき岐阜市の課題を選びました。アンケートの集計をする中で、チームの中で同じ人にインタビューをしていたことに気づく子どもたち。「ちゃんとコミュニケーションを取ればよかった...。」でも、ここも失敗から学べるデザインを大切にしました。最初から全部丁寧に教えてプロジェクトを進めるのではなく、自分たちでやってみて「あっ!」と気づく瞬間をデザインすることも大切にしています。

また、インタビュー結果を集計することは算数科「データの活用」の学習にも繋がっていきます。 

(1)データの収集とその分析に関わる数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。
イ  目的に応じてデータを集めて分類整理し、データの特徴や傾向に着目し、問題を解決するために適切なグラフを選択して判断し、その結論について多面的に捉え考察すること。

子どもたちは、市民の困りごとを解決することを目的とし、実際にインタビュー調査を行い、分類整理を行いました。そして、データの特徴や傾向に着目するために、何人の人が同じ困りごとを感じているのかを数値化することで傾向分析を行いました。

リサーチ課題

また、チームでのプロジェクトですが、今回のユニットを通して育みたいATL(Approach to learning)は、リサーチスキルに焦点化しているので、一人一人がリサーチスキルを高められるように、一人一つ課題を決めて、3人グループで3つの公約で選挙活動ができるように設定しました。また、国際バカロレアのPYPの探究活動において探究を深める鍵になるのがキーコンセプト(重要概念)です。キーコンセプトについては、また次のブログで補足したいと思います。
▼ 今回のユニットのキーコンセプトは以下の3つです。

① 特徴(それはどのようなものか?)
岐阜市の課題とはどのようなものか?
② 関連(それは他のものとどのようにつながっているのか?)
岐阜市の課題はなぜ、起きているのか?
>この課題が続くと岐阜市の未来にどのように影響していくのか?
③ 責任(私たちにはどのような責任があるのか?)
>私たち岐阜市民の役割(責任)とは何か?

子どもたちの中には、実際に岐阜市のバス会社で勤めていた人にリサーチしている人もいました。「岐阜市のバスが減っているから増やせばいい!」と結論づけるのではなく、そもそもバスがなぜ減ってしまったのかをシステム思考のような感じでリサーチをしていました。

▼バスの本数が減った背景

岐阜市でバスを利用する人が減ってきている。
② つまり、バスを増やしても儲からないのでバスの本数を減らす。
③ ますます、人がバスに乗らなくなり、車社会になり、車に乗れない高齢者は困る。

リサーチ課題2

リサーチ課題2では、岐阜市が今起きている課題とどのように向き合っているのかをリサーチした上で、改めて市議会に提案すること、市民にできることをを考えていきます。

そして、セルフホームワークで岐阜市の公園の現状について探究していた子もいました。「公園が少ない」という声が上がっているのが、本当に数が少ないのかを確かめるために、岐阜市の校区ごとの公園数のリサーチ、次に自分の校区の公園を実際に訪れて、公園の様子(遊具と遊びに来る人の関係性等)を観察、最後に岐阜市の公園をよくするためのアイデアとして、雨でも遊べる屋根付きの公園というアイデアを生み出していました。

セルフホームワークリサーチ(一部抜粋)

いよいよ岐阜市民の困りごとと困りごとを解決するためのアイデアが生まれたところで、具体的に選挙運動で必要なポスターや動画、資料の作成に入っていきます!

WEEK6はこちらのリンクです!