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Unit3 WEEK6 学んだことをアクションへ

Unit3 水の利用と管理は、地域の開発と持続可能性に影響を与える

いよいよ学んだことをアクションに繋げる準備段階である総括的課題をスタートしました。今回のユニットでは、水の利用と管理について学んだことをアクションに繋げるために「私たちが住んでいる岐阜市では、きれいな水がどのように循環しているのか」について整理していきます。

▼ これまでのユニットの歩み

① 水の重要性の体感するためのアクティビティ
・私たちは1日にどれだけ多くの水を学校で利用しているのかを調査

② 水の利用可能度と地理的な影響を体感するアクティビティ
・自然(山)のろか機能を学ぶためのろか実験
・水の循環を学ぶための海水を淡水化するろか実験
・私たちが使っている水がどこから来るのかを知るための水源地の見学
・私たちが使っている水の水源の元となる長良川の水質環境調査
・私たちが使用した汚水はどこにいくのかを知るための下水処理場の見学

③ 水を持続的に使用するためのコミュニティの責任を知るためのアクティビティ

・水の戦争に関するドキュメンタリーを鑑賞
・世界の水問題と私たちに与える影響を考えるディスカッション
・水を管理している市役所の方の言葉に触れる

子どもたちは、実際に自分たちが1日の中でどれくらいの量の水を使っているのかを調査を通して水の重要性を実感し、自分たちにとって生きるために欠かせない水がどこから来て、どこに流れ、どのようにして循環しているのかについて体感を伴いながら学びを深めてきました。

そして、最終プレゼンテーションでは以下の3つの観点でまとめていきました。

最終プレゼンテーションでは、大学のポスターセッションをイメージしてインタラクティブなアウトプットの場をデザインしました。チームは全て6チームあり、それぞれのチームでアウトプットの表現は異なり、水の循環を守っていくための私たちの責任について考えたことはそれぞれのチームで様々なアイデアが出てきたのが印象的でした。

アクティビティ1 最終プレゼンテーション

チーム1

水の循環について、海ごみの問題を絡めて説明をしてくれました。水の循環について学んでいく中で私たちが捨てたゴミが川から海に流れ、そのゴミを食べた魚が死んでしまうと、私たちは魚が食べれなくなることを本で学んだことを組み込んでいました。大きな絵を使ったアウトプットはインパクトがあり、言葉で説明しなくても絵から岐阜市では水がどのように循環しているのかが分かる表現ができていました。

また絵の中には、canvaで作成した水の循環と水を管理している市役所のことがイラストで表現されているのも印象的でした。また、人間だけでなく、動物たちも生きていくためには水が必要であることを表現しており、このユニットの教科の枠を超えたテーマでもある「この地球を共有する」の内容を意識しているのが伝わりました。

▼「この地球を共有すること」に書かれている内容

限られた資源を他の人々そして他の生物とどのように分け合うかということに取り 組むうえでの、権利と責任について、コミュニティーとは何か、そしてコミュニ ティー内およびコミュニティー間の関係性、機会均等の実現について、平和そして紛争解決についての探究。

 

 

チーム2

このチームは水の循環をストローをパイプに見立てて表現を行っていました。水が循環しているということはストローで繋げることができるのではないかということで、私たちが使っている水が雨水が地下に流れ込み伏流水として井戸で汲み上げ浄水器できれいにして、私たちの家に運ばれ、下水処理場できれいにされてきれいな水が循環していることを表現できていました。このチームは、日本国内の視点だけでなく、世界では当たり前に水が利用できない国があることを伝えており、水の資源を持っている私たちの責任として寄付をしたりすることができるのではないかという、他に国で起きていることを他人事ではなく、ジブンゴトとしてまとめているのが印象的でした。私たちが水やお金を寄付することで、世界の中で平和に繋がるのではないかという考えを持ち始めているのを感じました。

チーム3

このチームは、手書きの絵で水の循環を効果的に表現できていました。印象的なのは、私たちの責任として、市役所だけではなく、みんなで水を管理していく必要があることを述べている点でした。さらに、水は人間だけではなく、自然のサイクルの中で水がきれいにされていることも述べており、水の管理方法として、人工的なアプローチと自然を守っていくアプローチの両方が必要であることに気付いている印象を受けました。

チーム4

このチームは水の重要性からスタートして、岐阜市ではどのように水を管理しているのかを全体像を最初に示し、後半で細かく説明していくまとめ方をしているのが特徴的でした。

岐阜市の地名を用いながら水の循環を示した後は、下水処理場で学んだ市民の責任として、油を流してはいけないことを具体例としてあげていました。なぜ、油を流してはいけないのかというと、油を流すことで下水管がつまり、壊れた下水管を直すのに税金を多く使うことになることにユニット1での学習を繋げて考えることができていました。

最後に私たちの責任として、水を管理するには、様々な施設(紫外線処理装置や下水処理場)が必要で、これにはお金がかかるので、税金を納めることの重要性に自分たちで気付いけていました。「良き理解のある納税者を育む」ことは、フィンランドの教育でも大切にされており、小学4年生で税金の重要性を自分で気付いている点が印象的でした。

チーム5

このチームはポスターとストロー建築を組み合わせて協働的にプレゼンの準備ができていました。大きな水の循環を絵で示し、細かい水の循環についてはボックスを用いて回転させるように詳しく説明を行うことができました。

まずは海からスタートして、太陽の熱で温められて水が蒸発して、雨雲になり、雨になり、雨がふり、川に流れます。一部の水は蒸発しますが...!!!

残った水が地下水となり、汲み上げて上水きに着水します。そして、消毒された水が水道管を通って...!!!

給水管を通り、使った分に合わせて水道メーターが上がります。そして私たちが使用した水は水道管を通って、マンホールに流れ、パイプを通って...!!!

下水処理場に着水します。そして、最初に沈殿させて大きな汚れを取り、濾過して、消毒して最終的に排水所に流れ、パイプを通って海に流れることで循環が繰り返されます。説明するときに箱の周りに情報をまとめて、箱を回転させながら分かりやすく説明することができました。

グループ6

このチームは唯一ストロー建築の構造を生かして知識の構造化にチャレンジしました。印象的だったのは、市が管理していることを中心にまとめて、左側に水の循環、右側に私や私たちの責任について視覚的にわかりやすくまとめていました。さらに、私たちの責任のところでは、森林伐採が、森の濾過機能を壊してしまうことを理由を含めて説明しているのが印象的でした。

またこのチームは原稿を準備して何度も読み上げる練習を行い情報をまとめてわかりやすく相手に情報を伝えることができました。
アクティビティ2 アクションに向けたディスカッション1

35分のディスカッションの中で、ファシリテーターと書記を決めて、早速ディスカッションがスタートしました。まずはアイデアのブレストを兼ねて、12人で12個のアイデアを出す条件だけを定めて、その中で1つの実行するプロジェクトを決めてもらいました。▼ 出てきたアイデア

・水を節約する
・水を大切に使う
・石鹸を無駄に使わない
・声かけ
・シンクに油を流さない
・水で遊ばない
・石鹸で手を洗う時は、水を止める
・トイレを流す時は、なるべく小を使う
・水を出し過ぎない
・雨が降ったら、雨水を溜める
・川の周りのゴミを取る
・水は、どこから来て、どこに行くのかを知らせる

子どもたちの中でアイデアのブレストを行った後に分類するアイデアが出てきて、分類をしてみて一番重なりのある水を節約するアイデアで着地しました。今回の30分のディスカッションでは、プロジェクトにするところまでいかなかったのですが、12人で様々なアイデアを出すことができました。次回のディスカッションでは、水の循環を踏まえた上で、再度プロジェクトにするためのディスカッションを行っていきます!学んだことをアクションに繋げる一歩を踏め出せたらと思います!

 

アクティビティ3 アクションに向けたディスカッション2

今回のディスカッションでは、前回とは異なるファシリテーターを立てて「教室から外に」をテーマに、アクションを考えるディスカッションを行いました。子どもたちにアクションを考えてもらうと、どうしても学校内や家庭の中でできる範囲でのアクションが出てくる傾向があり、学校や家を超えて何かアクションができるマインドを育むきっかけにできたら思いました。

このスライドは、きれいな水の循環を守っていくアクションを考える観点のヒントとして最終プレゼンテーションを再度示しました。

前回は同じテーマで、「節水をする」というアクションがクラスの結果として出てきましたが、子どもたちに「節水がなぜきれいな水の循環につながるのか?」と問いかけるとなかなか理由が出てこない現状がありました。子どもたちの中で水を大切に使うアクションとして「節水」がよく出てくるのですが、「岐阜市の水の状態」と「水がどこからきて使った水がどこに流れていくのか」を学んできた子どもたちのアクションとしては、もう一歩という印象でした。

今回のディスカッションでは、「学校と家庭の外でのアクション」という制限をつけることで広い視点でアクションを考えるきっかけになればと思いました。

そこで子どもたちから出てきたアクションのアイデアがこちらです。

・川のゴミ拾いをする(長良川
>魚がゴミを食べて死んでしまうから。
>川は海に繋がっているからゴミが海まで行ってしまう。
・ポスターとアンケートを作ってポストに入れる
・声かけ
>例えば『水を大切にする』
>いろんな人に水を大切にすることが伝わるから。
・ゴミが入った袋の周りにネットをかける。
・川にネットを張ってゴミを回収する
>途中で鮎が産卵するために海から川の上流に上るのでネットがあるとできなくなるという人間のアクションが生態系に影響を与える意見も出てきました。

その中で、最終的に子どもたちの中で決まったのは「長良川のゴミ拾い」でした。プロジェクトリーダーにも5名ほど立候補が出て、最終的に2名が決まりこれから「長良川クリーンプロジェクト」が始動します!学校で学んだことを生かして、自分たちにできるアクションを考えて、チョイスして、振り返りをしてまたアクションを起こしていくサイクルを回していけたらと思いました。

アクティビティ3 アクション「長良川クリーンアップPJ」

そして、いよいよ11月28日に長良川クリーンアッププロジェクトを実施しました。子どもたちの中で、ユニットが終了して2ヶ月程立っていたのですが、何のために長良川クリーンアップPJが生まれたのかを振り返りながら行うことができました。

今回、子どもたちに気づいて欲しかったことは、川には色々なところから様々な種類のゴミが流れ着いており、さらにゴミは川から海に流れ、一度流れたゴミは分解されずに流れ続けることを感じてもらえたらと思っていました。そして、ゴミが流れることで、自分たちの暮らしで重要な水の循環や食物連鎖にも影響を与えることを体感するきっかけにできたらと思っていたところでした。

子どもたちが気づく仕掛けとして、「ゴミの種類」や「捨てられたゴミの年代」にフォーカスしたBINGOカードを使って行いました。

最初子どもたちがBINGOカードを見たときは、こんなゴミは落ちているはずがないと話していましたが、実際によく観察しながら拾ってみると、様々な大きさのゴミや様々な種類のゴミが落ちていることに気づいていました。

さらには、「ゴミを拾うことは頭を使う。だって、ゴミがたくさん落ちている場所を考えながら歩いていたら、車が通る道路沿いの近くにゴミが集中していることから、運転している人がゴミを車から捨てたと思う。」とゴミを捨てている人の行動心理についても分析しながらゴミを拾っている子もいました。

また、ゴミ拾いをしていると不思議なゴミもいくつか出てきました。

▼ 子どもたちが生まれる前(2012年が賞味期限のペットボトル )

つまり、10年間以上も形を変えずに流れ続けていたことが分かります。

▼ 1m以上の大きさのゴミ

誰かが運んできて捨てたのか、それとも大雨のときに流れてきたものなのか?

▼ 2m以上のパイプ

▼ 不思議な蓋

なんとネットで調べると2750円で売られている蓋でした。まだまだ使えそうということで、拾ったゴミを価値づけしていました。

▼ 水筒

多分川で遊んでいてそのまま流れちゃったのかな?

ゴミを見ていると、色々なことが想像できて、自分たちが自分の意思でゴミを捨てていること、自分の気づかないところでゴミを置いたままにしたりしてしまっていること、ゴミ拾いをすることで色々なことを想像できたのではないかなと思います。

最終的には、45Lのゴミ袋4袋のゴミを長良川の尚子ロードで集めることができました。

さらに、面白いのは子どもたちが「ゴミの博物館をやってみたい!」というアイデアが出てきたことです。そして、11月にクラスメイトがゴミ拾いをして、2ヶ月でこんなに溜まっているゴミを見て、1ヶ月に1回ゴミ拾いをしようという声も出てきました。

ユニット6は芸術を通して社会の中にある課題を伝えるユニットになるので、ゴミをアート作品にして、G4のユニットで学んできたことを掛け合わせて、アートを通して社会課題について考えるプロジェクトが始まりそうな予感がしました。

子どもたちの探究がアクションに変わり、アクションをするからこそ伝えたい気持ちが高まっていくサイクルを感じました。