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Unit3 WEEK4-5 水の利用可能度と地理的影響を探究

Unit3 水の利用と管理は、地域の開発と持続可能性に影響を与える

いよいよ探究も中盤を迎え、これから総括評価の課題に取り組む準備を進めていきます。子どもたちの中で「岐阜市では水道水の水はどこから来るのか?」という疑問に対して、最初は海という意見が出てきていたのですが、実験を通して川や山という考えが出てきました。ここからは、さらなる問いとして「水道水の元となる岐阜市の川はきれいなのか?」という疑問を調査し「100年後もきれいな水を守っていくための私たちの責任」について考えていきます。

アクティビティ1 環境調査

本日は、岐阜市役所の環境保全課の「環境調査(水辺の生物調査)」の講座を受講しました。実際に私たちが住んでいる地域の水源となっている長良川に行ってきました。

長良川の水はきれいなかな?」という問いかけに対して「きれいだと思う!」という子どもたち。「どうしてそう思う?」という問いかけに「見た目が透き通っている。」子どもたちの中で、水のきれいさを感覚で調査する方法は知っていました。今回は更に化学と生物も合わせて、3種類の方法で水質調査を行なっていきました。

▼ 化学
パックテスト(COD調査、pH調査)
COD調査:水がどれだけ汚れているかを調査
❷ pH調査:水の状態を調査(すっぱいのか苦いのか)
▼ 感覚
川の見え方、におい、川底の状態、ごみの量、あわ、油 について目で見て、自分の感覚で評価する。
▼ 生物
水質の状態を表す生物である指標生物の生息状況によって評価する。

① 化学調査

まずは長良川の水の調査を化学的に調査を行いました。

1. Chemical oxygen demand:化学的酸素要求量
水がどれくらい汚れているのかを酸化剤の薬品を入れることで調べていきます。具体的には、水中の有機物を酸化するのにどれくらいの酸化剤が使われたのかを調査します。数値が大きくなればなるほど、水中に有機物が多いことが分かります。

調査の結果、長良川CODは「2」という結果になりました。水道水が「0」なので、長良川の水がどれだけきれいなのかを知ることができました。

2. pH調査:Potential Hydrogen

次にpHを調べることで水がどれくらい汚れているのかを調査しました。子どもたちにとってpHのという言葉は初めてでしたが、pHが低いと酸っぱくなり、高くなると苦くなると説明を受けました。身近にある酸っぱいものでは、レモンや酢などの例を挙げることができました。

実際に調べてみると、pHは「7.5」という結果になり、pHからも長良川の水質がきれいということが分かりました。

② 感覚調査

感覚調査では、川の見え方、におい、川底の状態、ごみの量、あわ、油 について目で見て、自分の感覚で評価を行いました。その中でも印象的だったのは、ペットボトルを使った調査でした。ペットボトルに長良川の水を入れて20-30秒振って、泡が何秒で消えるのかを調査しました。結果は、どの調査でもきれいな川の状態であることが分かりました。

③ 生物調査

最後は、子どもたちにとって一番楽しみにしている生物調査です。生物を調べることで水のきれいさが分かることは、下水道処理施設でも少し学習を行なっていました。ここでは、長良川に生息している水中昆虫や魚を調べることで水のきれいさを調査していきました。

こちらは、きれいな水に生息する「ヒラタドロムシ」です。虫かごに入れるとなかなか離れませんでした。

こちらは、とてもきれいな水に生息する「カワゲラ」の抜け殻です。一緒に小さな魚も写っています。

石をめくると尾が3本ある「タニガワカゲロウ」をたくさん発見することができました。

総合して、長良川にはきれいな水に生息する水中昆虫がたくさん生息していることが分かり、生物調査でもきれいな水であると判断しました。

最後の質問コーナーでは次のようなやりとりが行われていました。

① ダムの影響
ダムがあることで水の流れが止まり、その影響で水が腐ってしまうこと。

② 上流と中流下流での生き物の違いはあるのか?
上流の方が川の水がきれいなので、上流にいくとイワナなどの魚が見られたり、中流ではあゆ等の魚が見られたり、下流では海の生き物と川で見られる生き物が混じっている話など、それぞれの環境に合わせて生き物が生息している話をしていました。

長良川でしか見られない生物はいるのか?
元々は、違う県でも見られていた生き物が人が環境に介入することで絶滅してしまった話を聞きました。長良川だけで今でも見られる生き物もいるそうです。

中でも印象的だった話は「長良川がなぜ日本一の川だと思うのか?」という話でした。話の中心にあったのは、長良川にはたくさんの種類の生き物が生息していることです。理由は、上流付近に山があり、三重県の漁師さんが植林をする活動をしているみたいです。それによって、山に降った雨が自然に濾過されて、養分をたくさん含んだ水が川を流れ、養分を含んだきれいな水が長良川に流れ込むことで、長良川では多くの水中昆虫や魚が育つことができます。さらに、長良川だけでなく、海に流れてきた場所でも多くの魚が育つことができる話をしていました。長良川には、たくさんの人が周りに住んでいながらも、たくさんの種類の水生生物や魚が生息することのできているきれいな川であることに誇りを感じていました。

▼ 学校に帰ってきてからの振り返り

子どもたちは早速今回のフィールドトリップで学んだ知識やスキルを生かして、学校の水道水の水質を調べたり、以前濾過した水の水質をペットボトルに入れて振って泡を見ることで調査を行なっていました。

アクティビティ2「知識を建築する」

ユニットの探究の理解が深まってきた中で、子どもたちに学んだ知識を構造化をするアクティビティを行いました。どうしても、知識を覚えるとなると大量の知識をバラバラに覚える作業になってしまいがちですが、点である知識を繋げて線にして、さらに線を繋げて面にして、更に広げて立体的に知識を捉えることを体感するためのワークショップとして、ストロー建築を行いました。

既に45分間ストロー建築にチャレンジしている子どもたち。しかし、うまくバランスが取れず困っている状態が生まれていました。「建築」と聞くと、私たちは、どうしても四角形や立方体のような形を作ってしまいます。実はここに大きな落とし穴があることに気づかされます。

本日は、機械工学でストロー建築をしたことのある友達に専門家としてきてもらいました。

実際に機械工学の友達が作ったストロー建築はこちらです。小学4年生にトラス構造がなぜバランスが取れるのかを説明するには、実際に作って見せるのが一番ということで、実際にトラス構造で作られたストロー建築の橋を観察してもらいました。

「この建築を観察すると何が見えますか?」

「自分たちが作った建築物との違いってなんだろう?」そう問いかけると

「なんか、三角形がたくさんある。」

「三角形がたくさんあって気持ち悪い。」と子どもたち。

「じゃあ、身の回りに三角形で作られている建築物って見たことがある?」

なかなかピントきていない子どもたちでしたが、次の写真を見ると子どもたちの中で繋がり始めます。

学校近くの橋です。

学校にある遊具です。

意外と身の回りに三角形でバランスの取れている構造物があるのを知り、子どもたちの中でどうやら「三角形最強説」という仮説が生まれ始めます。

子どもたちの手元にたくさんの三角形が生まれ始めます。まずは「真似してもいいかな
?」と「真似ぶ」ところから学びが始まり、基礎からどんどん応用が生まれていくのが見えました。

開始15分後には、クラスの中で誰一人とクリップとストローだけではバランスの取れた構造物ができなかった状態から、クリップとストローだけでバランスの取れた構造物う作り上げる子どもが出てきました。さらに、子どもたちの中で「シンメトリー(対称)になっているとバランスがとりやすい」とPSPEの器械運動で学んだ概念的な見方もここで応用されているのが分かりました。

建築が進んできたところで改めて子どもたちに「何か大事な材料が足りない。」と問いかけると「知識」という材料が足りないと目的に立ち返りながら建築を進めていきました。

ここから、建築を終えた子どもたちが集めてきた60個の知識をつなげていく次のステージに発展していきます。

知識を「原因」と「結果」で繋いでいます。

知識を「原因」と「結果」とそれに対する「解決策」でつなげています。

知識の構造物の原型が生まれてきました。まだまだ知識の材料が繋がっていない状態ですが、ここからユニットで学んだ知識を立体的につないでいきます。

子どもたちはスキルを全て教えてもらわずとも、作品を見て必要な技術を観察し、実際に手を動かしながら建築するスキルを磨いていきました。

アクティビティ3「水戦争」ドキュメンタリー

ここまでの探究の中で、子どもたちと一緒に日本国内の水事情について学びを連続させてきました。今回のドキュメンタリーでは、私たちの視点を日本から世界に目を向ける仕掛けを行いました。

子どもたちにとって、水の必要性について学んできたものの、蛇口をひねればきれいな飲み水が当たり前にあることで、水の重要性についてジブンゴトになりきれていない感じの印象がありました。

そこで、実際に今世界で起きている水に関わる問題についてドキュメンタリーを通して視点を広げて行きました。

ドキュメンタリーの前半では、水の重要性について、私たちの暮らしがどれだけ水に依存しているのか、そして水という資源が限りあることを学びました。中盤では、ユニット2で学習した「天気や気候」とユニット3の学習内容である「水の利用可能度」の関係性について深めていきました。後半では、ユニット1で学習した「政治の果たす水の管理の役割」について難しい内容でしたが、学びが広がっているようでした。映画を通して、これまでに自分たちが学んできたユニットの内容が繋がるのを感じるきっかけになればと思いました。

アクティビティ4 ディスカッション

ドキュメンタリーを見た後は、「今世界で起きている水に関する問題と私たちへの影響」 をテーマにディスカッションを行いました。難しい映画の内容を見て、難しいトピックについてのディスカッションに4年生の子どもだけでファシリテーターと書記の役割を決めてディスカッションがスタートしました。ここではディスカッションのスキルを高めるために、話すタイミングと聞き方について共通のグランドルールを一緒に決めました。

▼ グランドルール

話し方
話し方A:自由発言(いつでも自由に発言ができる)
話し方B:相手の言葉に自分の言葉を被せない

聞き方
聞き方A:アクティブリスナー(相手の話していることに反応をしながら聞く)
聞き方B:サイレントリスナー(相槌のみで静かに相手の意見を聞く)

子どもたちの中で、話し方Bと聞き方Aが採用されました。グラウンドルールが共有されたことでファシリテーターと書記が前に出て話し合いが始まりました。

まずは世界で起きている水のことをドキュメンタリーや本で学んだことをもとにみんなで意見を出していきました。ここでは、地球温暖化の影響で水不足や干ばつが起きていること、ダムをつくることで水が汚くなっていること、水道の蛇口からは泥水が出ていて、飲まないと死んでしまうし、飲んでも体調を壊してしまうこと、蛇口から水が出てこないこと、水が出てこなくても料金を支払わないといけないこと等様々な問題が出てきました。

では「ここで出てきた問題は日本に住んでいる私たちにはまっったく影響がないのか?」という問いに対して、自分たちへの影響について考えていきました。

子どもたちから出てきたのは、「水がない国から日本の水が奪いとられ、日本が水不足になる可能性があるのではないか?」という意見が出てきていました。ここまで意見を出していると、子どもたちの中で自分たちにできることはないのか?という話し合いに自然と発展し、自分たちにできること(責任)をテーマに話し合いが深まっていきました。

子どもたちの中で、出てきたのは節水と寄付と声かけです。45分というディスカッションだったので、なぜ節水や寄付をすることが水問題の解決になるのか、声かけをするとしたらどのような声かけをしたらいいのかについては総括的評価後のディスカッションで深めていけたらと思いました。

ディスカッション後に、子どもたちは「難しすぎて全然分からなかったよ。」と話していましたが、「この2日間で学んだことや考えたことを自由に書いてみよう。」と話すと、子どもたちの中で日本での話から世界に起きている問題に視野が広がっているのを書きながら感じていました。

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▼子どもたちの映画を見てディスカッション後の感想

・日本は水が多くもないし少ないことを知った。
・世界では色々なことが起きていて、水の奪い合いで人が殺されることもある。水道から水が出るのは普通ではない。
・水不足が発生するとさまざまな問題が発生する。それを解決するには水を寄付する。
・今世界では水不足の国がある。けれど日本は豊かだからこそ、他の国に何かをしてあげたらこの問題は解決するかもしれない。
・私は映画をみて、ある国では泥水が水道から出て、今の私たちみたいに生活できないから、私たちでできるわけじゃなくても節水や寄付をしようと思った。
・私は水不足で争いが起きていることを知った。
・水がどんなに大切かを知って、水が使えない人が世の中にいること。もう少し自分も水を大切にしようと思った。自分は募金や寄付をやってもいいかなと思った。
・今世界では、水不足や干ばつが起きている。だけれど、日本は今豊かだから、寄付をした方がいいと思った。この2日間で難しいことをやってきて、難しいことをやることで深く学べると思いました。
・日本に住んでいたら日本で起こることが普通だと思うけど、世の中には水不足が起こっている国があるということがわかった。水をそういう人たちに寄付したいと思いました。

子どもたちの中で、当たり前に使っている水が当たり前ではないことをドキュメンタリーとディスカッションを通して深まっているのを感じました。

さて、今から総括的評価に入っていくのですが、実はまだ岐阜市の水の循環を考える上で重要な場所に行けていません。

ドキュメンタリーの最後のメッセージ

「自分の町について学ぶように、周辺の流域を知るべきです。飲料水の水源と排水の行き先は知っておくべき最低限の情報です。」

このメッセージを読んで、私たちの使用している飲料水はどこからくるのか?という問いの答えを実際に見にいき、いよいよ総括的な学びに入っていきます。

「私たちの使用している飲料水はどこから来るのか?」

子どもたちの中で、岐阜市に住んでいる私たちが使用している水道の水は、浄水場からきており、浄水場は、雨が山に降り、山から流れ出た川の水や湧水を汲み上げてきれいにしてパイプを通って流れてくるという予想が出てきました。しかし、子どもたちはフィールドトリップで衝撃の事実を知ることになります。

アクティビティ5 水源地と◯◯◯

鏡岩水源地では、岐阜市の水道の水の源泉となる水源地とそこで水がどのようにきれいにされているのかのシステムについて市役所の方から説明を受けました。岐阜市では、水道の区域が決まっており、自分たちの通っている学校の水がどこから来ているのかについても話を聞くことができました。

そして、気になる「私たちが飲んでいる水は浄水場でどのようにしてきれいにしているのか」について尋ねると、「岐阜市には実は他の地域にあるような浄水場がない」という説明を受けました。

一般的には、私たちの飲んでいる水道の水は川で汲み上げられ、浄水場で濾過や消毒がされて、ポンプで私たちの家や学校に運ばれるのですが、岐阜市では地下水や伏流水を水源としているため、水質が元々きれいであることから法律で定められている最低限度の処理のみを行っている話を聞きました。浄水場がない事実に、私も子どもたちも驚きとともに、浄水場がないということは「岐阜市の水源の水がいかにきれいなのか」ということを知ることにもなりました。

早速、地下に移動して実際に排水地とつながるパイプを見学し、自分たちが使用している水道水の元となる場所についての話を聞きました。

鏡岩水源地から汲み上げられた水を実際に見ることのできる池がありました。魚が生活できているということから、この水はカルキ(次亜塩素酸カルシウム)の濃度が少ないことも分かるそうです。

他にも実際に井戸がある場所に行ってみたり。

実際に水をきれいにする紫外線処理施設も見学しました。岐阜市の水源はとてもきれいということで浄水場のような大規模な施設ではなく、紫外線処理のみで飲料水になることが印象的でした。

水源地の見学と、長良川の環境調査のフィールドワークが繋がり、私たちが暮らしている岐阜市の水道水の原水はとてもきれいであり、私たちは最小限の消毒で美味しい水が水道水から飲めることを知りました。

このユニットが始まる前は、子どもたちの中で水道水は汚い。という印象が多かったのですが、実際に私たちが利用している水の水源や流域、処理方法を知ることで岐阜市の水道水の印象が子どもたちの中で変化したのではないかなと思いました。

いよいよこれからユニットの学びをアウトプットし、アクションに繋げていく総括課題に入っていきます。

いつも読んで頂きありがとうございます。