フィンランドの学校に行こう!

フィンランドの教育を通して日本の教育を見つめ直す。

客観的に身近な複雑な課題と向き合うために必要なこと

9月のLearner Profileは「考える人」です。「人はどのようにして考えているのか?」という考えることについて考える時間から始まりました。

「私たちはどのように考えているのか?>リンク

そしてこのこの写真を見て「何が足りないんだろう?」「考えるだけでいいのか?」という問いについて考え始めました。

「行動が必要。」という考えが生まれ、行動を実践してみました。

今私たちは「行動するだけでいいのかな?何かが足りないと思うんだよね。」という更なる問いについて考えています。

そんなことを考えている時でも、学校で生活していると様々な問題が起きます。

今日起きた問題...

自分たちが遊びたい対象をめぐって、2つの集団で取り合う状況が起きました。取り合いが起きた場所は、遊びたい対象がある他の学年が授業をしている教室で起きました。この問題が起きているのを周りにいた大人が見て、他のクラスの学習の妨げをしていることに対して注意を行いました。注意を受けると子どもたちは、注意をした人にネガティブな印象を抱いてしまうことは起きていたかもしれないです。

この状況について子どもたちと一緒に考えていきました。

まずは、実際に自分たちに起きたことを直視すると自分たちの視点でしか問題を見れない状況が生まれてしまうので、ちょっと抽象度を上げて実際に世界で起きている事例に近い状況を例に挙げて「このホワイトボードに書かれいる状況はどのような状況を表しているのか?」について自由に考えてもらいました。

▼ 子どもたちから出てきた考え

これは、今世界で起きているウクライナとロシアの戦争を表していて、この国Cは実際にウクライナに住んでいる人たちを表している。そして、その他の国は日本などの国で、国Cに住んでいるウクライナの人に「危ないよ!」と警告をしたり、国Aと国Bが争っていることに対して警告を行なっているのではないかな?

「では、この状況の中で困っているのは誰だろう?」

それに対しては「国Cの人ではないかな?」と答える子どもたち。

「じゃあこの状況で困っているのは、国Cだけかな?」という更なる問いに対しては、「国AとBも何か理由があって争っているのではないかな?もしかしたら貧しいことが原因になっているのかもしれない。」と話していました。

子どもたちの中で状況の理解と色々な立場の視点で考えることが進んだところで、「この状況って世界だけで起きているのかな?それとも、自分たちの身の回りでも起きたりしているのかな?」と問いかけると「これは、さっき自分たちに起きていた状況と全く一緒だ!」とハッとする子どもたち。「さっきの状況と重なるとするなら、どんな関係性がここにあったんだろう?」と問いかけると、冷静に考えながら、自分たちに起きていた状況を整理することができました。

ここで伝えたかったことは、自分たちの周りに起きている争いも複雑な問題であること。大人にとっては単純な課題に見えても、子どもたちにとっては複雑で重大な問題である見方もできます。そして、冷静になれば異なる立場に立って考えれば自分たちの行為が適切でないことに気付けるけれど、どうしても自分の視点でしか物事を見れなくなってしまう状況は相手との関係性の中で起きることはあります。

「では、もしもう一度同じ状況が生まれたとしたら、考える人はどのようにしたら相手の立場に立って行動できるのかな?」という問いに対しては、「冷静に考えればできると思う。」

「じゃあ、冷静に考えれば、相手が一方的に話している状況でも相手の意見を聞くことができるかな?」というと、「争いになると思う。」と子どもたち。

「じゃあ、この世界からやっぱり争いはなくならないかな?」という問いには「うん。」と答える子どもと「いや、しっかり話し合えば争いはなくせると思う。」と子どもたち。

今月のLearner Profileについて深く考えるための大きなきっかけとなる出来事でした。もちろん、15分間の考える時間で全てが変わるわけではないと思いますが、実際にこの話し合いの後に、2つの集団の中で取り合っていた対象物となった人は、子どもたちの様子が変化したと話していました。

大人が全て予防線を張って、子どもたちの中で問題が全く起きない環境を作るのではなく、子どもたちが日々の生活の中でたくさん人間関係でぶつかって、失敗して、その度に考えるきっかけをもらい、自分たちや大人と一緒に起きた問題について自由にしっかり考えながら子どもたちが成長できる場を作っていくことが大切なのではないのかなと思いました。

もちろん、子どもたちにとって毎日争いが起きることはウェルビーイングな状態ではないと思うので、子どもたち一人一人にとって安心して過ごせる居場所をデザインした上で、子どもたちが自分の自由や権利と自分以外の友達の自由や権利とのどちらも同じように大事にできることを学べるような場を作っていきたいと思いました。