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English Green Camp in 沖永良部島

2023年7月27日から28日に奄美群島にある沖永良部島でイングリッシュグリーンキャンプを実施しました。イングリッシュグリーンキャンプを実施するのは、今年度で3回目となり、学校教育課と協働しながらプログラムの運営を行っています。

イングリッシュグリーンキャンプでは、国際バカロレアのPYPのカリキュラムの作り方を参考にしながらプログラムの設計を行っています。

▼ イングリッシュグリーンキャンプのセントラルアイデア
(子どもたちに伝えたい伝えたいメッセージ)

「私たちのアクションは人々の価値観や行動に影響を与える」

「Our small action will influence people’s value and action」

今回のイングリッシュグリーンキャンプのプログラム設計

これまでに2回実施してきたキャンプでは、沖永良部島だからこそ探究できる「海洋ゴミ」と「生物多様性」をテーマに探究をしていきました。

沖永良部島の海ごみの現状

3回目となる今回、子どもたちに伝えたいメッセージは「私たちが住む沖永良部島生物多様性を守っていくためにアクションを起こすことで、人々の価値観や行動に影響を与えること」を体感して、小さなアクションを起こすきっかけをつくりたいと考えていました。

▼ 大切にしたい考え方

【探究の教材:本物の教材】沖永良部だからこそ学べる「土地」から学ぶ

【大人の関わり】ジェネレーターとし学びを共に生成する

【学びをアクションに】
  日本語で思考し、英語のキーワードで繋ぎ、英語で世界に向けてアウトプットする

【探究を深める】概念(キーコンセプト)で複数のトピックを繋ぐ

▼ 今回のキャンプの探究の流れ

1日目…

沖永良部島でグローバルな視点を持って、時代変化を踏まえたよい循環を産み出そうとしているグッドプラクティスに取り組んでいる人の思いに触れること。

2日目…

グッドプラクティスを実践している方の想いやアクションを英語で発信することを通して、自分自身の興味関心を深掘りすると共に、自分なりの想いを発見し、次のアクションにつなげること。

DAY1

いよいよキャンプがスタートしました。子どもたちは緊張した様子でやってきました。

最初のチェックインでは、自分自身の感情にフォーカスするために、自分の今の気持ちを英語でシェアするアクティビティからスタートしました。

感情を表すカード

キャンプの最初に、感情にフォーカスすることを大切にしたのは、エコツアーを通して、島のグットプラクティスを実践している人のプレゼンから島の生物多様性に関する現状や取り組みへの思いを聞いて、自分自身の感情がどのように動いたのかに着目して振り返るためです。

まずは緊張をほぐすためにもグループで感情のシェアを行い、その後に全体で今の自分の感情のシェアを行いました。

「What's your name?」「How are you?」「I'm 〜 . 」

アイスブレイクでは、「メモリーゲーム」を行いました。メモリゲームのテーマは、自分自身と沖永良部島の繋がりを体感するために「沖永良部島で私が好きなこと」を英語で紹介し合いました。メモリーゲームとは、これまでに紹介した友達の好きなものを全て言った後に自分の好きなものを伝える、後半になるほど難しくなっていくゲームです。沖永良部島だからこそ出てくるキーワード(マンゴー、海、エラブユリetc...)がたくさん出てきました。

また、チームビルディングの一環で、一人一人が選んだキーワードからチーム名(Mango,Lily,Ocean)を決める活動も行いました。

「I like 〜 .」

ウォーミングアップで全体の雰囲気が温まったところで、今回のキャンプの目的を子どもたちに伝えます。1日目のミッションは、沖永良部島でグローバルな視点を持って、時代の変化を踏まえたよい循環を産み出そうとしているグッドプラクティスに取り組んでいる人の思いに触れることです。

そして、実際にエコツアーに出発しました。

フィールドワーク(エコツアー)では「島のグッドプラクティスを知る」ことを目的とし4つの場所を訪れました。4つの場所を実際に巡りながら「circulation(循環)」という概念のレンズを通して4つの事例をつなげて考えることを大切にしました。

1カ所目の大山では「外来種と在来種」をテーマに、エコツアーガイドとして、島の植物博士の方とえらぶ手帖のスタッフに「外来種を楽しく駆除する」考え方について話してもらいました。

国立公園に広がる外来種

本当は、実際に国立公園である大山の遊歩道を散策しながら「エコシステム(生態系)」と「外来種」についてアクティビティを交えながら体感するプログラムを考えていました。生憎の雨で実際にウォークラリーはできなかったのですが、ここでは晴れの日にどんなプログラムを予定していたのかを紹介します。

エコシステムのパートでは、大山にある植物の背丈の高い植物と背丈の低い植物はお互いに支え合いながら生存している様子の観察を行い、生態系は複雑に絡み合いながら繋がっていることを考えるアクティビティを考えていました。

また、外来種の「Catch me if you can!」のアクティビティでは、大山の国立公園にある外来種について伝え、実際に探してもらうアクティビティを考えていました。外来種について初めて知る子、外来種が生態系にどんな影響を及ぼすのかを初めて考える子、外来種を見つけたときにどのようにしたらいいのかを初めて知る子等、外来種について理解を深めていきました。また、外来種を見つけた時は「gocha!」と言って、英語の自然なフレーズを遊ぶように学んでいける仕掛けを考えていました。また、ここでは人の手によって持ち込まれた外来種が増えることでどのような「循環」が生まれるのかについても考えてもらう問いを考えていました。

また、天候のいい日に外来種のウォークラリーを実施予定です!

2箇所目では、知名町の「ゼロカーボンシティの取り組み」をテーマに、エコツアーガイドとして知名町グリーン人材の方に「カーボンニュートラル」の考え方についてお話し頂き、実際の取り組みとしてホームかがやきを訪れ、フードウェイストを活用した実践としてバイオガス装置を見学しました。

バイオガスの実践

ここでは、実際にバイオガスをテーマに、どのような「循環」が生み出されるのかを話の軸にして話をしてもらいました。仕組みとしては、ホームかがやきさんで出る生ゴミをバイオガスの装置に入れることで、肥料とガスを生成していました。肥料は、畑の肥料に使い、またガスはコンロにつなげることで実際に調理をすることができます。子どもたちは、実際にバイオガスの匂いを嗅いで、五感を使って感じている様子でした。生ゴミで捨てられてしまえば、償却するのに二酸化炭素を排出しますが、バイオガスの装置に入れることで良い循環を作り出すことができるのを知り、カーボンニュートラルな社会を目指していく上で、自分たち一人一人にできるアクションがあることを感じられる時間になったらと思いました。

3箇所目では、「エコフィードと島内循環」をテーマに、エコツアーガイドとして要ファームの代表の方にお話を頂き、実際の取り組みとして要ファームの牛舎を見学しました。

要ファーム

要ファームでは、まず「なぜ沖永良部島に移住してきたのか」について、想いの部分をたくさんお話を聞くことができました。そもそものきっかけとしては、震災をきっかけに、自分たちの食べているものがどのようにして育っているのかを知らないことに違和感を感じて、自分で自分たちの食べるものを作ることを決めて、移住を決意したそうです。

取り組みの中で大切にしていることとして、「エコフィード」という言葉が印象に残りました。

エコフィードとは(農林水産省HP)

エコフィード(eco-feed)とは、食品残さ等を利用して製造された飼料です。 エコフィードの利用は、食品リサイクルによる資源の有効利用のみならず、飼料自給率の向上等を図る上で重要な取組です。

島にある循環

沖永良部島では、本来捨てられる産業廃棄物を活用した取り組みが良い循環を生み出していると感じました。具体的には、島ではサトウキビが大量に生産されており、搾りかすであるサトウキビのバガスが大量に廃棄物として生まれてしまいます。このサトウキビのバガスを活用して、キクラゲを植え付ける培地(土台)をつくり、キクラゲの栽培を行っていました。さらに、ここで生産されたキクラゲを収穫するときに不要な部分になる茎などを牛の餌にして、さらに牛の糞を肥料にして畑に撒いて循環させる仕組みが出来上がっていました。

代表の方が話していたことで印象的だったメッセージは「命を無駄にして欲しくないこと」自分たちの食べている食料は、様々な命をいただいていることになります。食べるときに感謝の気持ちを持って食べて欲しいという生産者の声が子どもたちに響いているのを感じました。

4箇所目では、「絶滅危惧種」をテーマに、エコツアーガイドとして知名町でウミガメの産卵調査を行っている方をお招きし、国立公園である沖泊海浜公園で実際のウミガメ調査隊活動を体験し、マイクロプラスチックのビーチクリーンを行った。

ウミガメ調査隊の様子

ここでは「絶滅危惧種」のキーワードをテーマに話を聞きながら、子どもたちはウミガメの見分けるポイントについてクイズを通して実際の足跡を見ながら学んでいました。「なぜ、アカウミガメとアオウミガメの足跡を見分ける必要があるのか?」「なぜ、ウミガメ調査隊の活動をしているのか?」実際にウミガメ調査をしている方の思いに触れることで、ウミガメを守っていくことの意味を肌で感じたのではないでしょうか?

また、このフィールドワークでは、子どもたちにリポーターになってもらいました。

▼質問項目

① What's your passion?(活動への想い)

② What was the most challenging things?(大変だったこと)

③ What made you start?(活動を始めた きっかけ)

④ What's your vision?(これからの 活動について)

⑤ Please give us some message(わたしたちへの メッセージ)

⑥ この活動によって 沖永良部や地球環境にどんな良い循環を 作りたいと考えていますか?

それぞれのフィールドワークで、活動する人の思いに触れることで子どもたちの感情に何か影響を与えられると思い、さらに2日目に自分の感情が動いたものを世界に向けて英語で発信していくアクションに繋がることを意図していました。

フィールドワーク後の対話の時間では、2日目のアクションにつなげるために、実際に沖永良部島に住んでいる小学生のアクションについての紹介動画を見ました。

その後、エコツアーで学んだことを1つ1つ振り返りながら、そのときに感じた感情とそのように感じた理由をグループの中でシェアをしていきました。

感情カード

子どもたちは、同じ経験をエコツアーでしていたのですが、感じ方も一人一人違っていて、お互いにシェアすることで、普段は表現しない感情を切り口に広げられたのではないかなと思いました。

ここで1日目を終了しました!2日目のアクションに向けて、子どもたちには1日目に自分が感じたことや考えたことをおうちの方にシェアする課題を出しました。誰かに自分の思いをアウトプトすることで、経験を振り返る機会にもなり、何より自分の心が動いたことをシェアすることで、誰かの感情にも影響を与えられる経験に繋がればと思いました。

DAY2

キャンプ2日目のミッションは、グッドプラクティスに取り組んでいる人の想いやアクションを英語で発信することを通して、自分自身の興味関心を深掘りすると共に、自分なりの想いを発見し、次のアクションにつなげることである。

今回のキャンプのセントラルアイデア

チェックインとして、1日目と同様に今の自分の感情についてグループでシェアを行い、次にグループで1日目のエコツアーで出てきたキーワードのカードを見ながら、自分が印象に残ったカードを2つ選び、英語で伝え合う活動を行った。

キーワードカード(えらぶ手帖作成)

その後、似たようなキーワードを選んでいる友達同士でグループを作り、4つの観点で英語でまとめる活動を行った。

▼4つの観点

①What:活動名
②How:活動の詳細*循環がキーワード
③Why:私たちへのメッセージ
④My thought:自分の思い

アウトプットに向けた整理

午後からは、「地球を大切に」をコアバリューの1つにしているe.lab<みんなのおうち>に移動を行い、みんなのおうちで取り組んでいる海洋ゴミを活用したアップサイクルの取り組み等についての話を聞きました。

みんなのおうちの入り口

次に、2日目のテーマであるアクションをジブンゴトにするために「自分自身が25歳になったことを想像して、どんな沖永良部島だったら良いのか?」について目を瞑って未来を想像し、大きな画用紙に理想の沖永良部島について書き出すブレインストーミングを行いました。

ブレストの様子

その後、環境とつながるキーワードだけを残して、一人一人が考えた理想の沖永良部にするためのアクションを考えるアクティビティを行いました。この時に、自分自身の興味関心とこのキャンプで学んだキーワードを掛け算したアイデアが出ることを大切にしました。具体的には、バスケが好きな子が、ウミガメを海ごみから守るために、ネットでバスケットボールのゴールを作り、バスケを通して海ごみからウミガメを守るアクションのアイデアが出てきました。

最終プレゼンテーションでは、このキャンプを通して自分がやってみたいと思ったアクションの宣言を4つの観点で行いました。

▼4つの観点

①What:アクションすること
②How:アクションの詳細*循環がキーワード
③Why:私たちへのメッセージ
④My thought:自分の思い

シロアゴガエル(外来種)から島の生物多様性を守るアイデア

海ごみをアップサイクルしてウミガメを守るアイデア

身の回りで使うものをアップサイクルするアイデア

参加した子ども全員が参加した友達とスタッフ全員に向けて英語で伝えることができました。

最後に、教育長にこのキャンプで子どもたちに伝えたかったメッセージである「私たちのアクションは人々の価値観や行動に影響を与える」ことを歌のフレーズと絡めながら、メッセージとして届けて頂きました。

このキャンプを通して、子どもたちは、島でグッドプラクティスに取り組んでいる方の思いや実践を五感で体感することで、自分自身の中に小さな感情の変化を感じ取ったと思います。

ここから子どもたちが宣言したアクションを実践できる場のデザインをしていけたらと思います。