北欧3ヶ国と日本の教育を比較〜質の高い公教育を創る工夫〜
「教育で大切なことは何か?」
1. はじめに
最近世界でも、これからの教育について語られることが多くなっていると思います。
▼ SDGsでも次のように目標が定められています。
4.3 2030年までに、すべての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い技術教育・職業教育および大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。
本日から、3回に分けて、北欧3か国(フィンランド、スウェーデン、オランダ)と日本の教育を比較しながらまとめていきたいと思います。今、多くの人に注目を浴びているフィンランドとオランダの教育ですが、スウェーデンの教育についても興味を持つきっかけを現地の学校訪問をした友人と話しをすることで興味を持ちました。
▼ 今後まとめていくテーマ
1. 学校選択制について←本日はここ
2. 学習環境について
3. 生涯学習の考え方について
まずは、各国の教育を比較する基準として、PISAの学力調査と幸福度調査の結果をみて欲しいと思います。
▼PISA学力調査の結果2015
▼世界幸福度調査の結果2019
▼ まとめるとこんな感じになります。
国ー(PISA学力の順位)ー(世界幸福度調査の順位)
日本ー3位ー58位
フィンランドー8位ー1位
オランダー16位ー5位
スウェーデンー25位ー7位
この結果を見て、驚く人も多くいると思います。多くの日本人が、フィンランドやオランダの学校現場に視察にいくと思うのですが、実はPISAの結果を見ると、日本の方が学力の結果は高くなっている結果が出ています。では、私たちは日本の教育のどこに課題を感じて、北欧諸国から何を学ぼうとしているのでしょうか?
本日のブログでは、教育の機会均等という点から、4ヶ国の学校選択制についてまとめていきたいと思います。一人一人の教育機会の確保と、各学校の教育の質の向上に向けて各国がどのようにアプローチしているのかについてまとめていきたいと思います。
2. 学校選択制について
「どのようにして学校を選ぶのか?」世界で注目を浴びている北欧の教育(フィンランド、オランダ、スウェーデン)の教育ですが、子どもの教育を受ける権利を保証するために、異なる方法をとっています。
① フィンランドと日本「家から一番近い学校に通う制度」
・フィンランドの例
フィンランドで一番大切にされている教育の考え方は、「どの家庭、地域に生まれても等しく質の高い教育を受けられる環境を実現すること」です。そして、保護者の方は、「家から一番近い公立の学校が、その子にとって一番の学校」と捉えています。つまり、フィンランドでは、学校間の競争から、質の高い教育を実現するのではなく、教員養成大学の難易度を上げ、充実した教員養成を行うことで、質の高い学校を実現していました。フィンランドの先生に、質の高い教育の秘訣を聞くと、「先生」という答えが多く返って来ます。国民が先生を信頼してるからこそ、学校を信頼することに繋がっています。
▶︎教員養成に関する詳しいブログはこちら
・日本の例
日本でも、世界的にみると質の高い教育が行われていると考えられます。実際に人口が1億人規模の教育で、ここまで質の高い教育を全国的に行き渡らせている国は日本が代表例です。これを支えているのも、「子どもは、家から一番近い学校に通い、教員の経験や力量のバランスを整えている転勤制度です。」しかし、相対的貧困率が高い傾向があります。
何が、原因で相対的な貧困が拡大しているのか?
日本の教育の質の高さは、家庭からの支出によって大きく支えられています。つまり、収入の高い家庭程、質の高い教育を受けることができ、家庭収入の格差がそのまま子どもの教育を受ける機会の格差に繋がっています。
学校を選択するには、保護者負担になります。もし、家から一番近い学校がその子にあっていなかった場合は、転校或いは、不登校になる子どもが増えているのも事実です。そして、公立の学校と合わず、フリースクール等に通うのも保護者負担になり、家庭によっては、その子に合わせた教育が受けられない課題が残っています。
「2つの国を比べたときに、学校選択制を取り入れていない日本がフィンランドから学べることは何があるでしょうか?」
教員養成の制度を全て修士号にするのは、早急には現実的では無いかもしれません。でも確かなのは、日本にも素敵な先生が沢山存在しているということ。そして、自己研鑽を積んでいる先生のクラスには安心感があり、子どもはしっかり育っているという事実です。教育制度に課題がある日本ですが、自己研鑽を積む意識を持つことで、少しずつよりよい教育が広がっていくのではないでしょうか?(もちろん教員の労働環境の改善は急務だと思います。)
② オランダとスウェーデン「究極の学校選択制度」
・オランダの例
オランダでは、究極の学校選択制を取り入れています。学校は、保護者に成績を含め、多くの情報を公開しています。そのため、保護者の教育への関心度は高く、自分の子どもにあった学校の選択を行います。また、途中で選択した学校の教育が自分の子どもと合わないと判断した場合は、2つの学校に通うことや、転校をすることも容易です。
ここで懸念することがあります。「学校間の競争を行うことで、教育の目的が保護者や子どもの意思に左右されすぎて、本来の教育の目的が担保されないのではないか?」そのような懸念点が出てくると思います。
そこで、オランダの学校には、学校コンサルタントの役割を担う専門機関が存在しています。
専門機関の役割とは?
専門機関(教育監督局)↓ 尊重学校現場(校長の経営方針)・教員(教育観)↓ 尊重児童生徒
・スウェーデンの例
最後にスウェーデンの教育例です。私のブログの中でスウェーデンの教育を取り上げるのは初めてになります。フィンランドの隣の国なので、最初は同じような教育方針を取り入れていると思っていました。しかし、実際には、重なるところもありますが、異なる方法で質の高い教育を実現していました。
異なる点として、スウェーデンでも学校選択制を取り入れています。また、同じ学校選択制でもオランダとは異なるサポートを行なっています。
「学校間の競争を行うことで、教育の目的が保護者や子どもの意思に左右されすぎて、本来の教育の目的が担保されないのではないか?」
実際に、スウェーデンの学校現場を訪れた友人の話によると、懸念していた問題が起きていたみたいです。
具体的に、学校間の競争を行うことで、保護者は、自分の子どもに合わせた学校を選ぶことになります。もちろん学校は保護者に対して、成績等の情報公開を行なっていますが、一番に参考にするのは「子どもの声」になります。つまり、先生は教室では子どものニーズを第一に考えるようになります。
▼実際の教室の様子
サークル対話をしているのですが、先生が投げかけた質問に対して、先生と子どもの1対1の対話が始まり、他の子は授業に気持ちが半分で参加する形式になっていたみたいです。また、生徒が分からないことがあると、その子に付きっきりになり、他の子の学びが十分に保証されていない現状が起きていたみたいです。
ここでのポイントは、学校の役割についてです。スウェーデンの学校でも、日本と同じように一人の先生に対して、多くの子どもたちが一緒に学んでいます。この学習環境の中で、全員の子どもの学びを保証するためには、それぞれの教育の在り方で、工夫が必要になります。
スウェーデンでも、学校間での格差を無くすために、バウチャー制度を取り入れています。この制度は、子どもの人数だけでなく、子どものニーズに合わせて予算の配分を行なっています。これにより、各学校のニーズに合わせて、同じ条件で競争を測ることで、公教育の質の向上に繋がっていました。また、保護者は自由に無料で学校を選択できることで、質の高い教育を受ける機会が平等に与えられていました。
▼公教育の質を向上させるために
フィンランド:教員の質向上に向け、教員養成を強化し、学校の質を向上
日本:転勤制度を導入することで、学校間の格差を軽減
オランダ:専門機関(学校コンサル)を導入することで、学校の質の向上
スウェーデン:バウチャー制度を導入することで学校の質の向上
「日本で公教育の質を上げるために、できることは何があるでしょうか?」
3. 最後に
ここまで、各国の公教育をアップデートするために現在行なっている取り組みについてまとめてみました。公教育をよりよくするために、各国が時間をかけて、その国の実情に合わせてここまでアップデートをしてきました。
制度をこれから新しく作る上で大切にしたいことは、海外の事例をそのまま取り入れることは時間がかかるし、その国の教育制度や文化に上手く融合できるかが大切になります。
しかし、実際に他国の教育を考えたときに、日本でも公教育をアップデートする方法がいくつか見えてくると思います。
フィンランド:教員の質向上に向け、教員養成を強化し、学校の質を向上
→自己研鑽を積んで、まずは自分自身が学び続ける教師になること。
オランダ:専門機関(学校コンサル)を導入することで、学校の質の向上
→校長先生のオンラインサロンを作ること。
スウェーデン:バウチャー制度を導入することで学校の質の向上
→各学校に、生徒のニーズに合わせて適切に予算の配置を行うこと。
今回のブログでは、「学校選択制」を切り口にして、各国の「質の高い公教育を生み出す秘訣」についてまとめてみました。
次のブログでは、各国の教室環境について、ユニバーサルデザインの視点でまとめていきたいと思います。
いつも読んでいただき、有難うございます。
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