フィンランド教育と似ている「みんなの学校」が大切にしていること
「全ての子どもの学習権を保証する学校をつくる。」
1. 私がこの理念に共感した経緯
日本(大阪)にこの理念を掲げて運営している学校があります。この理念は、フィンランドの公教育が目指している「公教育の目的」と重なります。
私は、「一人一人に合った学びを保証できる公教育」を日本で実現したいと思い、フィンランドの学校現場に留学しました。ここで、私がフィンランドの学校現場を留学することになった背景を伝えたいと思います。
「なぜ、フィンランドなのか?」
私は、フィンランドの学校が大事にしている「どの地域・家庭に生まれても質の高い教育を受けられる機会を保障する」この理念に共感して、フィンランドの学校現場で教育実習をすることを決めました。
「何がきっかけでこのようなことを感じるようになったのか?」
私は、大学在籍時代に「勉強が苦手な子に、学ぶことの楽しさを教えたい。」そんな思いで、塾でアルバイトをしていました。しかし、現実には、塾の役割とは「子どもを志望校に通すこと。」志望校に通すことは、日本では、その子の選択肢を広げることに繋がるので、納得して働いていたのですが、ある日塾で働いているときに大きな違和感を感じる出来事が起きました。
塾には勉強が得意な子、苦手な子がいました。私が勉強が苦手な子への子別指導に時間を多く使っていると、「出来るだけ、Sコース(レベルの高いクラス)の子を指導してね。」このように教室長から言われることになります。塾長の意図していることも分かります。塾においては、「上位高校の進学実績」が重要になります。
ここで大学2年生の私は違和感を持ちました。
【子どもの状況】
「学校で勉強が分からない。」
↓
「塾で出来るようになろう。」
↓
「塾でも分からない。」
↓
私の疑問
「子どもたちはどこで勉強をするのだろう。塾に行くのにも、家庭の所得によって影響されてるし、やっぱり全ての子どもが通える公教育で何とかしないといけないのかな?でもどうやって?」
この葛藤の中、私は大学の講義でフィンランド教育について学び、興味を持つことになります。フィンランドには塾もない、学力格差がOECD諸国の中でも極めて小さい、公立の学校が99パーセント。そして2年かけて留学の準備を行い、実際に飛び立ちました。
しかし、実際に留学してみると、フィンランド教育を日本の学校現場にそのまま取り入れることは難しいことに気付かされます。
何か部分的に取り入れられるものはないのか。
→「フィンランドの教育で大切にしていることは何か?」
→「全ての子どもが公教育の中で質の高い学びを得られること。」
→「日本には、ないのかな?」
→「(インターネット検索)全ての子どもの学びを保証している学校」
そして出てきたのがこの「大空小学校」でした。
▼ユーチューブでも紹介されています。
2. 大空小学校について
大空小学校については、こちらのブログにまとめてみました!
大空小学校について分かるオススメの1冊です!
educationxfinland.hatenablog.com
ここからは、私が大空小学校に実際に学校見学(平成30年11月1日)に行って感じたことをまとめてみます。
大空小学校に実際に行って、心を動かされたこと。
① 学び合う、助け合う子どもたちの姿
子ども達は大空小学校でこのたった一つの約束をしっかり守っていました。私は3日間学校訪問をして、何度も子ども同士の声かけにハッとさせられました。子供達は「どうしたん?」「何かあったん?」何か起きるたびに、子ども同士で声を掛け合っていました。
▼エピソード
授業中に突然椅子を思いっきり蹴って、教室から出て行った多動性のある男の子がいました。すぐにクラスの男の子が追いかけます。そして、教室に戻ってきて「何があったん?」何度も優しく聞いていました。普通なら、暴力的な行動を見ると、逃げて怖がると思っていました。しかし、子ども達は「彼に何か嫌なことがあったんだ。」と何かを感じ取り、その子に寄り添っていました。
「大空の子は何でこれができるんだろう?」そう思ってクラスを観察していると、先生も子どもが急に暴れだしても、しっかり子どもの声に耳を傾けて「どうしたん?」とまずは尋ねていました。子どもは先生の鏡だと思いました。
② 「チーム学校」全教職員で、すべての子どもを育てる学校づくり
これも、学校の中に入るとすぐに感じました。学校に入ると廊下に一人で歩いている子ども達が何人かいました。私が知っている学校だと、教室を出ると子どもは「教室に入るよう」叱られます。或いは、担任の先生や管理職の先生が見守る話をよく聞きます。
しかし、ここでは違いました。
廊下を通る先生全員が、名前を読んで、笑顔で声をかけたり、「どうしたん?」と自然に声をかけていました。先生たちは、気になる子どもの情報を共有し、「すべての子どもを多方面から見つめ、全教職員で育てる」という教育方針を教職員全員が共有していました。このルールがあるからこそ、学級王国というものは存在せず、子どもたちも担任の先生以外にも「信頼して相談できる」大人を持っていました。
③ 地域全体で子どもを支えるコミュニティースクール
これにも驚きました。私もこの学校に「授業参観」ではなく、「一緒に学ぶ」というスタンスで訪問しました。そして学校に入ると驚きました。40人のクラスにボランティアの先生を合わせると、平均して3名の先生がいました。そして、支援が必要な子どもがいないのかを、地域のボランティアの方は常に見守り、助けを必要としている子どもに寄り添っていました。子どもにとって、地域の方は、横の関係(友人)でもなく、上下の関係(先生)でもなく、「斜めの関係」になっていました。 私たちは、1クラスあたりの子どもの人数が多いことで議論して、「少人数学級にするべき」という議論をします。しかし、大空小学校では、先生ではなく、地域のコミュニティースクールとして、地域の方を巻き込んで子どもの教育を支えていました。
これは、学校が地域を信頼し、地域が学校を信頼しているからこそ成り立つことができています。もちろんモンスターペアレントと呼ばれる保護者は一人もいません。このように言えるのは、学校の受け止め方が異なるからだと感じました。「保護者の声に耳を傾ける」ことで、保護者との信頼関係を構築していました。
3. フィンランド教育と重なる点
最後にフィンランド教育とこの大空小学校の重なる点(大事にしている点)についてまとめて終わりたいと思います。
① 学校の目的(理念)
② 学校と保護者(地域)が相互に信頼している点
③ 全教職員で全ての子どもを育てる教育方針
大空小学校も、フィンランドの学校も初めて見学すると、「学級崩壊」に見えるかもしれないです。子どもたちは、一人一人が目的を持って学んでいます。教室を覗くと、一人一人が違う教科書の問題を解いていたり、授業中は子ども同士でたくさん話しています。教室から出て行って廊下で勉強する子もいます。
本来、一人一人習熟度や興味関心が異なる中で、全員が教室という1つの箱の中で一斉に同じ授業をする目的とは何でしょうか?
「レンズを変えてみましょう!」
1)一人一人が違う教科書の問題を解いている。
→ 一人一人が自分の課題と向き合って、自立して学習している。
2)授業中は子ども同士でたくさん話している。
→ 子ども同士で学び合いの学習を行なっている。
3)教室から出て行き廊下で勉強している。
→ 椅子に座ってだと落ち着かないから、自分で落ち着ける環境を作って学んでいる。
どれも子どもが「自立」して、自ら学んでいます。
*フィンランドの学級経営目標「Study by yourself」
子どもたちは学校に「学ぶ」ために来ています。ずっと先生の指示に従い、同じ椅子に我慢して座るために来ているわけではありません。「本来学校が担うべき役割とは何か?」今の日本の学校の「当たり前」を色んなレンズを通してみていきたいと思いました。
本日のブログでは、フィンランド教育で大切にしていることを、日本で実践している「大空小学校」の実践についてまとめてみました。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
モイモイ!!