フィンランドの学校に行こう!

フィンランドの教育を通して日本の教育を見つめ直す。

フィンランドのインクルーシブ教育の葛藤と成果?〜子どもの変容エピソード〜

フィンランドでは、特別支援教育をどのように捉えているのか?」

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今日本でも話題になっている特別支援教育。私自身もフリースクールの運営に携わっているので、特別支援教育や心理学も学んでいきたいと思っているところです。
 
本日は以下の3つについてまとめていきます。是非2番目の子どもの葛藤と成長は読んで欲しいです。フィンランドで*インクルーシブ教育を取り入れるに当たっての最初の葛藤とそれを乗り越えた先にある子どもの変化を感じることができます。
 
*インクルーシブ教育とは?
 
インクルーシブ教育とは,障害のある子どもを含むすべての子どもに対して,子ども一人一人の教育的ニーズにあった適切な教育的支援を,「通常の学級において」行う教育のことです。
 

1. なぜ今日本で特別支援教育なのか? 

(特殊教育から特別支援教育になった経緯) 

次の中教審答申は、学校教育法改正前のものです。(文科省HPから)

特別支援教育に関する中央教育審議会答申(平成17128日発表)


特別支援教育を推進するための制度のあり方について )

 これまでの「特殊教育」では、障害の種類や程度に応じて盲・聾・養護学校特殊学級といった特別な場で指導を行うことにより、手厚くきめ細かい教育を行うことに重点が置かれてきた。

▼現在の特別支援教育の考え方

特別支援教育」とは、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものである。


 また、すでに述べたとおり、現在、小・中学校において、通常の学級に在籍するLDADHD高機能自閉症等の児童生徒に対する指導及び支援が喫緊の課題をなっており、「特別支援教育」においては、特殊教育の対象となっている幼児児童生徒に加え、これらの児童生徒に対しても適切な指導及び必要な支援を行うものである。

 

この法律で書いてあることが実現すれば、一人一人が「生きやすい社会」になると感じます。しかし、現場ではどうでしょうか?これまで、特別支援学校で勉強していた子どもたちも通常学級で一緒に学ぶことになります。先生にとっては負担が増える、子どもにとっても先生は支援が必要な子を見る時間が増えるから、マイナスの影響が出るのではないか?このように保護者も先生も生徒も感じるのではないでしょうか?

 
実はフィンランド(私が7ヶ月間教育実習をしていた学校)でも同じように感じていました。
 
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*特別支援の子が使用する設備のひとつ
 
多動性(ADHD)の子は、周りの刺激を減らすために、このような環境で問題演習に取り組んだりしています。もちろん、誰もがこのような環境を使うことができます。

2. フィンランド特別支援教育の成果←ココ!!!

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私は、6ヶ月間フィンランドの小学校現場でインターンをしてきました。
 
その中でも、一番印象に残っているエピソードを一つ紹介します。
 ▼「障がい」を理解し、受け入れる子どもたちのエピソード
最初の1ヶ月では見えてこなかった子ども一人一人の姿。
日本と同じで、最初は距離感を感じる子どもたちもいました。
例えば、最初の1ヶ月は話しかけに行くと教室を出て行ってしまったり、
ハイタッチをしようとしてもかわされたりと。
 
今思えばこの頃はまだお互いに信頼関係が築けていませんでした。
 
今回は、5年生のある男の子と私の物語を紹介します。
最初の英語の時間、私が教室に入った瞬間に彼は教室を走って出ていきました。
私とこの男の子の物語はここから始まりました。
 
1対1では話すことはできました。しかし笑顔は見せません。
 
でも6ヶ月後は、1番学校で英語を使って彼と話します。
この日も一緒に座ってカレーを食べました。
 
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そして一緒に食べた男の子はカレー、肉が大好きです。
共通点も見つかり話も弾みます。
 
彼はこの学校で1番英語でコミュニケーションが取れると思いました。
 
少人数でいると他の生徒と何も変わらない。
むしろ英語の能力に驚かさせられます。
 
そしてこの日の4時間目の授業。アートの時間です。
 
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奥に見えるのが「ヒートグルーガン」です。
使い方も英語を用いて教えてくれました。
本当に英語力と優しい心に感心するとともに嬉しく思っていました。
 
そして作品を作り終えた子どもたちは別の教室であることをしています。
 
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棚にはボードゲームがずらり。 
子どもたちはボードゲームで銀行の仕組み、クレジットカードの仕組み、
経営者の模擬体験をします。

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日本で人気の人生ゲームのようなものです。これがなかなか頭を使うゲームです。
お金の使い方を考えさせられました。

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もしかしたらギャンブルの模擬体験をしているのかもしれません。
 
そしてゲームも終盤を迎えた頃。
あることが起きました。
私は驚きました。

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先ほどの給食を一緒に男の子が急に教室に入ってきて、紙飛行機をボード上に
投げつけ、ボード上のものがバラバラに散らばりました。
 
これには私も驚きました。
 
しかし、私が驚いたのは彼の行動ではなくボードゲームで遊んでいた子どもたちです。
 
彼らは全く嫌な顔をせず、落ち着いて元の状態に戻します。
 
そして2分ほど経つと何事もなかったようにゲームが始まりました。
 
私は驚きました。
喧嘩が始まると私は思っていました。
舌打ちもにらみ合いもありません。
 
私は尋ねました。
 
『何で怒らなかったの?』
 
子どもたちは本当にささやかな声で答えます。
 
『彼はADHDなんだよ。』
 
優しく教えてくれました。
 
そして教室に戻ると彼は絵を描いていました。
そして私が彼の元に近づくと、
私の前で彼はこう書きました。
 
『私はADHDです。』
 
私はまた驚きました。
彼自身も自分自身と本当の意味で向き合っていました。
 
大学で学んでいたので
衝動的な行動(ADHD)については理解していたのですが、
 
本人も友達もお互いに理解していることにはっとさせられました。
 
もちろん子どもにもよると思いますが、私の人生の中でここまでお互いに
理解して生活している学校の環境に初めて遭遇しました。
 
これだけ、子供達にもプラスの変化があるフィンランド特別支援教育
具体的に制度面とインクルーシブ教育への改定からの変化もみていきましょう!

3. フィンランドの子どもの葛藤と成長  

最後にフィンランド特別支援教育についてまとめていきます。
 
フィンランドの学校では特別な支援が必要な子も公立の学校で学ぶことが一般的です。
 
日本だと重度な障害のある子は特別支援学校で学びます。フィンランドでは、教室は違いますが、同じ校舎の中で一緒に学んでいます。 
 
では、ADHDやLDの子どもはどのようにクラスで学んでいるのか?
以下は、フィンランドの特別支援が必要な生徒数のデータです。
 
Share of comprehensive school pupils having received intensified or special support among all comprehensive school pupils 1995–2017, % 1)
Support to learning and school attendance can be divided into general, intensified and special support. If general support is not enough, intensified support is provided. If intensified support is not enough, special support is provided. 
 
上記のグラフをみても、2011年度から支援の仕組みが変わって来ているのが分かります。これまでは①か②しかなかったものを、②の支援が必要な子へのサポートも学校現場で取り入れるようになりました。日本と同じシステムをフィンランドでも行なっていました。
 
① general support(通常のサポート)
② intensified support(軽度の障害:LD、ADHD等)
③   special support(重度の障害)
 
しかし、2011年からこのようなシステムに変わり、現場でも葛藤があった話を聞きました。最初は、特別な支援が必要な子が教室に入って来たときに、子供同士のぶつかりや、保護者からの厳しい言葉もあったみたいです。しかし、学校が保護者に子供達が一緒に学ぶことの意義を伝え続けました。そして、6か月後、子供達の中にも少しづつ変化が現れて来たことを現場の先生は話します。
 
子供同士が教え合うようになった。
子供同士が自然に助け合うようになった。
 
喧嘩が少なくなった。
 
大人(教室)が長い目で子どもの成長を考え、子どもを信じて待つことの大切さを感じました。しかし、これを支えているのがいくつかあると感じました。
 
① 学校、教師への信頼
② 子どものニーズに合わせた先生の配置
 
①では、保護者は学校、教師を信頼しています。だからこそ、教師の話に耳を傾け、保護者も子どもの成長を待つようになります。学校と保護者が同じ方向を向いていました。
 
②では、日本との違いを大きく感じました。「制度を変えると現場の負担が大きくなる。」ここに国の理解があります。支援が必要な子がクラスに増えるのであれば、その人数に合わせて、学校の予算を変え、柔軟に教師の配置を行える裁量が学校にあります。
 
例えば、基本的にはフィンランドの学校は1人で20人の生徒を観ます。
しかし、支援が必要な子が1人いれば、先生が2人になり、3人いれば先生が3人になる。そして必要がなくなれば、支援員の先生は教室からいなくなる。
このように現場に合わせて資源を調整していました。
 
ここまで日本ですることは今は難しいかもしれません。
 
本当に難しいのでしょうか?何かできることはないのか?
 
日本でも、フィンランドの教育を日本でできる形で実践してる学校があります。
大阪府にある「大空小学校」です。
 
◎実際に私が見学したレポート
▶︎フィンランド教育と似ている「みんなの学校」が大切にしていること
▶︎リンクはこちら 
 
 ◎「大空小学校」のオススメの本
▶︎みんなの学校が大切にしている公教育の本当の役割とは?
▶︎リンクはこちら
 
◎木村先生のレポート
▶︎リンクはこちら
 
以上「フィンランドのインクルーシブ教育の葛藤と成果」についてでした。
 
ここまで読んでくださり有難うございました!