「個を尊重する教育と社会性を育む教育のバランスをどのように取っているのか?」
これが私が今回フィンランドの学校現場を視察する上で立てた1つ目の問いです。
この問いを立てた自身の実体験として、私は昨年6ヶ月間フィンランドの学校現場でインターンを行いました。
そこで「個を尊重する教育」の必要感を感じ、日本の英会話教室で実践を行いましたが、結果的にうまくいかない事が出てきたからです。
私は「個を尊重する教育」を日本の学校現場で実践するためには「社会性も一緒に育む」ことが大事であることを学びました。
これについては、フィンランドの先生も同じことを話していました。私がこのテーマについて考えさせられるきっかけになった本がこちらです。
この本の著者であるリッカ・パッカラさんは、元フィンランドの小学校教諭です。夫の転勤をきっかけに来日し、自身のフィンランドでの教師経験を元に書かれた、フィンランド教育を知るリアルな1冊です。
その中で印象的な言葉が「学校で、教室で、子どもたちが必要としているのは、年上の友達ではなく、大人です。もちろん子どもたちとお友達になることは何も問題ではありません。問題なのは、教師が子どもと同じレベルになってはいけないということです。同レベルになると、誰が教えていて、誰が教室のガイドラインを定めるのかがあいまいになります。子どもたちは何を自分に求められているのかを知りたいのです。学校は個人行動だけでなく、グループの一員になることを学ぶ場所、そのことを忘れてはいけません。」私にとっても力強いメッセージでした。
私は、日本の教育の強みは「*社会性を育む教育」だと思っています。
その一方でフィンランド教育の強みは「*個を尊重する教育」だと思っています。
日本では、集団の中で個を育てる教育を大切にしています。(2:6:2の法則)
フィンランドでは、個を伸ばす教育を大切にしています。
日本では先生主体の教育(先生が全てを決める、仲直りの仲裁)を大切にしています。
フィンランドでは子ども主体の教育(子どもも選択できる、子どもの喧嘩も見守る)を大切にしています。
「なぜ、このような教育形態を取っているのか?」
日本では、学校教育法において公立学校では1クラスの人数が40人と定められています。どうしても、先生一人当たりが見る子どもの数が多くなってしまいます。
しかし、フィンランドでは、平均20名程のクラスに加えて、支援が必要な子どもの実態に合わせてサポートする先生の数が変わり、特別に支援が必要な生徒の数に合わせて予算が配分されています。ここも学校の裁量権になっています。
つまり、日本では、集団の中で個を育てなければならない環境があり、
フィンランドには個を尊重した指導をしなければならない環境があります。
それぞれの国の先生がそれぞれの環境で課題を持っています。
日本では、先生一人でクラスをマネジメントしながら、個の力も伸ばしていくのが課題です。
フィンランドでは、個を伸ばしながら、教師が規律を子どもに教えることが課題です。
日本の先生は、フィンランドの教育現場を見て「ゆとりある自由な子どもの姿」に惹かれ、
フィンランドの先生は、日本の子どもの「集団で行動できる子どもの姿」に惹かれます。
これは、どちらの国の教育がいいというのではなく、その国の文化や歴史が大きく影響されて形作られたものです。
私は、どちらの国も、それぞれの国の特色を活かして、素晴らしい教育をしていると思います。
実際に日本、フィンランド共にPISA学力においては、世界でトップにきています。
では、これからを生きる子どもたちが「幸せ」になるために、これからの学校の役割とは何でしょうか?
「個を尊重する教育?」或いは「社会性を育む教育?」
ここからは、私が考える「理想の教育」についてまとめてみたいと思います。
私はフィンランドの教育と日本の教育の良いところをそれぞれ掛け合わせた枠組みを考えたいと思っています。
そのために、今回のフィンランドへの渡航では「個を尊重する教育と社会性を育む教育のバランスをどのように取っているのか?」をフィンランドの教育現場の事例を実際に視察していきたいと思います。
私が学校現場で視察する視点
・「個別学習=子を尊重する教育」「協働的な学習=社会性」「プロジェクト学習」のバランス
・1学期2学期3学期の目標
・クラスマネジメント(学級経営)という言葉は存在するのか?
・学級全体目標はあるのか?子ども自身の目標はあるのか?
・子ども自身の学ぶ目的とは何か?
・学力格差を広げないために学校で工夫していること(特に1年生の指導)
・勉強が嫌いな子(苦手な子)にはどのように指導するのか?
・個を尊重しながら、どのようにして社会性を育んでいるのか?
・フィンランドの先生が考える社会性とは?
・個を尊重する教育を行うと、皆んなが違う方向に行くと考えられるが、教師は何を目標に子どもに指導をしているのか?
改めて下の図に当てはめて考えてみます。
① 日本の教育「社会性を育む教育」
*社会性とは何か?
(日本のどこの学校にもある文化)
・号令→「フィンランドにはない」
・整列→「たまにフィンランドもある」
・全校集会→「たまにフィンランドもある」
・集団行動→「たまにフィンランドもある」
・清掃時間→「フィンランドにはない」
・部活動→「フィンランドは地域コミュニティの中にある」
・委員会活動(係活動)→「フィンランドにはない」
・生徒会活動→「フィンランドにもある」
・ボランティア活動→「フィンランドにはない」
*その他:麹町中学校の工藤校長先生が考える社会性とは?
社会性=これからの世の中を「生きる力」
社会で活躍する人材を育てるために、課題を自分で解決できる・その経験を次に活かすことができるようにと、このような8つの目標が大切にされています。
工藤校長先生は「意見の対立は当たり前に起こる。この違いをどのように折り合いをつけていくかが大切。学校はそういった力を育む場所。」と話しています。
② フィンランド教育「個を尊重する教育」
・1人1台のタブレットでその子の進路に合わせた学習の保証
・勉強が苦手な子を集めて少人数での指導
・少人数でも理解に時間がかかる子には個別指導
→ 公立の学校で「できるようになるまで」徹底してサポート
・「あなたはどうしたいのか?」を問う(図工、音楽、体育等)
③ 社会性を育む教育×個を尊重する教育
・「朝の会」×「サークル対話」
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この③は日本の教員の多くは、必要性に気付いて実践している人が多いと思います。
私自身も、今回の渡航では、日本でも実践できる「子ども自身が教師に認められている。」「観てもらっている。」と集団の中でも感じられる瞬間を細かく観察して、そのアイデアを1つでも多く吸収して日本に持ち帰ってきたいと思います。
ではでは!モイモイ!