フィンランドの先生の''幸せな''働き方に関して
「フィンランドの先生の勤務時間とは?」
近年、教員の仕事もニーズが多様化し、世界共通で忙しくなってきているのも事実です。最近では、どこの国でも教員不足が課題になっており、子どもの「学ぶ権利」を保証するためにも、日本でもしっかりと考えていかなければならない課題だと感じています。まずは、若者が「教員になりたい」と思える職場環境を整えることが喫緊の課題だと感じています。本日のブログでは、フィンランドの先生の''幸せな働き方''を中心に、日本でも実践できる方法を提案という形でまとめていけたらと思います。
1. フィンランドの先生の働き方
フィンランドの先生の学校での勤務時間は、平均して''約6時間''です。この時間には、給食時間も含まれています。それに対して、日本の先生の平均勤務時間は''約11時間''です。今、日本でも変形時間労働制の導入が決まり、不安に感じている先生が多いと思います。私は、今の日本の学校教育現場で、必要なことは、「業務量を減らすこと」と同時に、「一人一人に合わせた働き方を尊重する文化を育んでいくこと」だと思います。
フィンランドの学校現場では、先生一人一人の働き方が尊重されており、仕事量が人手を上回ると、減らすというよりは、人員を増やすことで対応しています。教育という仕事は、減らすことが難しいのが現実です。
ここにそもそもの働き方に関して、異なる価値観があります。
▼日本で働き方改革が進まない(長時間労働が改善されない)原因
「誰かがやらないと、そもそもの仕事が回らなくて、自分もやるんだから、あなたも手伝って欲しい?」
このスパイラルから脱出できないのが大きな原因です。しかも、その殆どの仕事は、これまで働いてきた先生が培ってきた、当時は価値や目的が感じられていたものですが、今では、カタチだけ残っているものも多く存在します。今先生が日常的にしている教師の仕事は、今の時代に本当に必要なものなのか?もっと子どもたちに今、必要なものがあるのではないか?業務を減らすことは、''余白''を生み出し、これからの時代に必要なものを、時代に合わせて、未来を生きる子どもたちのために創っていくことを意味しています。1度、各学校毎に管理職を中心に、業務内容を吟味し、少しずつ今ある業務量を減らしたり、アップデートできるものを職員全体で見つけることが大切かもしれません。
▼オススメの著書「学校の当たり前をやめた」がこちらです。
▼内容説明(紀伊国屋書店レビューより)
「みんな仲良く」と教室に掲げても、子どもたちは仲良くなりません。他者意識のない作文、目的意識のない行事すべて、やめませんか。宿題は必要ない。クラス担任は廃止。中間・期末テストも廃止。何も考えずに「当たり前」ばかりをやっている学校教育が、自分の頭で考えずに、何でも人のせいにする大人をつくる。
また、フィンランドで教師という仕事が人気の理由に、①休みが多いことと、②柔軟な働き方ができるという2つの理由がります。具体的に、実際のフィンランドの先生の働き方を紹介していきたいと思います。
・ 先生の1日
学校種や地域によって勤務体制は異なりますが、凡その先生の1日についてまとめてみたいと思います。
7:50 出勤
8:00 授業(開始)*保護者への連絡は休み時間に
10:30-11:00 昼休み(昼食)
11:00-14:00 授業(終わり)*休み時間は基本的にコーヒー(対話)タイム
14:00-15:00 次の日の教材準備(退勤)
18:00-19:00 自宅で採点業務等
▼日本にあって、フィンランドの先生にない業務
・教育委員会からのアンケート・・・信頼がベースに
・組織的な公務分掌・・・職員の自立と休み時間の対話の中で情報共有
・部活動・・・地域の役割
▼日本にもあって、時短した業務
・保護者への連絡・・・メインはオンライン上でのやり取り
・職員会議・・・週に1回
・教材研究(教材準備)・・・必要な教材は電子教科書に
基本的な業務内容や学校行事は、日本の学校と変わりません。では、どのようにして、働く時間を短くしているのでしょうか?第2章でまとめていきたいと思います。
・ 年間を通じて休みが多い
フィンランドの先生は、殆ど生徒と同じ日数の休みが存在します。
「生徒に休みが必要なように、先生にも休みが必要」と考えられています。
▼先生の年間の休み時間(8月中旬新学期スタート)
・秋休み(約1週間)
・冬休み(約10日間)
・春休み(約1週間)
・夏休み(約10週間)
+土日休み
+年間の有給休暇+育児休暇(例:校長先生もしっかり取得して家族旅行に)
フィンランドの先生は、長期休みを徹底して休みモードに切り替えます。例えば、先生の多くは仕事用の携帯とプライベート用の携帯2つを持っており、長期休みに入ると、仕事用の携帯は学校において、仕事から離れ、サマーコテージで家族とゆっくり過ごしたり、旅行をする等してリフレッシュする時間を大切にしています。
先生が「休む」価値を知っているからこそ、先生は子どもたちに長期休みは宿題を出しません。休みの日は、しっかり体を休め、休みの時にしかできないことを過ごす大切な時間です。そして、休み明けは一気にスイッチを入れるのではなく、先生も生徒もゆっくり日常の生活に戻していく感覚を大切にしています。
・ 一人一人に合わせた柔軟な働き方ができる
フィンランドでは、毎学期の最初に校長先生と担任の先生は、今年度の働き方に関して相談する時間があります。例えば、小さい子どもがいて、子どもとの時間を確保したい場合、先生の意思を尊重して、午前のみ働くパートタイム制を取り、午後からは別の先生を採用する等して、一人一人が働きやすい環境を整える努力をしていました。では、具体的にいくつかのケースについてまとめてみました。
-ケースⅠ : 小さい子どもがいる先生の場合
先生方によって働く時間は異なります。小さい子供がいる家庭は一時的にパートタイム制にすることも可能です。私の学校でも毎日12時に帰る担任の先生がいました。その先生には小学2年生の子どもがいて、子どもとの時間を大切にするために早めに帰宅していました。
「では12時以降の授業は誰が見るのか? 」
12時以降は別の教員免許状を持っている先生をパートタイムで雇い、柔軟に働く環境を整えていました。
「先生ってこんなにも柔軟に働けるのか。」
フィンランドに来て驚いたことの一つです。 日本では、正規採用されると、一時的に勤務体系をパートタイム制に変えることは難しいと思います。私は、制度を整えることと同時に、そもそもの「一人一人に合わせた働き方を受け入れられる」価値観を少しずつ学校の中にも作っていく必要があるのかなと感じています。もし、柔軟な働き方が実現すれば、教員を志望する若者が増えたり、子育ての時期は一時的にパートタイムにする等、個人のニーズに合わせた柔軟な働き方を選択できることで「辞める」のではなく、「できる範囲で働ける」環境を整えることで、先生の数を確保することにも繋がるのではないかと思います。
-ケースII : 副業をしている先生の場合
先生の中には、副業をしている人もいます。日本でいう非常勤講師のような感じで学校教育に携わる先生も多くいます。週に5日間、午前中のみ学校で働き、午後からは自分のビジネスをしています。日本だと、なかなか受け入れられない働き方のような気がします。日本でも法律上、このような働き方をすることはできるのですが、なかなか現場の先生や保護者の方に公にはできない働き方だと思います。しかし、このような先生も職員の輪の中に入って、楽しく働いています。校長先生に聞いてみると、「先生も一人の人間だから、望んでいるライフスタイルも異なります。一人一人の先生の働き方を尊重することで、先生のモチベーションを高めることを大切にしています。」
2. フィンランドの先生が早く帰れる理由(日本との比較)
・働き方の価値観の違い
フィンランドを含めた、北欧諸国の一般的な働く価値観は、「仕事に人を合わせるのではなく、人に仕事を合わせる」という言葉があります。この言葉が意味するものは、「やらなければいけない仕事量に労働を当てるのではなく、定められた労働時間の中に、最善の労働力を当てはめる」という考え方です。仕事に私たちの労働を合わせることで、ライフワークバランスが崩れてしまいます。しかし、先生という仕事は例外で、人手が足りないから、授業をしない選択をすると、これからの未来を作る子どもに十分な教育が提供できなくなります。だからこそ、限られた資源の中で、いかにして教育を行うのか、今一度考えてみる必要があると思います。
・業務内容と量の違い(日本-100時間)
日本の先生の月あたりの業務時間は240時間です。それに対して、フィンランドの先生の業務時間は140時間です。この100時間の差について、日本の先生の働き方と比較しながらまとめていきたいと思います。
▼日本にない業務内容
・部活動・・・地域の役割
・教育委員会からのアンケート・・・信頼がベースに
・組織的な公務分掌・・・職員の自立と休み時間の対話の中で情報共有
- 部活動ない(-50時間)
日本の教員の長時間労働の一番の理由になっているのは、教員の部活動指導が一番に挙げられます。毎日2時間の指導に加え、土日も練習試合等で休む時間が無い先生も多いのではないかと思います。これも全て「子どもたちのため。」先生が居なかったら、練習ができない、試合で成果を出すために自分の時間を投資して部活動の指導に取り組んでいる先生も多いかと思います。
「少し未来の部活動の在り方を考えてみましょう」
・部活動を無くしたら、子どもたちはスポーツをする時間がなくなるのではないか?
・部活動がなくなったら、子どもたちは放課後にどこで過ごすのか?
色々な声が聞こえてきそうです。フィンランドでも、一昔前までは部活動がありましたが、現在では全て地域コミュニティに一任し、一人当たりのスポーツ人口も世界一になりました。この時に、政府はスポーツを「競技」としてのスポーツから「生涯スポーツ」へ大きな舵をきることになりました。これにより、誰もがスポーツにアクセスしやすい地域が創られていきました。中学生からお年寄りまでが一緒にバレーをしたり、年配の方が子どもたちにスポーツを教えたりする等、新しいスポーツコミュニティーの在り方は日本でも近々生まれてくるのかなと思います。詳しくはこちらのブログに まとめてみました。
- 教育委員会からのアンケートは無し(-3時間)
フィンランドの教育現場は「信頼」がベースで成り立っています。フィンランドも20年以上前は、日本と同じように国からの学校現場へのトップダウンの教育を行なっていました。しかし、20年前の教育改革をきっかけにして、学校現場、そして一人一人の先生の裁量権を多くしました。では、どれだけの裁量権があるのでしょうか?
-国:最低限度のカリキュラムを決定
-地方教育委員会:国が定めた最低基準を元に地方でのカリキュラムを作成
-各学校現場:地方が定めたカリキュラムを元にカリキュラムの作成
-担任:教科書の決定等
国は、最低限度のカリキュラムを示すだけなので、英語学習の開始時期が地方によって異なったり、学校現場では、学級に応じて使用する教科書が違ったりします。
「なぜ、国は学校現場(教員)に大きな裁量権を与えたのか?」
そもそもの考え方として、国が全ての学校を把握することは難しいです。現場のことを一番よく分かっているのは、先生です。だからこそ、各先生方に大きな裁量を与えることで、先生のモチベーションを高め、目の前の子どもに合わせた教育環境の実現を目指しました。つまり、国が先生を信頼して大きな裁量を与えているので、社会全体として先生への信頼は大きいです。学校が、信頼されているからこそ、いじめ等の問題が起きても、対応は学校現場に任せています。いじめ問題なども、アンケート調査をすることに時間をかけるのではなく、もっと本質的な課題解決に時間をかけていました。
- 校務分掌は無い(-7時間)
フィンランドの学校現場は、日本のように組織的に学校を運営していません。しかし、学校を運営する上で必要な業務は日本と同じように存在しています。多くの業務は、職員室の対話の中で情報共有をし、オンライン上で多くのやり取りを行なっています。
「日本にある校務分掌はフィンランドではどのように回しているのでしょうか?」
・教務部・・・カリキュラムは各担任に任せる
・指導部・・・カリキュラムは各担任に任せる
・研究部・・・先生の外部研修は年2回(内部研修なし)
・管理部・・・安全管理も外部委託
・渉外部・・・地域ともゆるっと連携
フィンランドでは、各担任の先生に大きな裁量が与えられているので、学年全体で統一されたカリキュラムはありません。「担任の先生によって差が出るのではないか?」日本で実践すると、このような声が聞こえてきそうです。日本だと、優秀な先生程、批判の的になることが多いと思います。そうではなくて、教員こそ時代の変化に合わせて、自己研鑽を行い、新しい実践をしている先生から学び合い、共に高めていける職員関係が築けることが大切だと思います。実際にフィンランドでは、年配の先生は、時代の変化に必死に対応して教育を行なっています。
また、フィンランドでも、日本のように学校行事(運動会、文化祭、修学旅行、クリスマス会等)は年間を通じて沢山行われます。しかし、日本との違いは、全ての行事を''魅せる''ために行うのではなく、子どもの教育活動の一部として行なっている点です。そのため、地域や保護者を巻き込んで行う行事が少ないので、行事の準備も休み時間の対話の中で完結することが多いです。
▼日本にもあって、時短した業務
・保護者への連絡・・・メインはオンライン上でのやり取り
・職員会議・・・週に1回
・教材研究(教材準備)・・・必要な教材は電子教科書に
- 授業準備は1時間(-15時間)
フィンランドの先生の授業準備の方法は、日本とは少し異なっています。日本では、いわゆる「教材研究」が授業の準備に当たります。附属小学校の研究授業を見ても、教科の深め方について多く議論がされています。その一方でフィンランドの先生の授業準備は何をしているのでしょうか?
▼フィンランドの先生の授業準備の在り方
・前提として、授業で使う教材は全て''電子教科書に''
・先生が準備するのは、''全員が''しっかりと学べる''環境づくり''
・授業の中で、個別の支援が必要な子の教材準備、TAがいればどのようにしてサポートに入ってもらえるかの''場''の設計。自立学習を推進している先生は、カリキュラムの準備等、先生によって様々です。
「少し未来の授業準備の在り方を考えてみましょう」
今日本でも、電子教科書が少しずつ普及してきており、それを活用している先生は「電子と紙の教科書、ノートの使い方のバランス」を意識し、授業設計をしている話を聞きます。私の中では、少しずつ授業準備の在り方も変化してきているのかなと感じます。もし、電子教科書と電子黒板が普及し、ICT機器を使いこなせる先生が増えてきたら、授業準備に余白が生まれ、「子どもたちに、教材を使って何を学んで欲しいのか?」を軸にした対話が職員間でも生まれると思います。
-職員会議は週に1時間(-15時間)
フィンランドの学校現場では、職員会議は週に1回のみ行われています。この時間は、書類に目を通すだけでは確認できない、合意形成と共通認識を持つために行われる大切な時間です。この1時間の職員会議で大枠を理解し、残りはオンライン上で細かい情報や役割分担は共有され、学校という組織が運営されています。
- 保護者への連絡はオンライン上で(-10時間)
日本の先生の業務の中でも、最も大変な仕事の一つに「保護者とのやりとり」が挙げられます。もちろんフィンランドでも、モンスターペアレントや、ネグレクトの保護者等日本と同じような課題は存在しています。 その中でも、フィンランドの先生は、日本の先生と同じように、保護者と密に連携を取る努力をしています。最も大きな違いは、先生は基本的にメールで保護者とやり取りを行なっているので、保護者とのやり取りの情報は自動的にクラウド上に共有され、全教職員での共有が簡単に行われる点です。しかし、緊急性があったり、問題が大きくなりそうな場合は、直接会って話が行われます。しかし、この直接会う面談も勤務時間内で行われ、その間は生徒は自習になったり、代わりの先生が入ることで、先生の負担が多くなりすぎないように配慮されています。
・学校を支える人の違い
日本だと、担任の先生一人の業務内容が多すぎるように感じます。例えば、最近では日本の学校でインクルーシブ教育が導入され始めています。
今、フィンランドの学校現場でも、インクルーシブ教育が推進されており、子のニーズも多様化しており、現場の先生だけで対応するには限界があります。しかし、子ども一人一人のニーズには応える必要があります。フィンランドの学校では、TA(ティーチングアシスタント)の先生が現場に入っています。彼らは、教員免許は持っていませんが、学校教育の中で重要な役割を担っています。そこで、フィンランドでは教員免許を持っていなくても、子どもの教育に携わりたい地域の方をTAとして、校長先生の裁量で採用することができます。また、TAの予算は、ニーズが必要な子どもの数によって国からおりるようになっています。これにより、一人当たりの教員の負担も軽減できていました。
3. 日本で実践できること
今日本の学校現場は、ネガティブなニュースが多く流れており、暗いイメージがあります。特に最近では、「変形労働時間」が学校現場で取り入れられることになり、これが本質的な働き方改革ではないということで、多くの反対の声が上がっています。しかし、少しずつ教員の労働環境も改善に向けて、一人一人が動いているのも事実です。
私がフィンランドの学校現場で実際に働き始めて感じるのは、フィンランドの教員の仕事量は日本と比べて少なかったり、生徒一人当たりの先生の数が多かったりと、日本の先生が望むような環境が確かにここにはあります。しかし、「仕事を減らそう!」「人を増やそう!」という風に声をあげても、なかなか変わらないのが日本の学校社会の事実です。
まずは、私たち一人一人が「今私たちがしている仕事の意味や目的」を考え直したり、自分の仕事効率を上げるなど、個人として出来ることも多く存在すると思います。
・ 個人でできることからスタート
個人的に出来ることとして、オススメしたいのがこちらの本「全部やろうはバカやろう」です。是非、自分の「働く生産性」を高めたい人に読んで欲しい本です。明日から実践できるアイデアがここに詰まっています。
▼ さる先生の「全部やろうはバカやろう」
▼ 内容レビュー(amazonレビューより引用)
ますます教師の仕事の仕事量が増し、過密化する中で、本当に成果を上げるために「教育の生産性」を上げよう! 働く時間を減らしつつ、子どもを伸ばす「教育の生産性」向上の実現。そのための思考法、仕事術について凝縮された一冊。本著は、あれをしましょうこれをしましょうの「足し算の強要」をするものではなく、全部やろうはバカやろうという「引き算の提案」をするものである。
- 働く生産性をあげる意識を持つ!
フィンランドの先生の働き方を見ていると、効率化を意識して働いている先生が多いです。一つ一つの仕事をする時に、「どうしたら勤務時間内に終わるのか」を意識して働いています。ここで大切なことは、一人一人の生産性の高い働き方は若干異なるということです。学校が捗る先生、家が捗る先生、同時に仕事を進めるのが得意な先生、一つ一つこなすのが早い先生。「勤務時間内に仕事を終える。」ことを意識して働くことで、授業の進め方にも変化が出てくると思います。日本の学校で生産性を上げる方法に関しては、さる先生が書かれた本(こちら)を是非読んで欲しいと思います。
- 勤務時間内に休息の時間を意図的に作る!
フィンランドの先生は、どんなに忙しくても休み時間は1分でも休むことを大切にしています。もし、休み時間に別の仕事が入った場合は、5分間でも体を休めて教室に向かうことを大切にしています。
▼ある日の職員室の出来事
授業開始のチャイムが鳴ると、先生が慌てて、職員室に入ってきて、コーヒーを入れてソファーに座っています。話を聞いてみると、急に保護者から電話があり、休み時間に折り返して電話をしていたみたいです。先生にとって休み時間は次の時間のパフォーマンスを上げるためにも重要なものです。そこで、授業のチャイムは鳴りましたが、5分間休んで、教室に向かっていきました。
▼このことを校長先生に話すと・・・
「先生にとって休み時間は、心をストレスから解放する大切な時間です。もし、休み時間に仕事が入ってしまったら、先生が休みが必要と感じれば、休むことも認めています。また、フィンランドの職員室は、常にリラックスできる空気感を作ることを大切にしています。だから、休み時間は私も先生に仕事の話は持ち込まないようにしています。」
私は、40校以上の職員室を見てきましたが、フィンランドの職員室には、コーヒーマシーンが必ず置かれており、休み時間は、先生方はゆっくり対話を楽しんでいました。この時間で、先生は授業中で感じたストレスや不安を発散し、ノーストレスの状態で次の授業に向かっていくことを大切にしていました。
- 全部するのではなく、Do my bestに!
フィンランドの先生に、日本の学校の先生の働き方について話をした時に、あるアドバイスを頂きました。「日本の学校の先生の仕事量は多くて、先生方は子どもたちのために、睡眠時間や休日も返上で仕事をしています。」この事を、フィンランドの先生に話すと、次のように返してくれました。
教師という仕事は、終わりのない仕事です。想いがあればあるほど仕事にかかる時間は増えてしまいます。もちろん、その人が「好き」で働いているならいいのですが、もし周りの先生に合わせて働いているのであれば、自分をもっと大事にした方がいいと思うよ。そもそも仕事に終わりがないから、休むときはしっかり休んで、子どもと関わる方が授業中の生産性は上がるよ。子どもたちは、疲れている先生より、元気な先生といる時間を望んでいるよ。
日本中の職員室が1分でもリラックスできて、休める空間になる事を願っています。
・学校全体としてできること
- 地域の大学生(教育学部生)をTAとして学校現場に入れる
今、日本でも地域の大学生を学校現場にTAとして取り入れている学校が増えてきています。学校現場で人手が足りていなく、人を雇用するお金が学校にないのであれば、教員を志す大学生や、子どもの教育に携わりたい地域の方を積極的に取り入れることができるのではないでしょうか。地域の中には、意外と学校現場で子どもと関わりたいと思っている人は多くいます。学校だけで、全てを解決するのではなく、地域全体で子どもの教育を支える価値観が広まっていけたらと思います。
オススメの学校モデルは、大阪にある大空小学校です。一度学校訪問すれば、地域の中のコミュニティースクールの役割が体感できると思います。
- 働きやすい環境を職員室に作る
これは、もちろん一人一人の意識も大切なのですが、管理職のマインドがとても大切だと思います。最近話題になっている、変形時間労働制も管理職のマインドに大きく左右されるのではないかと思います。この法律には、先生を強制的に11時間働かせるという決まりはありません。つまり、小さい子どもがいる先生や妊娠している先生も、職場環境の中で理解があれば、早く帰ることもできると思います。
「先生も無理しないで働ける環境づくり」を今一度、各学校で見直すいいきっかけになるのではないでしょうか?もし、人手が足りなければ、何か仕事が減らせないかを考えるのは管理職の役割だと思います。ここで、無理に先生を働かせると、ますます先生を志望する学生は減り、労働環境は悪くなる一方だと思います。そうなる前に、今いる先生で、これからの先生の働き方を各学校で話してほしいと思います。この話し合う対話の時間が働き方改革の大きな一歩になるのではないでしょうか?
最後に、フィンランドの校長先生の言葉を添えてこのブログを終わりにしたいと思います。
「あなたは、どんな働き方をしたいですか?」
新学期は、校長先生と先生の間で対話を通して決める時間があります。これは信頼関係を築く魔法の言葉です。詳しく聞いてみると・・・
「新学期は、一人一人の先生と対話をするので、時間はかかるのですが、信頼関係を築くことで、何か問題があればすぐに相談してくれる関係性が築けているので、大きな問題になる前に解決することが多いです。最初に対話をしておくことで、長い目で見たときに、教員一人一人が自立して働ける環境が生まれ、私も信頼して仕事を任せることができます。」
一人一人の教員が幸せに働く環境を実現するには、教育制度改革と同時に私たち自身の「内なる働き方改革」も必要だと思います。
明日から、あなたはどのような「内なる働き方改革」を実践しますか?
あなた自身の幸せを掴むために、最初のアクションをあなた自身で踏み出してみて下さい。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
教員も子どももハッピーになれる学校現場が増えますように。
以上フィンランドの先生の幸せな働き方に関してでした。
モイモイ。
PS.
Twitterでも、日々のフィンランドの高等学校勤務での学びを発信しています。
フォローして頂けたら嬉しいです。
▼Twitterアカウント