フィンランドの学校に行こう!

フィンランドの教育を通して日本の教育を見つめ直す。

フィンランド教育を通して「学校の当たり前を問う」

今注目を浴びている1冊の本。

公立中学校長の改革者である麹町中学校・工藤勇一校長先生の著書

『学校の「当たり前」をやめた』

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この本を読むと、フィンランド教育の改革を見ているような感覚になりました。

そして、多くの人が、この本を読んで、工藤校長先生だからできる!

私の学校ではできない!

そう思っているの人は多いのではないでしょうか?

フィンランド教育も、同じようにフィンランドだからできる!

今の日本ではできない!

そう思っている人が多いのではないかと思います。

この本の中で印象的な言葉があります。

「何も考えずに『当たり前』ばかりをやっている学校教育が、自分の頭で考えずに、何でも人のせいにする大人をつくる」

このブログを通して、「目の前にいる子どもにとって最適な教育とは何か?」を考えるきっかけになったらと思います。

1. フィンランドのカリキュラム改革が機能する秘訣

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日本でも、2020年度より新学習指導要領に移行します。しかし、現場はカリキュラム改革に対して不安が多いのではないでしょうか?フィンランドでは、頻繁に大きなカリキュラム改革が行われているのですが、国で定めたことが現場で機能している秘訣とは何でしょうか?

本題に入る前に、皆さんに1つ考えて欲しいことがあります。

「ここに書いてある言葉を読んで、何を想像しますか?」

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多くの人が、今の日本の学校教育の現状を想像したのではないでしょうか。

今の日本の教育は、学校予算が少ない中で、先生方は、自分のプライベートの時間を削り、部活動の指導や、1人で多様なバックグラウンドを持つ30人の生徒を観たりと、多忙化の中で地道な努力が続けられて、今の日本の教育が成り立っています。

日本の教育は、メディアではネガティブに捉えられていますが、実は世界から注目を浴びている一面もあります。「日本人の礼儀正しさから生まれる国際的な信頼」は日本の学校教育の成果の一つだと思います。その一方でこれから変化していける部分もあると思います。

さて、前置きが長くなりましたが、これは「約20年前のフィンランドの学校現場の状況」を表しています。その後、国レベルで大きな教育改革が行われたのですが、改革の行われ方にも、フィンランドならではの特徴があります。

フィンランドの教育改革でのポイントとは何か?」

各学校現場に、国から改革内容をまとめた文書が渡されます。そして、この文書が大きな鍵を担っています。実は、フィンランドでも10年に1度の大きな教育改革が行われているのですが、うまくいく改革とうまくいかない改革があります。

「うまくいく教育改革とは何か?」

キーワード「余白」「ボトムアップ」「対話」

① 新カリキュラムに学校固有の余白がある

② 新しいカリキュラムが個々の教師の教室から学校全体のレベルまで拡大できるボトムアップ文化であること

③ 各学校現場ごとに、校長がリーダーシップを発揮して、カリキュラムの概念について教師と対話を行うこと

このように、フィンランドでは、国からのトップダウンではなく、国が定めた新しいカリキュラムに対して、各学校現場で、新カリキュラムの話し合い(対話)が行われます。これが新カリキュラムを取り入れる大きな鍵になります。

これから、日本でも新学習指導要領が現場で導入されると思うのですが、今現場ではどのような話し合いが行われているのでしょうか?実は、文部科学省が定めているカリキュラムの中でも、各学校現場に大きな裁量が任されていることも多くあります。

ここからは、実際に日本に当たり前にあるもので、フィンランドに存在しないものについてまとめていきたいと思います。

2. 日本に存在しないフィンランドにある当たり前の学校文化 

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ここでは、実際に、公立中学校長の改革者である麹町中学校・工藤勇一校長先生の著書『学校の「当たり前」をやめた』で紹介された実践も取り上げながら紹介していきたいと思います。しかし、大切なことは、各学校現場によって、残すべきもの、変えるべきものが異なるということです。今の学校現場の実情に合わせて、どんな取り組みができるのかを、各学校現場毎に考えることが大切だと、フィンランド教育では考えられています。

① 服装や頭髪の指導は行わない。

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フィンランドの学校には、日本のように身なりに関する校則は存在しません。例えば、私服、化粧、髪を染めること、ピアス、タトゥー等身なりに関することは全て認められています。理由を聞いてみると、そもそも色々な国の人が学校の中で一緒に学んでいる以上、何か身なりに関して1つのルールを作ることは難しいと先生は話してくれました。子どもたちにも、日本にある身なりに関する校則を話したところ、「周りに迷惑をかけていないのに、どうしてダメなのか」と返ってきました。外国の人もこれから日本の学校教育の中に入ってくる中で、もう少し、校則に関しても子どものことを信頼して緩やかにするのも一つの方法かもしれません。服装を自由にすることで、「自分らしさ」を表現できる雰囲気も生まれています。

② 夏休みの宿題はない。

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フィンランドの小中学校では、平日ではその日に習った内容の宿題(1時間程度)が課されますが、2ヶ月間の夏休みでは全く宿題が出されません。夏休みは、先生も子どもも脳をゆっくり休める時間であり、また日常生活ではできないこと(家族と過ごす時間、旅行をする時間等)を体験する時間と捉えられています。夏休みに宿題は課されませんが、PISA学力では世界一になったこともあります。「学習量=学力」という方程式は必ずしも当てはまるわけではなさそうですね。「勉強って学校だけでするものではない。身の回りに学びは溢れている。」という言葉をフィンランドの先生は繰り返し話してくれます。

③ 中間・期末テストはない。

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フィンランドでは、日本の中学校にあるような定期考査は存在しません。代わりに、教科毎に単元テストが行われます。もちろん、日本のように順位や偏差値が出るのではなく、あくまでも定着度を確認するために行われています。なぜ、日本では、定期考査が行われるのでしょうか?もちろん、定期考査を行うことで、生徒の学びのモチベーションが上がる生徒もいますが、順位が出ることで学習意欲が下がる生徒も出てくるのは事実です。実際に、日本では、年齢が上がるにつれて、生徒の学習への自己肯定感は下がっている傾向があります。また学びの目的が、試験のためにすり替わっているのも、定期テストが大きく影響しています。フィンランドの先生は、「子どもたちは、社会の中で幸せに生きる方法を見つけるために学んでいる。」と話しています。

④ 固定担任制がない。

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フィンランドでは、必ずしも固定担任制が行われているわけではありません。もちろん、適宜小学校では担任制、中学校では教科担任制と担任制を掛け合わせたものを取り入れています。この制度は日本ととても似ています。しかし、この制度の中にも柔軟性があるのが、フィンランドの教育の特徴です。例えば、小学校では主要教科は学級担任が教えて、技能教科は、得意な先生が教える等、その学校にいる先生の専門性を見極めて、より専門性の高い先生が役割分担して教える工夫等が行われています。

これにより、担任の先生一人に負担が集中することが軽減され、生徒も一人の先生に頼ることがなくなり、教員の負担軽減と、生徒の自主性が育まれることに繋がっていました。

⑤ 職員会議は週に1回。

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フィンランドでは、職員会議は週に1回、1時間程度で行われています。では、普段の業務のやり取りはどのように行なっているのでしょうか?フィンランドでは、情報共有を全てオンライン上で一括管理して行われています。このアプリでは、教員間、教員-生徒間、教員-保護者間でメッセージのやり取りを行うことができます。これにより、先生同士の情報共有にかかる時間を大幅に削減し、その空いた時間を職員室でのゆったりとした対話の時間に使うことができていました。

⑥ 生徒主催の学校行事。

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フィンランドでも、日本と同じように年間を通じて多くの行事が行われています。例えば、スポーツ大会、ハローウィンパーティー、ペットの日、クリスマス会、修学旅行等多くの行事が行われていますが、これらの行事は、日本と同じような生徒会で企画が行われ、児童生徒が自治運営を行なっています。いわゆる日本の「成果発表」という魅せるための行事ではなく、生徒自身で企画することで、主体性を育んだり、生徒が楽しめる行事になっていました。これにより、教員が保護者と連携するのに時間がかかることがないので、行事は全て学校内で完結しているものが多いです。

⑦ 部活動はない。

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フィンランドでは、学校で部活動は行われていませんが、一人当たりのスポーツ人口は世界一の結果が出ています。子どもたちは、どこでスポーツをしているのでしょうか?子どもたちは、放課後に、地域の中にあるスポーツコミュニティーに無料で参加することができています。フィンランドでは、競技としてのスポーツから、生涯教育への以降が行われました。それによって、年齢を超えて、多くの世代が一緒にスポーツを楽しんでいる光景が地域の中で見られます。

⑧ 生徒自身で企画する修学旅行。

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フィンランドでも、修学旅行が行われますが、日本とは違うカタチで修学旅行が行われます。日本だと、学校が旅行会社と連携し、生徒は決められた旅行プランを楽しみます。お金も、殆どは保護者負担で行われることが多いです。では、フィンランドの修学旅行はどのようにして行われるのでしょうか?フィンランドの高校では、生徒主体で資金調達(日本でいうクラウドファンディング)から、旅行計画まで行われます。これこそ、今フィンランドの新カリキュラムに書かれているテーマ型の横断的な学びを行う授業になっています。詳しくはこちら。修学旅行の企画を通じて、子どもたちは多くのことを学んでいきます。

⑨ カリキュラムに対して意見交換を行う保護者会

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フィンランドの学校では、毎年新学期の最初に、カリキュラムに関して保護者と意見交換を行う機会があります。ここでは、殆ど全ての保護者が出席して、その年のカリキュラムに関して意見交換会が行われます。例えば、外国語教育に関して、英語教育のスタート時期に関する議論もここで行われます。保護者も学校の教育に当事者意識を持って関わる大きなきっかけになっています。

3. 最後に

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本日のブログでは、公立中学校長の改革者である麹町中学校・工藤勇一校長先生の著書『学校の「当たり前」をやめた』を参考にしながら、フィンランドの実践について紹介してきました。工藤先生とフィンランドの教育に携わる全ての人が話している共通の言葉があります。

(1)制度や仕組みは、時代とともに変えていく必要があること。教員の頭の中は、常に半分が従来の教育で、半分はこれからの教育について考えていること。
(2)改革を行うときは、対話を通して合意形成を図ることが大切であること。その際は最上位の目標である「子どもの幸せ」に繋がっているのかを考えることが大切である。
(3)学校は、子どもたちが「社会の中でよりよく生きていける」ように学ぶ場所である。教員は「生徒たちが主体的に学ぼうとする仕組み」を整えなければならない。教員の役割は、子どもの学びのモチベーションを高めること。

これらの改革は工藤先生やフィンランドだからできたのでしょうか?

私たちの役割は、気づいた人が、身の回りから、自分にできることから始めていくことではないでしょうか? 確かに、国全体の教育を大きく変えることは難しいかもしれません。しかし、私たちの目の前に、子どもたちがいるなら、目の前の子どもたちを幸せにするために何ができるかは、個人レベルで考えられることもあると思います。

 

是非、対話を通して一緒に学び合える仲間も募集しています。

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一人一人と向き合い、ここで繋がった仲間と学び合い、身の回りからアクションを起こしていけるようなコミュニティーを少しずつ作っていきたいと思っています。

 

いつも読んで頂きありがとうございます。

 

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