フィンランドの小学校が学級崩壊しない訳〜職員室のティール化〜
「フィンランドの小学校では学級崩壊が起きない?」
*フィンランドの職員室の風景です。
フィンランドの小学校では、殆ど学級崩壊はありません。 https://t.co/BNEa0RlENX
— ちかちゃん@フィンランド教育 (@tomofinedu) 2019年4月7日
本日のブログでは、このtweetの解説をまとめていきたいと思います。
このブログでは、「先生の力量」という視点ではなく、あくまでも「環境面」でまとめていきたいと思います。私は、日本でも学校の先生の働きやすい環境が整えることで、学級崩壊が起こりにくい環境はつくることは可能だと感じました。
*あくまでもフィンランドの人の視点でまとめていきます。一つの「ものさし」として、こんな考え方をしている国があるという視点で読んでいただけたらと思います。
フィンランドの政策では、
「働きやすい環境を整えることで、先生のモチベーションを高める。」
フィンランドの校長先生は
「校長先生の仕事は、第一に職員の働きやすい環境を整えること。」
いかに、「環境を整えることが大切か」を第一に置いているかが分かります。
フィンランドの小学校では、私が見てきた中では「学級崩壊」が起きません。
*厳密に言うと、起きる「前」に「対処」しているように感じます。
このTweetを読んだ時に、フィンランドの学校の環境と逆だと感じながら読みました。
「なぜ学級崩壊が起きないのか?」
本日も3つの視点でまとめて見たいと思います。
① 職員室のティール化
フィンランドの職員室は「ティール化」しているように感じます。
1)職員同士の関係がフラット
フィンランドの学校では、誰が校長先生で、担任の先生かが分からないくらいフラットに職員同士が働いています。職員室では常に「対話」が行われています。
基本的にフィンランドの教育システムでは、
国
↓裁量権
地方の教育委員会
↓裁量権
各学校(校長)
↓裁量権
学級担任
というように裁量権が学級担任にまでおりてきています。一人一人に裁量権を与えることで、教員のモチベーションを上げるのが国の政策のねらいです。
「学級担任に大きな裁量権があり、教員や保護者は不安ではないのか?」
実際にフィンランドの学校では、「これがフィンランドの教育!」と言い切れないくらい、学級によって教科書が違ったり、カリキュラムが違ったりと学級担任の特色も出ています。一人一人の担任の先生が自立しているようにみえます。これが実現しているのもフィンランドの学校が「ティール化」しているからだと感じます。
先ほども述べたように、フィンランドの学校では、「フラット」な関係を大切にしています。そもそも、学級担任と校長先生の仕事は明確に違うため、それぞれがプロ意識を持って働いており、学級担任は校長先生に、今年の方針を伝えます。校長先生はまるで学級担任のコンサルタントです。学級担任の良さを活かしながら、その先生に合った学級経営を一緒に見つけていくスタンスです。
2)協働
大きく幼少連携と学年間の連携についてまとめていきます。
・幼少連携について
今多くのフィンランドの学校はプレスクール(就学前教育)が小学校と併設しています。これにより、小学校の先生は入学前に「どんな児童が1年生に上がってくるのか」を把握することができます。更に、プレスクールの先生と小学校の先生は同じ職員室を使うので、日常的に情報共有を行うことができます。子どもたちも小学生と日常的に関わっているので、幼小でのギャップが少なく「小1プロブレム」というのが起きにくい環境が整っていました。
・学年間の連携について
一人で子どもを育てる認識ではなく、全教職員で子どもを育てる認識が学校全体にあります。
例えば・・・
・職員室では・・・自分のクラスの気にる子の相談が学年を超えて行われており、異学年の子どもの情報も日常的に共有されています。結果として、一人一人の子どもの特性を全教職員が理解しているので、子どもも安心して学校ですごすことができます。
・校長先生は・・・積極的に教室に入り、常に子どもの情報をキャッチしています。そして、授業中も担任の先生のサポートに日常的に入り、相談しやすい人間関係を構築していました。他にも、校長先生が技術などの全学年の児童の学習指導に関わることで、児童理解を大切にしていました。
② 2担任制
学級の環境にもよりますが、教室には常に2人以上の先生が配置されています。
1)敢えて複式学級の採用(全ての学校ではありません。)
1人の先生で1学年(20人の生徒)を見ることよりも、2人の先生で2学年(40人の生徒)を見ることを大切にしています。これにより、常に2つの視点でクラス全体を見れる体制にしていました。子どもにとっても、2人の先生に相談できる方が選択肢が増えて、相談しやすい環境が作られていました。
2)支援が必要な子どもがいれば、必要に応じて先生をTA等の先生を配置
新年度が始まる前に、起こりうる課題は想定して、問題が起きる前に教員の配置を行います。例えば、特別支援の生徒がクラスに1人いる場合と5人いる場合では、必要な先生の数も変わってきます。生徒の実態に応じて、予防的に先生を配置し、クラスが落ちついてきたら、徐々に先生を減らしていくようなシステムで動いていました。
③ 新学期の仕事量
日本と同じで、フィンランドでも新年度の先生は大忙しです。そこで、日本と同じように夏休みの後半(フィンランドの新年度は8月中旬スタート)は、新年度の準備のために学校で1週間かけて準備を行います。日本との大きな違いとして、10週間の夏休みでリフレッシュした後に新年度が始めるために、先生は新年度に切り替わる前に心理的にも体力的にもゆっくり休むことができます。また、長期休みの間に、次年度についてもゆっくり考えることができます。この先生の新年度前のゆとりが大切と話していました。
また実際に新年度が始まっても、先生は15時には家に帰宅します。フィンランドでは、先生の仕事は「学習指導」がメインになるので、新年度に極端に事務作業に追われることは日本程感じませんでした。
(私が日本で教員として働いていないので、どんな事務作業があるのか分からないのです、これから教員の事務作業については学んでいきます。)
+@新任の先生は?
最後に新任の先生についてまとめていきたいと思います。
私は、フィンランドで初年度の先生、教育実習生と話をしたことがあります。
「日本では、初任者の先生はめっちゃきついんだけど、フィンランドではどうなのか?」
もちろん大変だけど、フィンランドでは徐々に慣れていけるシステムがあると話してくれました。
例えば、いきなり学級担任を一人で持つのではなく、副担任のような形で最初は徐々に学校に慣れていく新人の先生もいるそうです。
本ブログをまとめます。
「なぜ、フィンランドの小学校では学級崩壊が起きないのか?」
① 学校がティール化している。
② 全教職員で1人の生徒を育てるという視点を持っている。
③ 適切な教員の配置と予防的な対処法。
④ 先生のゆとり。=事務作業が少なく、学習指導やクラス準備に専念できる。
(長期休み後に新年度が始める)
もちろん日本の学校の環境と異なることも多いので、日本の学校にそのまま取り入れることは難しいかもしれないです。フィンランドではこのように新年度を迎えていると、一つのレンズとして見ていただけたらと思い、まとめたところでした。
ここまで読んでいただき、ありがというございました。