フィンランドの学校に行こう!

フィンランドの教育を通して日本の教育を見つめ直す。

フィンランドの「プロジェクト学習」実践〜準備から発表までを密着〜

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「日本にもある総合的な学習はフィンランドにも存在しているのでしょうか?」
フィンランドでは、年に一回1週間規模のプロジェクト学習を行うことが学校で定められています。本日のブログでは、私が現地で1週間密着してきたフィンランドの小学校のプロジェクト学習についてまとめていきたいと思います。

1. プロジェクト概要

▼このプロジェクト学習の概要は以下の通りです。

◯ 期間:2017年10月15日から10月20日
◯ 学年:6学年(50名)
◯ テーマ:フィンランド独立100周年に向けて
◯ プロジェクトの概要:
今世界で活躍するフィンランドの会社を、世界で広げるためのプレゼンを作る。
◯ 課題:
・ ポスターの作成
iMovieでコマーシャルの作成
◯ 授業時数:
15時間(45分授業)
導入(計画):1時間→作成:2-12時間→プレゼン:13-15時間

 では、密着した1週間をこれから見ていきましょう!

2. プロジェクトの過程


月曜日(1日目):見通しを立てる
子どもたちは学校に備わっているタブレット、PCを使って調べ学習を行います。
フィンランドでは普段の授業から端末機器を用いた授業を行なっているので、子どもたちはとても慣れていました。
 
具体的に調べていたものは、その会社の歴史と広く普及している商品でした。
どうやったら他の国の人が興味を持ってくれるのかを、ターゲットを考えていました。
 

こちらはポスターモチーフです。絵の具を使って塗っています。グループによって何を使って作成するのかは自由です。これまでの図工で習って来た表現技法を思い出しながら作成していきます。

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まず1番最初は「ポスターの作成」です。子どもたちはグループで計画を立て、ポスターの下書きをします。

▼こちらがポスターの下書きです。

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下書きが終わると、作成開始です。

これはプロジェクターの投影機を画用紙に当て、光の上をなぞっていました。

投影機を上手く活用していました。 

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 こちらは、ポスターの一番メインに当たるものです。子どもたちは、何を使ってどのように作品を作っていくのかを、全て自分たちで考えます。この時、子どもたちは「前の図工では、こうやって色塗ったよ。」「この方がいいね。」このように、教師が介入するのではなく、子どもが主体となっていました。 

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 こちらのグループは、カラーセロハンを用いて作成しています。グループによって、使う教材が異っていました。

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火曜日(2日目):ポスター作成開始
グループによって進行が様々な状態から2日目が始まりました。
発表の日が伸びることはないので、子どもは、自分たちが立てた計画に責任を持ち、プロジェクトを進めていきます。子どもが先生に助けを必要とした時にだけ、先生は助けに入ります。基本的には、子ども同士で解決していました。
 
先生は子供たちに高度なスキルを教えていました。例えば、wordを使っている子どもに、ショートカットキーを教えていました。またある子どもには、ペイントを用いて画像のサイズを小さくしたり大きくしたりする方法を教えていました。
 
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 このグループは、ポスターに貼る文章をパソコンで打ち込んでいます。
最初は全て打ち込んでいた子どもも、ショートカットキーを使う便利さに驚いていました。
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 昨日と比べるてかなり仕上がって来ました。
グループ全体としてポスターの完成度が50パーセントでした。

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子どもたちに「計画通りに進んでいますか?」と尋ねると、「昨日は進んだけど今日は
忙しくて進まなかった。」と答えていました。あくまでも先生はサポート役です。
全体を見て、陰でサポートしていました。
水曜日(3日目):ポスターの仕上げ
ほとんどのグループがポスターの作成が終わりに近づいていました。
しかしグループによっては、ポスターをまだ書き始めていないところもあります。
ここまで来ると、グループによって進捗状況も大きく差が出て来ます。しかし先生は一声かけるだけで、子どもの学びを奪わないようにしています。とにかく、見守るスタンスです。このプロジェクト学習の目的は「上手にプレゼンをすることもだけど、プロジェクトを進める過程にもある。」と先生は話します。
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3日目を終えてムービー作成に入っているグループはありません。
ポスターの完成度は70パーセントでした。明日が最後の準備期間です。
 「果たしてムービー作成まで終わるのでしょうか?」
木曜日(4日目): 紹介映像作り
ほとんどのグループのポスターが完成しました。完成までのプロセスを見ていたので、この作品を作るまでの苦労がこの作品から見えてきます。

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マリメッコのポスターがとても可愛らしいです。A3の紙一杯に敷き詰めたマリメッコ
日本でも女性に人気があります。どのグループも文字1つ1つに工夫が見られます。
そして4日目ということで、全てのグループが動画作成に入りました。
子どもたちはまず絵コンテを作り、動画の構成を考えています。
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こちらがその絵コンテです。そして実際に撮影が開始しました。
撮影の仕方もこだわりがあり、思考を重ね、何度も撮り直しをしてました。
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そして素材を取り終わるといよいよ編集作業です。
子どもたちは「iMovie」使いこなせていました。
新カリキュラムで「iMovie」での動画作成が入っているみたいです。
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金曜日(5日目):プレゼン当日

いよいよプレゼンテーション当日です。

子供達に気持ちを聞いてみると、少し緊張しているみたいでした。!
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いよいよプレゼンテーション開始です。
こちらのグループはキシリトールについて発表しました。私自身キシリトールフィンランドで開発されたことは知りませんでした。
まずはポスターを用いてプレゼンを行います。
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 ポスターでの発表が終わると、作成したコマーシャルを流します。
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なかなかのハイクオリティです!今の世代は「デジタルネイティブ」です。
小さい頃からパソコン等を使っているので、大人より小学1年生の方が電子機器を上手に使っていることもしばしば起こりうると現場の先生は話します。
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 最後にグループで作成した「ポスター」を紹介します。 
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3. 考察・・・ 

フィンランドの教科横断型の授業を観察して感じたこと、学んだことを日本と比較しながらまとめていきます。

日本の「総合的な学習の時間」と比較して同じ点はこちらです。
①  プロジェクトの時間が15時間
②  子どもが「主体的」に学んでいる点
③  複数の教科を子どもが横断して活用している点。
 
日本のプロジェクトと異なる点はこちらです。
①  子どものICT活用スキル
②  1週間でまとめてプロジェクトを行う点
③  全ての学校で実施されている点
 
相違点はありますが、フィンランドの「プロジェクト学習」の目的は、日本の「総合学習」と似ていると感じました。
 
「子どもが主体」となって、グループで計画を立てて、1つのプロジェクトを行います。先生はあくまでもサポート役でした。
 
私がこれまでに日本の小学校で学んできた「総合学習
 ・ 川の環境
・ さつまいもを育てる学習
・ 昔の遊び
 
私は小学校を途中で転校しましたが、転校した先の学校では「総合学習」の記憶はないです。
学校によって実施されているかどうかが異なります。
中学校、高校でも総合学習でプロジェクトを行った記憶はありません。
 
国が定めても現場でその価値が本当にあることを理解されないと現場ではなかなか実施されません。日本でもフィンランドでも、総合的な学習の時間の実施内容はそれぞれの学校に委ねられています。
 
フィンランドの学校現場では、「総合学習」の価値は十分に理解されていて、どの学校でも計画を立て、実施していました。
 
Q:「どこから総合学習のアイデアは生まれるのか?」
A:「職員室の日常会話」「インターネット上」
 
休み時間は先生はコーヒーを飲んでゆっくり先生方と会話をしています。その対話の時間が沢山あるからこそアイデアが生まれ、目の前の子どもに合った「プロジェクト」が生まれていました。
日本の先生にも「ゆとり」が生まれると、色々な教材案が先生から出て来るんだろうな〜
 
ではではモイモイ!!