小規模校を活かしたフィンランド・オランダの個別最適化教育
「小規模校は、ポジティブな印象とネガティブな印象のどちらを受けますか?」
1. 背景
近年、フィンランドでは学校の統廃合が少しずつ進んでいますが、先生方はこれに対してネガティブなイメージを持っています。
「なぜ、小規模校の方がいいのでしょうか?」
小規模校の方が、子どもたち一人一人のことをより知れるから。
*オランダの教室風景「写真はサークル対話の様子」
フィンランドやオランダでは、全教職員で一人の子どもを育てるという認識の上で教育活動を行なっております。北欧の学校では、中に入ると伝わってくる安心感があります。子どもたちは、担任の先生以外にも気軽に相談することができて、先生方も、気になる子は教職員全員で共有し、皆んなで子どもを育てる意識が学校に安心感を生み出しています。
先生も1人で抱え込まない、子どもも相談しやすい大人が側にいる環境
小規模校では、より家族のような安心感のある雰囲気を作りやすいメリットがあると先生と生徒の両方が話します。
フィンランドの学校の規模感は、日本と比較すると小規模校(全校児童約100人)の学校が多いです。また、クラスは、意図的に複式学級が採用されている学校も多くあります。
日本で、複式学級は先生の負担が大きくなったり、子どもたちの学びの時間が半分になるというように、マイナスなイメージがあると思うのですが、その一方でフィンランドでは、小規模校を活かした教育実践を行なっています。
小規模校で複式学級をマイナスのイメージで捉える日本と、ポジティブなイメージで捉え、学校教育に取り入れている北欧諸国(フィンランド、オランダ)。
また、学力を比較してみると、小規模校であるオランダやフィンランドは、世界で最も子どもの幸福度の高く、PISAの学力調査でも高い成果を上げています。その一方で、日本の離島僻地の小規模校の教育は、全国学力調査の結果を見ても、順位は下がっている傾向があります。
ここに、これからの日本の小規模校の教育の魅力化を測るヒントがあるのではないかと思い、本日のブログにまとめていきたいと思います。
2. 小規模校のメリットを活かした教育実践例
では、実際にフィンランドやオランダでは、小規模校の特色を活かしてどのように授業を行なっているんでしょうか?
① フィンランドの例
・複式学級の導入
こちらの小学校では、1学年が約20名の規模感(全校児童140名)の小学校になります。しかし、意図的に2学年構成の学級を構成しています。
例)5.6A(5年10名+6年10名)と5.6B(5年10名+6年10名)
なぜ、このようなクラス編成にしているのかを校長先生に尋ねてみました。
1 ) 子ども同士の学び合い学習を自然に促すため
2 ) 異年齢集団で編成することで、コミュニケーションや人間関係に幅が生まれる
3 ) 先生1人への負担の偏りを減らすため
では、一つ一つ見ていきましょう。
1 ) 子ども同士の学び合い学習を自然に促すため
異学年で学級集団を編成することで、自然と上学年が下学年の友達に教え合う現象が起きます。また、子ども同士の学び合いが定着してくると、今度は、年齢に関係なく学び合いの関係性が育まれていきます。子どもたちは、一人一人が好きなことや得意なことを持っています。子ども同士で学び合いが生まれることで、先生にゆとりが生まれ、より一人一人のニーズに合わせたサポートができるメリットを話してくれました。
2 ) 異年齢集団で編成することで、コミュニケーションや人間関係に幅が生まれる
異年齢学習を取り入れることで、子どもの孤立やいじめが少なくなる成果も出ていると話をしてくれました。
「なぜ、単一学年から異年齢学年に変えることで、いじめが少なくなるのでしょうか?」
日本では、いわゆる年齢の違いによる圧力が強いように感じます。先輩・後輩文化も日本の1つの特徴だと思っています。異年齢のクラス配置にすることで、自然と子ども同士の学び合いが生まれることで、年齢に関係なく、相手を尊重する心が育まれていきます。これにより、子ども同士のコミュニケーションの幅が生まれ、一人一人の居心地の良い空間(ストレスの少ない空間)を作ることが、いじめを減らすことに繋がっていました。
3 ) 先生1人への負担の偏りを減らすため
日本では、1人で1学級を見ますが、フィンランドでは、2人で2学級を見ます。
2人で2学級を見ることで、2人の先生の視点で、子どもたちを見ることができることに加え、子どもも2人の先生の中でも、話しやすい・信頼できる先生に頼ることができます。また、複式学級に編成することで、支援が必要な子どもをバランスよく分けたり、上学年の子どもが支援の必要な子どものサポートをしてくれるので、クラスのリソースを最大限に活用して、子ども一人ひとりの学びをサポートできる体制が生まれていました。
・一人一人に合わせた教育環境作り
1 ) 子ども同士の学び合い学習を自然に促すため
2 ) 異年齢集団で編成することで、コミュニケーションや人間関係に幅が生まれる
3 ) 先生1人への負担の偏りを減らすため
①でまとめた、この3つが最終的に「一人一人に合わせた環境づくり」に繋がっていました。また、人数が少ない小規模校では、集団授業だけではなく、バランスよく個別での指導も組み合わせることで、学びの効果を最大化していました。
人数が少なくなることで、子ども同士の多様な学び合いが保証されないというマイナスな面もありますが、それ以上に少人数であるメリットを活かした「一人一人に合わせた教育環境の実現」等の魅力化に発想を転換することで、よりよくなる可能性を感じています。
② オランダのイエナプラン教育の例
ここからは、イエナプランという教育法を採用して、子どもの幸福度が世界一になったオランダの取り組みについて紹介したいと思います。
もし、イエナプランについて初めて聞いた人、詳しくイエナプランについて知りたい方は、こちらのサイトをご覧下さい。
▼おすすめ動画はこちらです
教育専門家の尾木ママが視察に行ったVTRになります。
▼合わせてこちらの動画もチェックして欲しいです!
オランダのイエナプラン教育第一人者であるリヒテルズ直子さんがまとめたものです。
オススメの著書はこちらです。
オランダ・イエナプラン教育DVD「明日の学校に向かって」リヒテルズ直子 JENA PLAN
ここからは、私が実際に見てきたものも合わせてご紹介していきたいと思います。
・個別学習
オランダのイエナプラン教育では、自由進路学習が取り入れられています。先生は、週毎に生徒に仕事(タスク)を渡します。そして、生徒は、自分で責任を持って、1週間の計画を立て、学習を進めていくことになります。この計画書の中には、自己評価も含まれています。ここでポイントとなるのが、生徒はずっと個別での学習を行なっているのでは無いという点です。
イエナプラン校では、基本的に、(サークル)対話-遊び-仕事(学習)-催し(行事や祝い)という4つのパターンの活動を循環させる時間割を作っています。
イエナプラン 教育では、1日の生活の中で、4つのサイクルを回しながら、個別学習や共同学習、プロジェクト学習をバランスよく取り入れて学習を行なっています。私は、日本の公立学校には、既に充実した遊びの時間と催し(行事)は十分にあると思います。よりよくしていける点として、全体での一斉授業から、子ども同士での対話の時間や、学び合いの学習をもっと適宜取り入れることで、イエナプランという言葉を使わなくても、日本の学校教育をよりよくしていく可能性は沢山あると思います。
そこで今、日本で実践されている子ども同士の学び合いや自由進路学習に関するオススメの本を紹介します。
▼オススメの本 ①「けテぶれ宿題革命」リンクはこちら
▼オススメの本 ②「クラスと学校が幸せになる『学び合い』入門」リンクはこちら
・異年齢集団における学び合い学習
この写真をよく見てほしいと思います。
「この写真は、何をしている様子だと思いますか?」
この写真では、上学年の子が下学年の子に勉強を教えている様子です。
このように、イエナプラン教育では、3学年の異年齢集団で構成されています。
3つの年齢のグループ
(4-6歳児グループ、6-9歳児グループ、9-12歳児グループ)
これにより、子どもたちは3年間の中で、年少・年中・年長の3つの立場を3回経験しながら小学校を卒業します。これにより、同年齢集団に起こりやすい、できる、できないのモノサシから生まれる、子どもの自己肯定感の低下やイジメを防ぐことができるだけでなく、年齢に関係なく相手を尊重した上での、「人を育てる」リーダーシップを育む効果もあります。実際に、オランダの学校の教室には、共通する安心感が漂っていました。
もし、学習をしていて分からない問題があれば、どのようにしているのか?
この時に、助けてくれるのが、こちらのサイコロになります。
赤:集中しているから、今助けられないよ
黄色:今は友達を助けているところだよ
青:今、助けられるよ
?:質問があるよ
もちろん、このサイコロは高学年になるにつれて、使う生徒は減ってきます。これは、自然と助けを求めることや、友達を助けることができる子どもに育っていることを表しています。もし、日本で個別学習を取り入れることになったら、議論になることは、子どもだけで、対話的で深い学びが保障されるのかという問いだと思います。
ここで、オランダの先生の言葉を借りたいと思います。
「子どもたちにとっての、深い学びって何でしょうか?」
子どもにとっての深い学びは、必ずしも私たち大人が求める学びとは限らないと思います。大人が、頑張って深い学びに運ぶよりも、子どもが、知りたいことに向かって、自ら学びに向かい、分からない問いにぶつかれば、自分で調べたり、友達に聞きながら学びを進めていく。これも、1つの子どもにとっての深い学びではないでしょうか?
日本の複式学級でも、明日から取り入れられそうな授業のあり方の一つになるのではないでしょうか?
3. 最後に
① 日本での実践例
ここまで、フィンランドやオランダでの教育実践例をまとめてきましたが、何だか日本でも実践できそうな気持ちに少しでもなれたのではないかと思います。
実際に日本でも、近年長野県に、イエナプランを取り入れた小学校(コチラ)が作られたり、公立の学校の中で、学び合いの学習を実践している先生が増えてきています。
是非、ネット上でも検索して明日からのあなたのクラスの中での実践に使って頂けたらと嬉しいです。
② これからの離島・僻地の教育の可能性
私は、来年度の4月から沖永良部島に移住して、島の教育環境を活かして、魅力ある教育を現地の方や外部のリソース(TFJやLightful等)を最大限に活用して、行なっていきたいと思っています。
▼沖永良部島の現状
(マイナス面)
・若者の減少による、急激な人口現象。
・児童生徒数の減少に伴い、閉校になる可能性のある学校もある。
・小規模校により複式学級を採用している学級が多い。(プラス面?)
(プラス面)
・福祉のサービスが充実しており、支援が必要な子(療育手帳を持っている児童生徒)は無料で、地域の福祉のサービス(放課後等デイサービス、フリースクール)を利用することができる。
・子どもの放課後の居場所の充実。地域の中に、子どもが安心して放課後に過ごせる場所が多数存在している。
・自然溢れる環境の中で、自然を活かした教育が行える
・外部の受け入れに関して寛容
・教育という文脈で地域をよりよくしていきたい大人が集まっている
沖永良部という島に、大きな可能性を感じています。海外の教育実践から学んだことを、一つ一つ丁寧に現場に入りながら、落とし込んでいけたらと思っています。そのためには、様々な形で、多くの人の支えが必要になります。これまでに出会った人、繋がった人と一緒に対話を通して作っていけたらと思っています。
そもそも、私が教育に興味を持ったのも、離島の教育を知ったことがきっかけになりました。今こそ、離島の教育環境は、少しずつよりよくなっているのを感じますが、4年前は、1つのゲームに大人数の子どもが集まる光景や、お昼ご飯の時間に、手に100円を持って、十分なご飯を食べられていない子どもたちの姿を見たときには、生まれた環境(家庭、地理的な環境)で、受けられる教育の機会に差が生まれることに違和感を感じました。
環境を変えるには、少しのインパクトは必要になります。私は、今Teach For Japanの活動理念に共感しています。詳細はコチラ。
「すべての子どもが、その子にとって素晴らしい教育を受けることができる世界の実現を目指します。」
この理念は、まさに今の沖永良部の課題解決に直結すると思います。今、学生の中でも、離島僻地の教育に目を向けて研究している学生や、実際にそこで働きたいと感じている学生は多くいます。
受け入れられる環境と、その人を活かして新しい教育を一緒に作っていくチームができることで、何か変化が起きるのではないかなと思っています。
これからの時代は、どれだけ人を共感させ、巻き込めるのかが重要になってくると思います。自分一人ではなく、発信して、実際に自分がアクションを起こして、日本の現場でも動いていくことが楽しみです。
本日のブログでは、「小規模校を活かしたフィンランド・オランダの教育」をテーマに、日本の離島僻地の教育環境で実践できそうな例、そして、私の4月以降のアクションについて簡単にまとめて見ました。
ここまで読んで頂き有難うございました。
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