フィンランドの学校に行こう!

フィンランドの教育を通して日本の教育を見つめ直す。

海外に''不登校''という概念は存在しない?

「学校は何のためにあるのか?」

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*写真はフィンランドの子供達の授業風景です。

フィンランドでは、ソファに座って学ぶ子どももいれば、床に座って学んでいる子どもたちもいます。「どうやったら自分は集中できるのか?」子ども自身で試行錯誤をしながら、学ぶことで、リラックスして学習に取り組むことができています。

「このように、リラックスした環境で一人一人に合った学び方が尊重されているフィンランドやオランダの教育現場では、不登校という概念そのものは存在するのでしょうか?」

私は、これまでにフィンランドやオランダの学校現場を訪れて、多くの先生や保護者、生徒と話をしてきました。日本の不登校支援の現状を、子どもの幸福度が高いオランダとフィンランドの事例と比較しながら、これからの不登校支援の在り方について本ブログではまとめていきたいと思います。

1. フィンランド不登校支援のあり方について

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Q:「フィンランドには不登校の子どもはいるのか?」

A:「学校に通えなくなる子どもはいます。」

Q:「どういった子が不登校になるのですか?」

A:「移民してきた子や、難民として受け入れられて、言語や文化に慣れずに、学校に通えない子が多いですが、フィンランド国籍の子でも学校に通いたくないと感じている子はいます。」

Q:「では、どのように支援をしているのか?」

A:「色々な形で不登校の子どものサポートを行っています。」(日本と同じ)

そもそも子どもや教員に問題があるという考えではなく、その子に合った環境を整えることで学びの機会を確保するという考え方を大切にしています。その子を学校に適応させる(適応指導教室)というのではなく、その子に合う環境を学校が整えるという考え方です。また、不登校になってから対処するというよりは、その子が感じる違和感を早い段階で把握し、予防的に対処していきます。具体例を挙げて説明をしていきます。

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事例① 勉強が分からなくなり、授業中に集中できない子どもがいる事例

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対処方法は、子どもによって異なりますが、集団での指導から個別の指導一時的に移行します。分からないことを放っておくのではなく、低学年の段階から個別指導を取り入れて、公立学校の中で丁寧に対応して行きます。主にサポートするのは、TA(ティーチングアシスタント)の先生です。TAになるためには、研修もあり、校長先生の裁量で学校の実態に合わせてTAを雇用して学校現場に入って子どもをサポートして行きます。

日本で取り入れるなら???

今コミュニティースクールが増えてきています。大阪にある大空小学校では、地域で子どもを育てています。また、私が住んでいる鹿児島県でも学校支援ボランティアで大学生や地域の方が公立の学校現場に入り、子どもの支援を行っています。これから先生を志す学生がTAとして学校現場に入ることで、現場の先生は業務量が減り、学生は先生のリアルな働き方を知ることで、現場に入った時のギャップが小さくなると思います。お互いがプラスになるように、TAの導入が進んでいけたらと思います。 

事例② 集団の環境が合わない子ども(中学生)の事例

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中学校に上がり、集団の環境が合わないと感じる子どもは、ある一定数出てきます。見極めが難しいですが、対応の一つとして、一時的に学校内にある「少人数学級(詳細は事例③)」に通います。(通級のような場所)週の中で3日は通常学級で授業を受け、2日は少人数学級で学ぶという選択を生徒自身で選択することができます。もちろん専門のカウンセラーと一緒に相談して決定します。

フィンランドでは、「環境に合わない子が悪いのではなく、周りの環境を整えてあげる事で、その子も自分たちと同じように学べる」という考え方が子どもにも理解されているように感じました。

→日本で取り入れるなら???

日本で通級に通う事は、「自分は周りと違う」という感覚をどうしても持ってしまいます。もし、今日本の中で増えてきている「フリースクール」を学校が「出席」と認めてくれれば、子どもは自分に合う学びの場を選択できるようになります。学校ではないので、子どもも周りの目を気にせずに、安心して通うことができます。週に2日はフリースクールで学び、3日は公立の学校で学ぶという柔軟な学び「子どもにとっての余白」のある学びが広がったらいいなと思っています。

事例③ 学校の中にある不登校の子どもを支援する少人数学級の事例

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:先生が大切にしていること

「まずは、ここに来てくれていることを認めること。」

「その子の出来ている部分に目を向けて、言葉にして認めてあげること。」

「その子に合わせた学習環境を整えていること。」 

:教材の設定方法

① テストを受ける

② 習熟度を元に、相談を元に教科書の決定

ここでの、ポイントはその子に合わせた教科書があるという点です。また、不登校も特別なニーズのある子どもの支援ということが認められており、学年が違う教科書を用いても出席が認められ、また、もし義務教育の間に学びきれなかった場合は、10年生という制度の中で学び直しを選択することもできます。

:子どもたちの実際の声

A:私は、集団の中にいることにストレスを感じてしまうから、ここでは少人数の環境で学べるから、今は毎日通えているよ。

B:私は、シリアから移民して来て、最初はフィンランド語が話せなかったらから、クラスで学ぶことが出来なかったけど、今は個別で学習を行い、話せるようになったので彼女も出来て、学校も毎日通えているよ。

このように、フィンランドでは、公立の学校現場の中に専門的な先生を配置することで誰もが安心して通える空間を作っていました。日本でいう適応指導教室が、もっと自然に学校内にあって、いつでも安心して通える空間になっていました。大人が一人一人の個性を尊重しているからこそ、子どももお互いのことを尊重できるようになっていました。

事例④ 地域の中にある空間が子どもの居場所になっている事例

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ユースセンターでは、子ども達にとって、本当に心休まる場所をつくる空間づくりを大切にしていました。

フィンランド全土にあるユースセンターってどんな場所?

中学生から30歳以下の学生が無料で通うことのできるリラックス出来る空間です。ここでは、ユースワーカーが勤めており、子どもにとっては、何でも相談できるお兄さん・お姉さんの存在がサポートしています。

では、具体的にこのユースセンターが担っている役割とはどのような役割があるのでしょうか?

役割 Ⅰ:実際に学校を訪れ、気になる子に声をかける役割

ユースセンターのスタッフは、コーヒーとパンと共に、毎月学校現場に来て、ソファーに座って生徒達とフラットに楽しそうに話をしています。この時間が実は、生徒にとっても大事な時間で、「居場所があるよ〜」と情報だけが入っても、行きずらいと思います。実際にユースワーカーが学校現場に来てくれることで、そこに通っている子どもたちとスタッフの方が話している姿を見て、一言「遊びに来なよ〜」と声をかけてくれるだけで、行きやすくなる雰囲気が作られていました。また、ユースセンターでは、学校での悩みも気兼ねなく話せるので、学校で会った時に、「最近どう〜?」と声をかけることで、「心の居場所」にもなっていました。

このようにフィンランドでは、不登校の子どもに対して居場所を提供するのではなく、第三の居場所が必要な子どもに、予防的に居場所となる空間づくりを大切にしていました。

対処的か予防的に対応するのか、どちらがコストがかかり、どちらが子どものハピネスに繋がるのか?

フィンランドのユースセンターの取り組みから学べることもありそうです。

:施設紹介

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こちらが、ユースセンターの中の雰囲気です。ユースセンターの中にあるもの。

・キッチン(自由に料理ができる)

ボードゲーム(カードゲーム)

・卓球台

・テレビゲーム(大画面)

・ビリヤード 

ユースセンターは、まるで家と学校を融合したような雰囲気になっています。このユースセンターに置いてあるものも、子どもと話し合いながら決めていきます。なので、この空間は、子どもたちがリラックスできて、楽しめる空間づくりが最優先されていました。また、このユースセンターでは面白いイベントも数多く行われています。

▼面白いイベント

「朝までオールしようイベントしよう!」

中学生から高校生までが朝までオールするこちらのイベント。面白いのが、皆んなで何かをするというイベントは組まれていませんでした。ピザを各自で作ったり、各々が好きなことをして過ごしたり、周りを気にせず自分の好きなことをして朝まで過ごしました。30人近くでオールしたイベントは面白かったです。

:運営方法

ユースセンターは、プレイパークと同じで、子どもたちは無料で利用することができます。行政が管轄で運営されています。でも、日本と異なるのは、行政が行うのは資金面のみで、運営方法やイベントの内容等はそこで働くユースワーカーの人が決めることができます。なので、そこに集まる子どもたちの願いが直接反映されていて、子どもたちにとって居心地のいい空間が作られていました。予算に関してなのですが、子どもが来た日数に応じて、予算が配分されており、毎日のおやつが無料で食べれる、イベントを行う予算は付いていました。

このユースセンターのシステムは、今の日本に必要な居場所に感じました。日本では、今不登校児童が全国に14万人存在しています。この14万を受け入れるフリースクールもなければ、フリースクールに高い授業を払える家庭も多くありません。また、フリースクールに通っても、出席が認められない現状も多くあります。

▼ 日本の環境

・学校以外の学びの場が認められていない現状(出席扱いにならない)

不登校の子ども(14万人)の対応が学校現場で対応が難しい

フリースクールに国から予算が下りない現状

▼ 日本の環境だからこそできること

学校と合わない子ども(不登校)が今日本に沢山いて、学校以外の学びの場が認められていない現状があります。だからこそ、予防的に子どもたちの居場所を地域の中に作り、学校外に居場所を作る価値はあると思います。

 

まだまだ事例はたくさんありますが、フィンランドでは、そもそも学校という環境に合わない子どもが悪いという考え方ではなく、その子にあった環境を整えることを大切にしています。そして、もし子どもが学校という環境に合わない場合は、公立の学校にいる心理カウンセラーや特別支援の先生が外部の機関と連携を取ります。これが出来るのも、親が学校を「信頼」しているからです。もちろん、フィンランドの学校では全ての問題が解決されているわけではないですが、学べることもあります。

2. オランダの不登校支援のあり方について

 

 

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私は、オランダの学校と家庭を訪れた時に、次の質問を「日本でいう不登校の子どもをもつお母さん」に投げかけてみました。

前提:オランダは究極の学校選択制をとっています。

Q:「もし、自分の子どもが学校に行かなくなったらどうしますか?」

A:「その子に合った学校を探すわ。或いは一定期間は家で教えるかな。」

Q:「そもそもオランダには不登校という考え方はあるのか?」

A:「日本でいう不登校という考え方とはちょっと違うかな。」

Q:「どういう意味でしょうか?」

A:「学校に行かなくなったのは、うちの子どもはこの学校と合わなかっただけで、この子にあった場所を探すわ。そしたら学校にまた通えるようになるでしょ。」

では、いくつかの事例を見ていきましょう。

事例① 学校に行きたくない子どもがいる事例

f:id:hamu-cute120:20190406191159p:plainこの家庭の子どもは、週に3日はA SCHOOL、週に2日はB SCHOOLというように2つの学校に通っていました。話を聞いてみると、この子はIQが高く、集団よりは個別での指導で伸びるとお母さんは話します。でも、将来自立して行きていくためにも、集団の中でも生活する力は大切。結果として、週に3日は、集団の中で学ぶA SCHOOL、週に2日は個別指導のB SCHOOLに通う選択肢をとっていました。

これはあくまでも1つの事例ですが、子どもが学ぶ環境を親が選択するのはチャレンジングにも感じました。親の教育への知識や関心で子どもの学力が決まってしまうリスクも感じました。しかし、選択制となった事で、教育熱心な親も多いです。その様子は学校の送り迎えにも現れます。ほとんどの親が子どもの学校の送り迎えを行っています。また、学校の中にボランティアで入る親も多い特徴がありました。

学校を選択することで、その子にあった学習環境を整えるオランダの学校、そして不登校という考え方はなく、その子に合った学習環境を整えるという考え方。やはり、環境を整えるという考え方はフィンランドもオランダも共通していると感じました。

3. これからの日本の不登校支援のあり方について

 

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最後に日本の不登校支援についてまとめていきます。

Q:「日本の不登校児童は何人いるのか?」

A:「約14万人。」 

Q:「どのように不登校支援をしてるのか?」

A:「適応指導教室フリースクールに通う子も増えてきています。」

Q:「実際にこのような機関を利用しているのは、全体の何%程なのか?」

A:「約10%」

Q:「なぜ、利用しないのか?」

A:「自分の子どもを不登校=良くないと認めたくない。フリースクールに通うには授業料が高すぎる。」

また、フリースクールに通っても、出席を認める基準を、なかなか満たせなかったりする等で、次の進学に影響が出てしまうので、頑張って子どもを公立校に通わせようとする考えが根付いています。

今の日本の教育システムに疑問を持っている方も少しずつ増えてきていると思います。「学校以外の場所(=フリースクール)として私たちにできることは何でしょうか?」

 

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これまでは、学びの場が学校しか認められていなかったので、学校と合わなければずっと家に引きこもって生活をしていました。

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しかし、日本でも教育機会確保法が整備されて、少しずつ学びの選択肢が広がってきています。もし、学校が柔軟に学びの場を学校外でも認められるようになる...

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他にも、適応指導教室がこれからうまく機能していく可能性もあります。そもそもこの適応指導教室という名前も、不登校と同じようにネガティブな印象を与えます。「学校という環境に合わなかった子どもを適応させ、指導していく教室。」ここに通いたいと思う子どもも全員ではないと思います。この適応指導教室も、ネガティブなイメージから、ポジティブなイメージに変われば、その子に合わせた教育が受けられるイメージが広がり、学びの場も広がりそうです。

このように、これまで「学びの場=学校」つまり、「学校に行けないこと=良くない」という考え方が「学びの場=学校外もある」つまり、「学校に行けない→その子に合った学びの場を探す」という考え方が広がって行けたらと思います。フリースクールが、学校、子ども、保護者をハッピーにできる場に慣れたらと思います。

最後に伝えたいことは、

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本日は、日本で課題となっている不登校支援のあり方についてまとめてみました。

日本は、もう少し、学びの幅を広げることで、実際に不登校の子どもを支援したい方が支援の方向性を見つけやすくなったり、それによって学校の先生の負担も少なくなり、自分に合った環境を見つけられる子どもが増えてくるのではないでしょうか?

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

モイモイ!!!

 

PS.

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