自閉症の息子を持つ、フィンランドの特別支援の先生から学ぶ「家庭教育」の在り方
自閉症の息子を持つ、フィンランドの特別支援の先生から学ぶ「家庭教育」の在り方
本日は、前回お伝えしたフィンランドの「インクルーシブ教育」の要となっている
特別支援の先生の家庭教育をシェアしていきたいと思います。
こちらが前回書いたフィンランドのインクルーシブ教育について、
学校現場のリアルをまとめた記事になります。
educationxfinland.hatenablog.com
(タイトル)
1. 信頼の厚い特別支援教育の専門家
2. 自閉症の子を持つ先生の家庭教育
① 背景
② 家庭教育で大切にしていること
1) 子どものペースを尊重する
2) 色んな機会を与えて、好きなことを見つけ、伸ばす教育。
3) 親子の信頼関係と兄弟愛
1. 信頼の厚い特別支援教育の専門家
フィンランドの学校現場には、必ず特別支援の先生が配置されています。配置の方法も
1つの学校に1人というのではなく、田舎の学校では1週間に1回、ニーズが必要な子が
多い学校には毎日というように、ニーズに合わせて配置されています。
そして、日本との大きな違いは、特別支援の先生が現場で「専門家としての信頼」
があるということです。彼らは、特別支援の先生として修士号を取得しています。
日本だと、現場には特別支援の専門の先生はいません。日本の特別支援学校で勤めて
いる先生がフィンランドでは現場に専門家として入ってきているイメージです。
まさにフィンランドの職員室は「チーム学校」です。現場にいる教員一人一人に専門的
な知識があり、明確に役割分担がされていました。
特別支援の先生の現場での役割は、日本の特別支援の先生と同じ役割を担っていまし
た。個別の支援計画の作成、医療機関や専門機関との連携、ニーズが必要な子の対応の
相談等を行っていました。
フィンランドでは
「柔軟性」
「現場のニーズに合わせた資源の分配」
「教育専門家としての信頼性」
が根付いていることがここでも分かります。
2. 自閉症の子を持つ先生の家庭教育
① 背景
*フィンランドで2ヶ月ぶりに太陽が顔を出した日の出来事
特別支援の先生の家族と初めてリアルな1日を過ごす機会がありました。
そして、この日は先生の教育観から沢山学ぶことになります。
ここから下の文章は、実際に私が1年前に先生の教育方法から感じたことを記録
したものです。
特別支援の先生の家族には、ダウン症の男の子(Aapo)がいます。
先生は特別支援の先生なので、ダウン症についてとても理解しています。
私が彼(Aapo)と出会うのはこの日が3回目でした。
最初は彼と心の距離を感じましたが、会う回数を重ねる中で、次第に距離は縮まってい
くのを感じました。
この日にAapoは家族にこのように言いました。
『私(Tomo)はkajanniの学校には来ないの?自分の通う学校に来て欲しい。』
とても悲しそうに言っていました。
先生によると、Aapoにとって外国の人とここまで「信頼関係」が築けたのは初めての
ようです。彼にとって私は、初めて向き合った外国人。フィンランド語を話すことも
難しい彼が、コミュニケーションを取れるようになりました。
母でもある先生は私がフィンランドにいるこの機会に
「娘、息子に外国の人と関わる経験をさせたい。」願いを話してくれました。
ここで先生が大事にしている教育観をエピソードと共に紹介していきます。
② 家庭教育で大切にしていること
1)子どものペースを尊重する
先生には1人の娘と2人の息子がいました。
ここでは、娘さんのエピソードを紹介します。
娘さん(Anni)は13歳で、現在小学6年生です。
最初は一言も私と話しませんでしたが、少しずつ、私とも話せるようになりました。
先生によると、Anniは小さい時から人や動物と信頼関係を築くのに時間がかかっていた
そうです。だから、私と関わるときも、無理に近づけようとしないで、娘に合わせた
スモールステップで関わる時間を増やしていました。
この日に先生が私に話した言葉で印象的だったこと。
「今日はAnniが心を開いてくれたらいいね。」
「もしAnniが一緒にスキーをしたいと言ったら、一緒にスキーに行こう。」
子供のことをしっかりと理解している言葉かけだなと思いました。
子どものペースを尊重しながら、いろんな機会を子どもに与えている先生の言葉かけ
が印象的でした。
2)色んな機会を与え、好きなことを伸ばす教育。
先生は、子どもの「好きなこと」を尊重していました。
兄弟であっても1人1人興味関心は異なります。
1番上のお兄ちゃん(Eetu)は現在高校3年生で、ダウンヒルスキーで国内で優勝する優秀な選手でした。
2番目の静かなお姉ちゃん(Anni)はペットの犬をとても愛しています。
ペットを買いたいというAnniの気持ちを尊重しつつ、しっかり飼うことに責任を持つ
ことを約束して飼い始めました。真冬のマイナス20度の中でも毎日の散歩はもちろん、
1日でも早く犬に会うために、休みの日も電車で通っていました。
3番目のダウン症の男の子(Aapo)は中学2年生です。
ドラムを演奏したり、犬のしつけをしたり、多くの好きなことを楽しんでいます。
先生が、子どもに色んな機会を与えて、好きなことを見つけ、好きなことを「伸ばす」
教育をしていることが子どもの姿から伝わってきました。
3)親子の信頼関係と兄弟愛
親子の信頼関係をものすごく大切にしていることが上の2つのエピソードからも
伝わってきたと思います。
ここでは、兄弟愛をとても感じたエピソードを紹介します。
弟(Aapo)はお兄ちゃん(Eetu)のことが本当に大好きで、とても信頼しています。
この日は、一緒にレストランでお昼ご飯を食べました。
お兄ちゃんは弟のピザが届くと、最初だけ食べやすいように切ってあげていました。
そんな優しいお兄ちゃんにべったりな弟ですが、お兄ちゃんは嫌な顔を1つせず
寧ろ嬉しそうです。
これだけ兄弟のことを大切にしている、理解しているお兄ちゃんが世の中にいるんだな
と驚きました。
先生はいつも子供達の事を褒めています。
「叱ること」よりも「褒めること」を大切にしていて、心から褒めています。
恐らく小さい頃からずっと褒めて育てられてきたのだと思います。
褒められることに恥ずかしいと感じず純粋に笑顔を見せる子供達。
どんなに小さいことでも心の底から褒めます。
例えばココアを作るように頼んで、美味しかった時。
まさにこの言葉のような教育。親子の信頼関係も深いのも納得できました。
こんな教育をしたい。
大切なことを沢山感じた1日でした。
それではへいへい!!!