世界一が多いフィンランド!〜学力世界一を支える3つのモノ〜
フィンランドの学力を支える3つの秘訣に迫る!!
1. コーヒーの消費量世界一
フィンランドでは、一人当たりのコーヒーの消費量は世界一です。では、実際はどうなのでしょうか?私が現場で見てきた実態をまとめて見たいと思います(^^)
① フィンランドの先生にとってのコーヒーとは?
フィンランドの先生にとってコーヒーとは、生活において「欠かせないもの」の1つ
です。例えば、フィンランドの職員室には、必ずコーヒーマシーンがあります。30校以
上の学校を視察してきましたがコーヒーマシーンが無い学校がありませんでした。
コーヒーに関する印象的なエピソードを2つ紹介します。
② コーヒーに関するエピソード
・ 職員室の名前が「kahavi fuone」
日本語で「コーヒーの部屋」です。フィンランドの学校には日本のようなデスクが
並ぶ職員室はありません。「職員室=対話をする場、リラックスする場」です。休み
時間になると、先生方は職員室に集まり、コーヒーを飲んで会話を始めます。クラスの
相談事からプライベートの事まで何でも話します。何とこの会話に校長先生も一緒に
入って参加しています。そんな校長先生に学校運営をする際に1番大切にしている事を
聞いてみました。
校長先生
「一番大切にしているのは、職員と対等な立場にいる事。その為には、私も積極的に職員室の中で多くの時間を過ごします。そして、職員の方とは、学校のことだけでなく、家族やプライベートなことも、お互いに話すようにしています。
学校が先生にとって居心地の良い環境にすることで、先生にゆとりが生まれたり、先生同士での共同が生まれたりします。これらは、最終的には子どもたちの為になる。だから職員室では、仕事以外のこともお互いに話すようにしています。」
フィンランドの職員室の風景が浮かんできたと思います。
日本で職員室に名前をつけると「working room」になりそうですね。職員室の名前
を変えれば、リラックスした雰囲気が日本でも作れるかもしれないですね^^
・ 休み時間は何があってもコーヒーを一杯は飲んでいく先生達
学校の先生となると、休み時間に個別指導が入ったり、生徒からの相談があったり
します。すると、休み時間が無くなることもフィンランドでもしばしばあります。
日本だと、先生は休み時間も生徒のために全て使い、そのまま授業に向かいますが、
フィンランドの先生方は、職員室でコーヒーを1杯飲んでから授業に向かっていました。
校長先生にこの事を尋ねてみると、「子ども達に休み時間が必要なように、私たち先
生にも休み時間が必要。」という風に話してくれました。「教師のゆとり」は「教師が
子どもと関わる時のゆとり」に繋がります。
私は、7ヶ月間フィンランドに滞在していましたが、声を上げて叱っている先生は
1度しか見ませんでした。これも「安全面」に関する事でした。先生の「ゆとり」は
大事だと感じました。
③ 私とコーヒー
日本では、コーヒーをほとんど飲むことのなかった私ですが、フィンランドに滞在し
た後、コーヒーが日常的なものになりました。フィンランドに滞在している時、朝起き
て、コーヒー1杯、学校に着いてコーヒー1杯、休み時間毎にコーヒー1杯、帰宅して
1杯、晩御飯で1杯、寝る前に1杯と1日10杯近くコーヒーを飲む生活を送っていまし
た。
視点を変えると、コーヒーを飲む前後で10分位はゆっくりする時間があります。
10杯×10分でも100分はコーヒーと共に、対話をしながらゆっくりしている時間です。
これだけのゆとりがフィンランドではありました。これもフィンランドの1つの文化と
いえます。
2. スポーツをする人口世界一
① 体育の授業の本来の目的とは
フィンランドの体育の授業では「スポーツを楽しむこと」を目的としています。
更にスポーツを通して養えるものとして仲間との協調性、戦略(考える力)、健康増進
等を教員が共通認識として持っています。ここは日本と比較しても同じである。
では、どうして日本では、スポーツが好きでない子どもが比較的多いのか?
日本の体育についてフィンランドの先生に話したときに、考え方を一つ変えると日本
の子どももスポーツが好きになると話してくれました。大事なのは「そもそも体育の目
的は、その子が生涯スポーツを通して、健康を保持する」ということです。授業では
「子どもに好きなスポーツを見つけて欲しい。」とシンプルに考えていました。
評価の基準が「スポーツができた、できなかった」ではなく、「友達と協力できたか
どうか等」プロセスにフォーカスしていました。授業で「楽しい!」と思ったスポーツ
は放課後に趣味として始める子どもがとても多いです。
② 地域のスポーツコミュニティの充実
フィンランドでは、学校では日本のようにクラブ活動がないので、様々なスポーツを
する機会が地域コミュニティの中で充実していました。ここでは、誰もがスポーツに参
加することができます。日本のスポーツ少年団のようなものもありますが、多くは趣味
として楽しくする事を目的としています。驚くべき事は、ほとんどのスポーツは
「無料」で参加することができます。理由は、地域の方が趣味で子ども達にスポーツを
教えているからです。このスポーツコミュニティはフィンランド全土で広がっていまし
た。ここは、子どもにとって「2つ目の居場所」になっていました。
3. 読書量世界一
① 学校における読書の時間
フィンランドの学校には、基本的に学校専用の図書室はありません。(大規模の学校
になると、小さい図書室があったりします。)
では、どのようにしてこれだけ多くの本を読んでいるのか?
フィンランドの学校では、日本の小規模校と同じように毎週1回「library bus」が
学校にやってきます。そこで子どもたちは本を借りて、本を読むことになります。授業
にも図書の時間がありますが、それ以外にも算数の授業などで早く終わった後に、
子ども達は黙々と本を読み始めます。ここまでは、日本の学校と同じです。敢えて違い
をあげるとすると
学校の図書室には、CD、DVD、雑誌、漫画、ゲーム等本以外のものも借りることが
できます。これにより、漫画を借りに来たら隣の本が気になり借りてしまった。
ということもよくあります。その一方で、近年は15歳以下の男子生徒の読書率の低下が
課題に挙げられています。
*図書室にあったワンピースの漫画^^
② 身近にある沢山の図書館
フィンランドには、コンビニと同じ数だけ図書館があると言われています。
(そもそも日本程コンビニはありません。)
フィンランドの凄い点は、田舎の地域には大人向けにも「library bus」が走って
おり、国民全員が読書にアクセスできるようにしてある点です。近年では、e-books
の貸し出しも開始しているフィンランドです。
4. 考察~3つの共通点~
①時間的なゆとり
②人生を長いスパンで見ている
③趣味が生活の一部
最後に、フィンランドの子どもが学力世界一になった理由についても私なりに考察
して終わりたいと思います。
フィンランドでは、「ゆとりが脳や健康にとって大切である」ことを多くの人が
口を揃えて話し、「ゆとり」を私生活に取り入れて生活をしています。上に挙げたもの
も、「ゆとり」が生み出したものです。
実はこの「ゆとり」がフィンランドの学校現場に取り入れられています。学習指導要
領も内容は日本と比べての少ない量になっています。この「ゆとり」が教師が目の前の
子に合わせて指導できる「余白」にもなっています。また、フィンランドの先生は、
常に子ども達を常に長いスパンで見て関わっていました。
例えば、子どもが「本を読みたくない。」と話した時。「じゃあ今日は読まなくても
いいよ。何か他にしたいことある?」と聞くゆとり。
他にも「このスポーツはしたくない。」と話した時は、「じゃあ今日は見とくだけで
もいいよ。」という風に無理に押し付けることはありませんでした。
でも不思議なことに、フィンランドでは「スポーツや読書をする人口は世界一」
になっています。この時に、フィンランドで大事にしている「子どもを尊重し、長い目
で子どもの指導に関わっている」ことの意味を実感しました。
勉強にしても、スポーツにしても、習い事にしても、「子どもがしたくない。」って
言葉にする日ってありますよね。「いつもはちゃんとするのに。」でも良く考えてみる
と、子どもも一人の人間です。大人だってしたくないことはあるし、自分で「しない」
を選択できます。強要されたら、嫌いになりますよね。子どもも同じだと感じました。
子どもの気持ちを尊重しつつ、
「子どもを一人の人間として観れる大人になりたい」と思いました。