フィンランドの学校に行こう!

フィンランドの教育を通して日本の教育を見つめ直す。

フィンランド人の「自分らしく生きるキャリアの描き方」

キャリア教育」は何のためにあるのか?

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(日本の研修で出会った高校教師とのエピソード)

私の学校でも「キャリア教育」は、現場で全くできていませんね。「高校でキャリア教育というと、大学について調べること」程度ですね。そもそも、普通科高校の役割は、「生徒を大学に進学させること」なので、、、キャリア教育って必要ですか?

 

日本で「キャリア教育」といってもあまりピンと来ない人は多くいるともいます。
しかし、フィンランドでは、「自分と向き合う」ためのキャリア教育が小学校段階から充実しています。では、フィンランドでは、どんなキャリア教育をしているのか、日本と比較しながらみていきましょう。

 

 

1.小学校のキャリア教育

1)「Me and my city」で職業体験
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 Me&MyCityとは?」

フィンランドでは、75パーセントの小学6年生の子どもが「*Me&MyCity」に参加しています。このミニチュアの都市の中で、子どもは、働く生産者として、それと同時に消費者として活動を行います。学習コンテンツには、教師への訓練、10回分のレッスン教材、およびMe&MyCityへの1日訪問が含まれます。このミニチュア都市の空間の中には、約20の身近にある企業が入っています。子ども達は事前にどの企業で働くのかを希望を出し、先生は『なぜその企業で働きたいのか?』と子ども達に問いかけ、実際に働く職場を決定していきます。

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そして子ども達は自分で決定した企業で、1日会社の一員として働きます。タブレットにはその日の業務が実際の業務と同じように再現されており、子どもは9時から14時までの5時間自分で決めた職場で働きます。また働いた対価として、実際に給料を貰い、その給与で税金を払い、残ったお金で商品と交換していました。もちろん職業や立場によって仕事内容も異なるため、給料も異なります。印象的だったのは、日本だと社長や給与の高い仕事を希望する子が多いと思いましたが、フィンランドではバランスよく分かれていました。
中には「清掃員」を希望する子どももいました。

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その子に「なぜ、清掃員を選んだのか?」と聞いてみると、「学校にいる清掃員の仕事を見ていて、自分もしてみたい。」と思ったそうです。このように、小学6年生の段階で、身の回りにある職業を擬似的に体験し、社会の中で生きるためには、働き、税金を納めないといけないこと、給与が高いほど責任が重くなること等多くのことを子どもたちは学んでいました。
 
*参考ホームページはこちら
2)社会科の授業でビジネスプランを立てる授業

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小学6年生で、社会の仕組みを学ぶ教科(公民)を学ぶことがフィンランドで近年義務化されました。これは、フィンランドで行われている市民教育の一つです。この授業の中で、子どもたちは「自分自身のビジネスプラン」を作り、プレゼンテーションを行いました。

(ビジネスプランに含めるもの)

・どんな商品を売るのか?

・なぜその商品にしたのか?

・いくらで売るのか?

・どこで売るのか?

・従業員は何人いるのか?

・年間で利益はどれくらい出るのか?

このような要素について子どもは自分のアイデアを絞っていました。印象に残っている企業を紹介します。

(エピソード)

・どんな商品を売るのか?→みかんのアイスクリーム(果汁100%)

・なぜその商品にしたのか?→私がアイスが好きだから。

・いくらで売るのか?→2€(1人でも多くの人に食べてもらいたい)

・どこで売るのか?→田舎の自分の町(沢山の人に来て欲しい)

・従業員は何人いるのか?→1人

・年間で利益はどれくらい出るのか?→分からない。あまり考えてない。 

日本だと、学校で将来の夢を考えるときに、職業名のある職業しか子どもたちは書きません。でも実際には企業をする人もいれば、マーケティングや起業家等の身の回りには私たちの知らない職業が溢れいます。この授業では、「自分が何をしたいのか?」と見つめ合ういい機会にもなっていました。 

2.中学校のキャリア教育

1)「Me and my city」でビジネス体験
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「Me&MyCity for nine-graders」は、ビジネスと世界経済を扱う学習コンセプトです。歴史、社会学、キャリアカウンセリングのレッスンで構成されています。このコンセプトは、「Me&MyCity」にある学習環境の中で行われます。

「Me&MyCity for nine-graders」 は、グローバルなケース・カンパニーと銀行の業務を2時間かけてグループで協同してシミュレートをします。生徒は会社の経営者として、さまざまな責任や分野に取り組みます。

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チームはお互いに競争し、最高の営業利益と評判を達成するチームが優勝です。勝利するためには、良い戦略と緊密な対話が必要と先生は話していました。

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このビジネス体験の中では、多くの取引が実際に行われます。生徒はドイツやアメリカの会社と実際に英語を用いて取引を行っていました。以下は取引の様子です。
 
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私自身、学校で「ビジネス」について学んだことは一度もありません。もし日本で取り入れようと思ったら、ビジネスを経験したことのない先生がどのように指導するのか?フィンランドでは、現場の先生ではなく、専門の先生が指導に当たっていました。
新しいものがどんどん生まれている今の世の中で、「子ども達は将来どのような道に進んだらいいのか?」この1日の経験の中で多くのことを感じたと思います。
2)職場体験

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生徒は、中学1年次に、職業についてグループに分かれて調べる時間があります。それを元に、生徒は自分が興味のある職業を決めて、生徒自身で職場に電話を行い、職場体験のアポイントをとります。生徒は2週間、職場で仕事を経験するだけではく、現場で働く人にインタビューを行います。これらの経験を通して自分と向き合い、卒業後の進路を少しずつ考えていきます。この職場体験は毎年行われ、最大3つの職業を体験しすることができます。

3) career guidanceの授業

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フィンランドでは、中学校卒業段階で、普通科の高等学校或いは職業専門学校に進学するかの大きな進路選択があるので、 将来について考える機会が授業中に多くあります。フィンランドでは職業専門学校と普通科の高等学校への進学割合は1:1です。(日本だと、職業専門学校:普通科=3:7)

そこで、中学校には「carrier guidance」の授業があります。この授業では、生徒自身の「キャリア形成」に向けて3年間を通じて幅広く、自分自身や社会について考えていきます。*ここで学習指導要領に書かれている一部を紹介します。

❶自己分析:自身の持っている長所や興味関心と向き合う。

❷自己理解:❶を元に将来のキャリア設計を考える。

PDCA:短期目標と長期目標を立て、結果を分析し、自己評価を行う。

❹社会理解:自国の教育制度の理解等

❺海外や地域での職業体験

これだけ、キャリアガイダンスの授業の中で、「自分自身と向き合っている中学生は、将来についてどのように考えているのでしょうか?」実際に進路選択を行う時期である中学3年生と交流する時間がありました。その中で、中学生と「将来の進路」について対話を行いました。これだけ、3年間の中で自分の将来と向き合う時間があるので、自分のやりたいことを見つけている生徒が多いと思っていました。しかし、実際に中学生と話をしてみると、4割の子は進路選択は決まっておらず、更に殆どの生徒は将来どんな職業に就きたいのかが決まっていませんでした。

ここで感じたことは、学校が「自分の将来と向き合う機会」を提供しても、生徒は将来について悩むということです。やはり、大事なことは学校が機会を提供することに加えて、生徒自らが自分の人生を切り拓くこと。=自らの意思を育む」ことが大事だと思いました。

3.高等学校のキャリア教育

1)大学のような幅広い授業(心理学、哲学等)

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フィンランドの高校は完全に単位制をとっています。日本の大学のようなイメージです。そのため、必須科目以外は、生徒は自由に興味関心のある分野について学びを深めることができます。ここで自由に選択した科目が大学での専門に繋がることもよくあります。

2)キャリアに関して相談できる専門家が身近にいること

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フィンランドでは、高校生も自分自身の進路に迷ったときに身の回りに相談できる専門家が沢山います。日本で進路相談は、できる時期が決まっているような気がしていました。しかも、進路に関しては「大学に浪人しないで行くこと」が前提に話が進められます。私が高校の時も、高校卒業後に大学以外の選択肢は全く示されませんでした。その点フィンランドでは高等学校で多くの選択肢を示してくれる大人が周りに沢山いるので、大学ではより高い目的を持った段階で進む人が多いです。今の日本の高校生に必要なのは、「選択肢を示してくれる」相談相手のような気がします。大学生と高校生を「キャリア相談」に関してマッチングするアプリがありますが、学校を通じてより信頼性の高いものにしていけば、日本の高校生もよりよく生きていけると思いました。

4.専門学校のキャリア教育

 1)生徒に実践的な職業訓練の機会を提供し、職業選択を与える役割。
 
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専門学校では、多くの時間を学校外での「実習」を通して学びます。
1年生は1週間の中で週に2回は地域の学校や会社で実習(job training)を行います。
2,3年生になると、その頻度は更に上がります。よくある質問がこちらです。
 
Q:「専門学校を卒業した後の進路はどうなるのか?」
A:殆どの生徒は「一度」職に就きます。
Q:「どのようにして就職先を探すのか?」
A:「2,3年次に実習を行った会社に入社するのが一般的です。2年間実習を行っているので信頼関係もできています。」

専門学校と企業の密な連携、そして会社での実習時間が長いため、入社後のギャップも少なく、日本のように入社してすぐ辞めてしまう割合も少ないです。日本で専門学校と聞くと、「一部の夢や目標が決まっている人がいく」というイメージでした。一方フィンランドでは、「自分のやりたいことを探したり、学べる」場所です。もちろん、専門学校を卒業して大学に入ることも可能です。専門学校は「個人」や「社会」に対して、とても重要な役割を果たしています。

2)生徒の進路変更に柔軟に対応できる。

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日本の専門学校では、入学前に生徒は自身がどのコースに進むのかを決め、一般的に3年間そのコースで学ばなければなりません。そのため、専門学校に進む人は、中学校終了時点で、自分の将来を定めなければなりません。
フィンランドでは生徒は入学後に「自分の学びたいこと」と「今受けているコース」が合っていないと判断したら、先生と相談して、柔軟にコースを変えることができます。また、「3年で卒業」という考え方もないので、生徒が自分のペースで自分のやりたいことを探しながら学ぶことができます。
3)就活に向けた準備の授業
例えば、生徒は企業に申し込む履歴書を書く練習をしていました。今はフィンランドは多くがオンライン申請であり、更に動画で自分の紹介を行います。その後に面接がある流れです。日本ではリクルートインターンが同じ方式を取っていました。
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5.最後に

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フィンランドでは、キャリア形成に対してとても「柔軟」な国です。何歳でも学び直すことができる環境が整っています。また小学校段階から「あなたは何をしたいのか?」と親や先生から聞かれることが多いです。そのため、子どもたちは「自分がしたいこと」を考える機会が日本と比べると多いように感じます。

「好きこそ物の上手なれ」ということわざが日本にもあるように、フィンランドの人は、自分の仕事が「好き」で、更に「誇り」を持っているように感じました。そのためには、自分が「本当にしたいこと」と向き合える時間(余白)や「何度もでも学び直せる」場所(学校)が必要です。これを実現するためには、多くの予算が必要ですが、フィンランドの「個人の幸せ」を尊重している国のあり方は素敵だと思いました。
 
「個人」が幸せになることで、「国全体」も幸せになっていく
 
フィンランドが幸福度世界一」と呼ばれている理由の一つだと思います。
 
その秘訣は、フィンランドのキャリア教育のあり方から多くの影響を受けていると感じました。
 
本日のブログでは、フィンランド人の「自分らしく生きるキャリアの描き方」についてまとめてみました。
 
ではではモイモイ!!!!